風…第41話「海原はるかに」最終回
第41話…海原はるかに(最終回)
栗ちゃま,お疲れさま(●^o^●)。
役者さんって,ある意味,
作品作りのためには自分の価値観を捨てて,
真っ白で空虚な状態にしておかないと,
あらゆる役になりきれないと思うし,
自分の気に入らない,意に反したことでも,当たり前のように
きっちりやり遂げるのがプロの仕事だから,
視聴者側がどう受け止めようと,
役者本人には全く関係ないこと。
ただ,その作品の役のイメージ
というものを,演じた側は忘れてしまっても,
視聴者側は,ずっと覚えていたりするから,
なるべくなら,
良い印象を残して終わるに越したことはないだろうし,
記憶に残る良い作品に恵まれるかどうかは…
その役者の運命と素質と才能と努力と忍耐と持久力と…
やっぱり,その時代の周囲の環境や状況にもよるのかな。
楽器と演奏者の関係のように,
いい素材の組み合わせがあってこそ,
相乗効果で,どちらもより映える。
率直な感想として,
「風」は,折角の栗塚旭という素晴らしい素材の役者を,
100%活かしきれたとはいえない作品だったと思う。
勿体なかったね。
「侍そのもの」と「侍社会」をゴチャゴチャの視点で扱ったのが
良くなかった(これは「恋夜の深読み」として,別記事に記す)。
そもそも架空の話とはいえ,
「風の新十郎」自体の設定が,
盗人だか,忍びだか,侍だか,なんだか,わけがわからなかった
ことが(良く言えば自由すぎる人物設定が),
主人公を活かしきれなかった最大の原因だと思った。
脚本家が変わる度に,
主人公の精神性と行動の一貫性がズレてしまって,
回を重ねるごとに,活躍の範囲を狭めてしまった感じもした。
(脚本家が多すぎて,個々のクセが鼻につくこともあった)。
後半,どう見ても,酷で辛い話の展開が結構あったけど,
最終回の朝日(未来)に向かう新十郎の表情は,
マイナス面を全部帳消しにできるほど,とっても良かった。
左近おじちゃんと,かがりの涙に,ウルウルきちゃったけど,
最後の新十郎栗ちゃまの希望に燃える瞳を見たら,救われた感じ。
今回,全部見通せて,とにかく嬉しかった!
(アラスジ)
夜分,北町奉行所の同心・相川左近は,大勢の町方を先導し,
必死で逃げ回る不審な男のあとを追っ駆けていた。
子供を背負って逃げて来た男は,橋の下へ隠れ,辺りの気配を窺う。
ちょうどそこへ,夜釣りをしていた新十郎が来て,何か悪いことをしたのかと尋ねる。男はそれを否定し,とりあえず,一晩だけ子供を預かって欲しいと新十郎に頼み込む。
上手く逃げられたら,明日の朝には必ず子供を迎えに行くという。
了解した新十郎は,自分の名と長屋の場所を教えてやった。
男は礼を言い,もと来た橋の上を走り去った。
再び男の姿を見つけた左近達は,怒涛のように追いかけて行った。
町方が去ったのを確認した新十郎は,「もう安心だ」と言い,子供の頭巾を外したところ,5歳くらいのその子の髪の毛が,異国風の明るい巻き毛だったことに驚く。女の子の名は「マリー」といい,「海から来た」という。
(流れ)
翌朝,新十郎は,航海図を広げてみるが,
マリー達がどこの海から来たのか全く見当がつかない。
縁側で「お父さんは?」と尋ねるマリーは,
頬に涙を流しながら新十郎を見つめる。
朝になったら迎えに来るはずの父親が現れなかったため,
新十郎はマリーに,何かあったら押し入れに隠れるよう教え,
左近のもとへ向かった。
その留守中,かがりが来たため,マリーは新十郎から言われた通り,
押し入れの中に隠れたが,すぐ見つかってしまう。
その頃,左近は,「水野ばかもの」などと書かれた無数の張り紙を,
通り添いの板塀から剥がしまくっていた。
そこへ来た新十郎は,最近,その手の張り紙が増えたようだと話しかける。すると,左近は,誰かの差しがねで町人がやっているに違いないと,
不満を漏らす。
新十郎は左近に,昨晩逃げていた男のことを尋ねる。
捉えた男の名は村越庄二郎といい,密入国してきたとのこと。
しかし,その身柄は,大目付・大鳥甲斐守の突然の介入により,
理由もなく,夜のうちに大鳥の座敷牢へ移されてしまった。
大鳥甲斐守は,幕政の改革派から寝返った大目付のひとりであり,
改革反対派の紀州藩から多額の賂(マイナイ=賄賂)を受領していたが,家来の篠原軍之進に指示し,その金を町人に配って水野の悪口を書かかせ,世間にも水野糾弾の気配を浸透させるべく働きかけていた,
かがりは,水野の屋敷にマリーを預けた。
水野は,マリーの顔を見たとき,数十年前,国外の情勢を探るよう出国させた家来の村越に面影が重なることを,かがりに話す。
村越は外国へ行ったきり,戻って来なかったという。
子供の父親が,大鳥の牢屋敷にいる村越ならば,それをキレ者の大鳥が利用しないわけがなく,既に水野自身,改革反対派の激しい抵抗や,寝返る幕閣が増えたことから,老中職に留まっていられるのは数日だと察していた。
大島が村越と水野の関係を調べて幕閣に暴露すれば,
水野の立場は致命的に危うくなる。
かがりは水野の制止を振り切り,村越を奪還しに向かう。
お菓子を買って長屋へ戻った新十郎だが,
そこにマリーの姿はない。
すると突如,覆面姿の篠原ら大鳥の配下数名が土足で踏み入り,
子供をよこせと強迫してきたが,
新十郎は,いないと告げて素早く脱出した。
その後,左近にマリーのことを話した新十郎は,
かがりが連れ出したのではないかと見当をつける。
夜分,番小屋にいた左近のもとへかがりが来て,
思いつめた顔で大鳥の屋敷へ行くと言って去った。
左近は,あとから来た新十郎に,そのことを伝える。
大鳥の屋敷へ忍び込んだかがりは,牢から村越を救い出そうとするが,そこにいたのは大鳥配下の篠原だった。
かがりは捕らえられ,庭木に縛られてしまう。
大鳥は,更なる獲物を捕らえるため,かがりをおとりにした。
そこへ新十郎が忍び込んできた。
庭木に縛られているかがりを発見し,新十郎はその縄を解くが,
上から降ってきた罠の網に捕まってしまう。
かがりと新十郎は,村越がいる隣の牢屋へ入れられた。
十年前,水野の命令を受けた村越は,長崎からオランダ船に乗って出国したが,途中で船が遭難し,通りかかったアメリカの捕鯨船に救助されてハワイへ行き,そこで知り合った現地の娘との間にマリーが生まれたことなど,それまでの経緯を新十郎達に話す。
海外でアヘン(麻薬漬け)による外国の植民地支配が進行する中,
いつまでも鎖国状態で安眠を貪っている日本に危機感を抱いた村越は,
国際社会の情勢を一刻も早く水野に伝えるため,
妻が亡くなったことを機会に,ハワイからの舟が小笠原へ寄った際,
密かに入国したとのこと。
村越に子供がいると聞いた大鳥は,
かつて出国の指示を出した者が水野であると認めれば,
子供に合わせてやるなどと言っていたが,
村越は,それまでの経緯については誰にも話していないという。
安心したかがりは,マリーが水野の屋敷にいることを村越に伝える。
夜分,水野の屋敷の庭先に,甲賀から源爺が訪ねて来た。
源爺は,老中の失脚を煽る噂が甲賀の里にも入ってきたため,
心配で江戸の様子を見に来たのだという。
度重なる財政改革を断行する水野は,大奥にまで手を広げたため,
遂には将軍家からも疎まれる存在になっていた。
そこへ,老中になる以前,水野の指示で外国情勢を調査に行った村越が密かに入国した一件が,異国嫌いの水戸藩や改革反対派の紀州藩ほか御三家の耳に入れば,もはや水野の失脚は確実。
大鳥は,今度の閣僚会議の席で村越のことを持ち出せば,幕閣多数の賛同を得られるものと確信し,ほくそ笑んでいた。
牢の中で村越から,上下の差別のない米国社会の様子や,
議会の仕組み,選挙制度などを聞いた新十郎は,
今まで見たこともない新しい世界が海の向こうに広がっていると知り,
行ってみたいと口走る。
そこへ門番に化けた源爺が忍びこんで来て,牢屋のカギを開け,
皆で揃って脱出し,水野の屋敷へ向かった。
村越はマリーと再会する。
水野は,改革を諦めて自ら老中職を辞そうと思っていたが,
村越から海外情勢を聞いて思い直す。
断固として幕府の財政を立て直し,列強各国に対抗し得るだけの軍備の増強を図り,アヘンによる外国の植民地支配から自国を守らねばならないと,水野は語気を強めて語る。
その場にいた新十郎は,水野の改革は間違っていないが,
時代が早すぎ,皆の考えがついて来れないことを指摘する。
しかし水野は,身を賭してでも改革を断行すると意気込む。
そこへ幕府の上意の使者(上使)が来たという知らせが入る。
上使として屋敷に来たのは大鳥だった。
大鳥は,水野の前で,老中職から罷免するとの内容を読み上げる。
水野は即刻,将軍のもとへ行き,海外の情勢を伝えようとするが,
大鳥が仲介しているためか,将軍は水野の顔も見たくないと拒否。
それまで大鳥の出世の世話をしてきた水野だが,頭を下げて仲介を頼む。しかし,大鳥は冷たく退けるのみであり,結局,水野の意向を将軍に伝えることはできなかった。
新十郎は,村越とマリーを隠れ家へ連れて行き,
かがりや左近に,その場所を教えた。
後日,縁側でマリーと手毬(テマリ)で遊ぶ新十郎の隠れ家へ非番の左近が訪ねて来た。
左近の話では,水野は武州の辺鄙な下屋敷へ住まいを移し,それまでの上屋敷には,若年寄に出世した大鳥が入居することになったとのこと。
「正直者が馬鹿を見る」…左近の嘆きに,新十郎の眼の色が変わる。
やがて,忍びを辞める決意をしたかがりが新十郎を訪ねて来た。
左近から,新十郎は水野の事情を聞いたあと顔色が変わり,行方も告げずに出て行ったと聞き,きっと大鳥の屋敷へ向かったに違いないと察したかがりは,自分も水野の仇を討つと言って飛び出して行った。
夜分,大鳥の寝所へ忍び込んだ新十郎は,
大鳥のしたことは,人として許せないと責め,
闇討ちするつもりは毛頭ないと,
家来達を集めるだけ集めさせた上で,片っぱしから斬って行く。
新十郎が篠原を相手にしている際,大鳥は逃げようとするが,
行く手を封じたのはかがりだった。
かがりは,「この男だけは自分にやらせて欲しい」と一言断り,
大鳥を短剣で斬った。
間もなく新十郎も篠原をバッサリ斬って片づけた。
忍びの任務は今日限り辞めると言うかがりに,
新十郎も,風の看板を外して日本をおさらばすると告げる。
村越に道案内をさせて小笠原から太平洋を目指すという新十郎に,
かがりは,自分も付いて行っては駄目かと聞く。
新十郎は,明後日に舟で出立する場所を教えた。
三日後の夜明け。
浜辺に小舟をつけて待つ新十郎達のもとへ,かがりは姿を見せず,
かわりに左近が走って来た。
かがりは来ないと告げた左近は,新十郎に水野が詠んだ和歌を見せる。
その文面には,
謹慎の身では,近くの山里の桜さえ見に出かけられず,
せめて桜の一枝を折って花瓶に挿し,
周囲に香りを立ちこめて,盲目のように春を過ごすのみ(訳)
…とあった。
※概ね
それを見たかがりは,新十郎と一緒に行くのを諦めたのだという。
武州の下屋敷で侘びしく過ごす水野の傍に,
せめて自分だけでもいてあげなければ,あまりにも気の毒だと…
左近は,かがりの言葉を涙ながらに話す。(T_T)
新十郎 「元気でな,どんな世の中になろうとも,
左近の旦那は今の心意気を捨てねえで,
悪党どもを追っかけてくれ,
弱ェ人間は,旦那達だけが頼りなんだ」
頷いた新十郎は,小舟に乗り込んだ。
左近は大きく手を振り,新十郎の名を叫んで見送る。
物陰から,新十郎にさよならを告げ,
涙ながらに見送る,かがりの姿があった。(T_T)
村越が漕ぐ小舟は,小笠原の浜辺を目指す。
朝日に向かって佇む新十郎の瞳には,
未来への希望の光が輝いていた。
完
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風…第40話「刀の中の顔」
第40話…刀の中の顔
この話は,後の『暴れん坊将軍』の
「名刀、誇りあり」と,要素がほぼ同じ。
※との事前情報どおり,確かに一部の作りがソックリだった…(-_-;)!
でも…,
それはあくまで中盤までのこと。
タイトルからして,似て非なるもの。
「名刀・・」のほうはハッピーエンドで明るかったけど,
『風』の話ときたら…またか…ってほど,残酷な展開が待っていた。
なにかこう,前々回の話(38話)のマズさを
一生懸命フォローしようとするかのような話みたいで,
今更というか…もうあとの祭りに近い。
38話で完全に無視した遺された妻と幼い息子への説明の後始末
を,今回の話の中で,つけたかったのか…?,
そうしたスジ立てが,かえって更なる墓穴を掘った感じ…(-_-;)。
「侍」のことを上げたり下げたり忙しいセリフも,
どこか説得力が無くて,
怒りにまかせて悪党を斬ったところで全然スッキリしないのは何故?
ァ…そうか,だから
次回で最終回になるわけだね…(-_-;)ふゥ…栗ちゃま,お疲れさま。
途中から用心棒がダブッてたけど,以後,完全に「用心棒の旦那」。
(アラスジ)
新十郎は刀屋で,名刀
“長光(オサミツ※「備前長船長光」 ビゼン ナガフネ オサミツ)”の
刀身に見惚れていた。
以前,その刀の持ち主だった素浪人の青木三右ヱ門が店先に現れ,
未練がましい目つきで新十郎の手にする長光をまじまじと見つめる。
刀屋の主は,浪々の身となった青木が刀を買うでもなく,度々店に出入りするのを迷惑がっており,さっさと店から追い出してしまう。
新十郎が刀を主に返し,店を出ようとすると,
そこへ入って来た先程とは別の浪人(露口 茂さん)に,
ぶつかりそうになる。
その浪人もまた,長光を手に入れようとしていた。
新十郎は帰りがけ,浪人と長光の話をする。
浪人 「刀は武士の魂だ,心だ,良い物を欲しがるのは当然のことだ」
新十郎 「俺もあの刀が欲しい,どうしても欲しい,
誰にも渡さんと言ったら,どうする?」
浪人 「おぬしを斬る! 斬っても,あの刀が欲しい!」
一瞬,二人の顔に緊張が走る。
新十郎 「…(笑)おぬし,いい奴だ,いまどき珍しい,気骨がある」
(-_-;)「香木騒動」の話のときも,
こうしてりゃあ良かったんだけどね。
無益な血を流さずに済んだものを…だから,あとの祭りッてワケ。
先ほど刀屋へ入って来た素浪人の青木が万引きして捕まり,
左近に連行されて来た。
新十郎と一緒にいた浪人は青木を知っており,
姿を見るなり声をかける。
青木は,北辰一刀流の腕を持ち,頭脳明晰で将来を約束されていたが,時勢の流れから主家を失い,喰いつめ浪人となっていた。
左近は青木のことを,恥も誇りも面目も忘れた侍だと非難するが,
新十郎は,青木が自身の始末くらいはできる男だと察し,
見逃してやるよう左近に頼む。
左近としても,青木の素性は,ある程度わかったため,
見逃してやった。
後日,男の子を連れた武家風の女が刀屋を訪れる。
その女は,長光を買い求めるため,二両の手付金を差し出し,
残りは後日支払うということで,主に頼んでいた。
しかし,主は,手付が二両では駄目だと言って断る。
諦めた女は,息子と一緒に店を出ようとするが,
そこへ来た新十郎と出くわす。
その女が,「斬っても長光を欲しい」と言った浪人の妻だと知った新十郎は,自分の持ち合わせの金三両と,女の二両を併せて五両なら手付になるだろうと交渉するが,手堅い主は,二百両もの値打ちのある長光の手付は十両だと言って受け付けない。
それを聞いた女は,遠慮して帰った。
刀屋の主は,手許不自由なら稼げば良いと言い,
仕事で二十両出すと言う人物を紹介すると,新十郎に持ちかける。
その仕事は用心棒らしい。
早速,貴嶋屋(キジマヤ)の用心棒となった新十郎は,
ある男を斬ってくれと頼まれる。
相手は神道無念流の使い手で,
殺さずとも,右手を使えなくさせるだけで良いとのこと。
金は口止め料込で二十両。
明後日,暮れ六ッ,神田お玉ヶ池で待つよう指示された。
約束の場所へ来た新十郎は,
貴嶋屋から,金は仕事が終わった時に渡すと言われ。
彼方から来る目的の男をやるよう指示される。
男が近づくと同時に,貴嶋屋は去った。
そこへ来たのは,長光を心底欲しがっていた浪人だった。
この先に家があると言う浪人に,
新十郎は,「二十両で斬りに来たが,雇い主が消えた」と,
笑いながら白状し,「風邪の新十郎」と名乗る。
浪人の名は,池田種之助。
新十郎は,池田と居酒屋へ行き,酒を奢る。
浪人暮らしの池田だが,やっと士官できそうだという。
命を狙われるのは,それが原因では…と新十郎は察する。
次いで池田は,長光が売れてしまったと残念そうに話し出す。
伊達道場の主・伊達一角が,即金で長光を入手したとのこと。
一刀流の免許皆伝の腕を持つ伊達一角は,
それなりの剣の腕がありながら,
金さえ出せば誰にでも免許を与えるという金儲け剣士だった。
後日,かがりは,札差の貴嶋屋を探っていたとところ,
伊達道場の門弟に追いかけられたと新十郎や左近に話す。
新十郎は,早速,単身,伊達道場に乗り込む。
伊達道場の門弟達に囲まれた新十郎は,
道場主の伊達一角が手に入れた名刀・長光を,
最後にもう一度見たいと,ふてぶてしく頼む。
そこへ伊達一角が貴嶋屋と一緒に来る。
貴嶋屋は刺客の約束を果たさなかったことを責めるが,
新十郎は,「斬れたがやめた,斬るには惜しい男だ」と答える。
すると今度は伊達一角が,
「もう一度やってみるか?長光をくれと言うならやっても良いぞ」と,名刀を条件に勧めてきたが,新十郎は断った。
池田の息子・一太郎が,大勢の子供達にいじめられていたのを,
通りかかった新十郎がやめさせる。
新十郎は,一太郎に家まで案内を頼む。
池田は留守で,女房のつる代から,池田の士官の話を聞く。
池田のほかに,もうひとり推挙された相手と試合をして勝てば…
というのが指南役となる条件だった。
相手は伊達一角。
伊達は,三田村家の御用人に大枚の金子を支払って
士官の推挙を働きかけたらしい。
新十郎 「正しい者は,きっと最後には勝つのだ」
ウウッ…!…(-_-;)どこかソラゾラシイ。
試合まで,あと七日。
三田村藩八千石の御用人・杉山は,
藩主がまだ若年のため,藩政を思いのままに牛耳っていた。
札差屋と結託して不穏な動きもあり,このことが
公儀の耳に入れば,内政不行き届きで藩の存続が危うくなる…。
池田を指南役に推挙した旗本の男は,
「殿の目を覚まして欲しい」と切望する一方,
池田のもとに刺客が送られる恐れがあると心配する。
それを聞いた池田は,
「風の新十郎」という,おかしな男が既に送られてきて,
酒まで奢ってくれ,しきりに時世を嘆いていたと笑いながら話す。
青木が窃盗未遂で捕まった。
その腰にある刀は竹光(タケミツ※竹を削ったものを刀身にして,刀のように見せかけたもの)だった。
見損なったと怒る左近は,青木を牢に叩き込む。
すると青木は,左近にだけは聞いて欲しいと,必死で話しかける。
青木が刀を盗みに入ったのは,
切腹する刀が欲しかったからだという。
腹を斬る刀が無く,武士として恥ずかしいと嘆く青木。
その姿を見た左近は,情けない思いを新十郎に話す。
しかし,嘆いていても始まらない…と,
新十郎は,左近に伊達道場を探るよう頼み,
武士道の面目を守るためだと,いつになく意気込む。
新十郎 「今度のは,ただのお節介じゃねえ,
一世一代の大きなお節介になりそうだ」
(-_-;)やっぱり,香木の件は,ただのお節介だったのね…
しかも「武士道の面目」…決して他人に守って貰うものではないヨ…。
夜分,池田の家に,刺客達が襲ってきた。
新十郎が助けに来たが,池田は右手を斬られて負傷。
試合まで,あと五日。
左近は,貴嶋屋が店に戻るまでつけていた。そこへかがりも来る。
かがりは,三田村家の御用人・杉山のあとをつけてきた。
どうやら貴嶋屋が間に入り,杉山と伊達一角を会わせる算段らしい。
左近とかがりは,調べたことを新十郎に報告する。
三田村家の御用人・杉山の指示で,
勘定方の帳簿には米五百俵と記載し,
残りの五百俵は密かに隠して,
米の相場が上がったところで売りに出せば大儲けのカラクリ。
(-_-;)…以前も,そんなカラクリあったね。
杉山は,領地から米が来ないことにして,くすめ取っていた。
札差屋の貴嶋屋と結託して米の買い占めをしていることを,
万一,堅物の池田が三田村家の指南役となって知れば,
杉山達にとって面白くないことになる。そのため,
杉山と貴嶋屋は金に汚い伊達を三田村家に送り込もうと企んでいた。
右手の怪我のため刀が握れず,試合もできなくなったと嘆く池田は,
居酒屋で飲んだくれていた。そんな亭主を,つる代は優しく励ますが,
投げやりな態度は一向に変わらない。
そこへ新十郎が来て,池田を外へ連れ出す。
「それでも侍か,恥を知れ!」と怒鳴った新十郎は,
池田の前で抜刀する。遠くで左近とかがりも様子を見守っていた。
悔しさで奮い立った池田は,新十郎の一撃に応じ,
勢い,自身の右手で腰の刀を見事に振り抜いた。
再びまともに刀が握れることを確信した池田は,
宙に刀を振りまわし,試合に臨めることを喜ぶ。
(-_-;)ここが「暴れん坊・・」と,ソッ栗!
その様子を見ていた貴嶋屋は,
早速,伊達一角と杉本に報告する。
杉山は,再び夜のうちに池田を襲うよう指示する。
刺客達は池田の家を襲撃する。
しかし,そこに池田達の姿はなく,
八丁堀の左近のところへ身を寄せていた。
試合当日。
伊達は真剣で勝負したいと杉山に申し出る。
試合は,池田側の有無を言わさず,真剣勝負となった。
双方抜刀して対峙するが,太陽光を刀の鍔に反射させ,
刀の鍔(ツバ※柄を握る手を防御する部位)
刀を握る柄の部分と,刀身の間に挟んである木製の武具の名称。
目くらましをする伊達の邪剣のもと,池田はたじろぎ,斬られてしまう。
倒れたところをメッタ刺しにする伊達。
(-_-;)…凄惨…むごすぎる…ガッカリ(こんなスジはイヤ)。
左近のもとで,池田の亡骸を確認した一太郎は,
父の仇討をしたいと新十郎達に訴える。
しかし,新十郎は,母を助けて立派に生きて行くよう一太郎に言い,
仇討は任せろと,伊達のもとへ向かう。
追いかけて来た左近は,青木が腹を斬ったと伝える。
新十郎 「青木も池田も侍の世の犠牲者だ。
今日の俺は,ちょっとばかし機嫌が悪い,暴れてやる!」
(-_-;)…暴れたいヨ,こっちも…。
伊達一角ら悪党が勢ぞろいする敵地へ乗り込んだ新十郎は,
新十郎 「人々が苦しんでいるときに己の利に走るとは許せねえ!
天にかわって((-_-;)オシオキヨ…)成敗する!」
そこにいた連中をバッサバッサと斬り捨てる。
最後に残った伊達が長光を抜き,
「地獄へ送ってやる」と息まくいてかかってくる。
刃を交えた新十郎と伊達は,勢い雷鳴轟く戸外へ出て対決する,
雷の光が無数に照らす中,
その光を刀の鍔に反射させて目を眩まそうとする伊達。
新十郎は,思わず眩しさに目を細める。
左近とかがりが一太郎とつる代を連れて来て,その様子を見守る。
伊達一角が池田との勝負に勝ったのは,
刀の鍔に光を反射させて目くらましをしたからだと気付いた新十郎は,その卑怯なやり方に激怒し,
かかってきた伊達の刀身を鋭く横へ弾き返した。
と,衝撃で,長光の刀身が折れた。
その隙に,新十郎は伊達の脳天をバッサリ叩ッ斬った。
少しスッキリ(●^o^●)!
三田村藩のことが表沙汰になれば,
水野の立場が危うかったと,かがりは言う。
それまで改革派だった幕閣のひとりが反対派に寝返り,
ただでさえ,水野は苦境に立たされているのだという。
最終回の伏線
新十郎 「寝返りか,邪剣となるを羞じて,
自らの身を折ったこの刀のほうが,はるかに立派だぜ」
左 近 「俺は,つくづく,侍の世がいやになったぜ」
新十郎は一太郎の前で,「父上は,立派な侍だった」と言い,
その場を去った。
風…第39話「帰って来た男」
第39話…帰って来た男
※娑婆(シャバ)=一般社会・俗世間・この世・外の世界
「忍耐」を意味する仏教用語
(サンスクリット語saha「サハー」の音写)
この世は内に煩悩があり,
外は苦しみを耐え忍ばねばならぬ俗世である。
※罪を犯して遠島となった男が、恩赦でシャバ(社会)へ戻ってきた。その後の苦労話。改心した男の真っ当な精神が描かれている。でもこれだけ我慢できる人間だったら,
そもそも最初っから罪を犯すような男じゃなかったはず。(-_-;) …罪を償った理想形だけどね。
それとは別に,前回(最悪話)の影響からか,
罪人を捕まえられず,奔走するばかりで,
落ち込む左近オジちゃん…
左 近 「あァ面白くねえ,何もかも,世の中,
面白くねえや(溜息)」
のっけからフヌケ状態の新十郎は,長屋で寝てばかり…
新十郎 「こっちもいい加減,気が滅入ってるんだ。
愚痴を聞かされるのは,まっぴらだぜ」
左 近 「そういう奴だ!そういう薄情な奴だ!貴様って奴ァ!!
頼りにしてきた俺が馬鹿だったィ!!」
仲間割れしとる…(-_-;)。
女房気取りで掃除洗濯しに来ていたかがりが,
「どうしたの?」と聞くと…
左 近 「こうまで世間が騒がしくなってるのに,
まさか知らないわけじゃあるめえッ!」
かがり 「無法な浪人者のことかい?」
左 近 「そうともッ! それを知ってるなら,
俺がキリキリ舞いしてるの も知ってるはずだッ!
それを(言いかけてやめる)…
よそう,よそう…手ェ貸してやろうって親切心のねえ,
おめえ 達に,このうえ何言っったって,
こっちがみじめになるだけだ」
頼り根性が身に着いちゃった左近オジちゃんのグチ…(-_-;)。
そして,このあとの新十郎のセリフがまた投げやり(わざと)…
新十郎 「悪く思うなよ,左近の旦那。実のところ俺はもう,
小悪党追い回すのは飽き飽きしたんだ,
俺達は随分,悪党どもをやっつけてきた,
だがどうだ,相変わらず悪は,はびこっている。
果てしのねえイタチごっこだ。
いい加減,うんざりもしようってもんだ,
そうは思わねえかい? 旦那」
それを言っちゃあ,おしまいじゃん…(-_-;)。
左 近 「思ったらッ!?」
新十郎 「こうして寝てるに限るぜ」
主人公,失格…(T_T)。
左 近 「(寝る)…!」
左近,失格…(T_T)。
かがり 「旦那!」
左 近 「俺ァ目が覚めた,悟りを開いたんだよ」
かがり 「悟りを?」
左 近 「新十郎の言うとおりだァ,悪党は五万といて,
俺が一生かかったって
到底根こそぎにできるもんじゃねえや。
このままいきゃあ,来年は,お払い箱だ。
(成り行きの)ままよ,寝てるに限るってな」
新十郎 「打てば響くと思ったが,間違えだったな」
かがり 「寝てろと言われりゃ,起きて走り出す,
それが左近の旦那じゃないのか?」
左 近 「そんな得手勝手な…(すねて寝返る)」
かがり 「得手勝手なのは旦那のほうじゃないか,
新十郎が手を貸そうが貸すまいが,
悪い奴らをとっちめるのが
旦那の仕事じゃないのかい?」
左 近 「それじゃ,この俺一人に無駄骨を折れってのかい?」
かがり 「無駄骨?そりゃ確かに旦那ひとりの力に
世の中を変えられるわけがないけど,でも,
旦那がお縄にした何人かのうち,たった一人でも
真人間に生まれ変わって出直してくれる者がありゃ,
旦那の骨折りは決して無駄じゃないと思うよ」
左 近 「生まれ変わって出直してくれる人間…
生まれ変わって…」
この話のテーマはソレ。
書きにくくて面倒だったから,
シナリオ風に,セリフを並べてみた。
新十郎は,脇役。いいや,もう(-_-;)ふゥ…。
「表向き出る言葉と,内心の思いとは違うんだよ」
(新十郎)ってだけ。
(アラスジ)
北町奉行所の同心・相川左近は,連日のように無法な強盗や人殺しを繰り返す悪党を追い回していたが,下手人を捕らえることもできず,腐って新十郎に愚痴をこぼしていた。そんな折,かつて左近が縄にかけ,遠島の刑となった伊太郎が御赦免となり,江戸へ帰ってきた。
(流れ)
船着き場に伊太郎を迎えに行った左近は,行きつけの居酒屋へ連れて行くが,店のオヤジ・杢兵ヱは,島帰りの伊太郎を白い目で見る。
その居酒屋の奥には新十郎もいて,左近と伊太郎の話を耳にする。
居酒屋を出た伊太郎は,往来で昔のワル仲間・伝次と出くわす。
通りかかったかがりが,その様子を見かけ,
伊太郎が会っていたのは昔の仲間ではないかと左近に伝える。
伝次は,無法な押し込み強盗を重ねる浪人一味の仲間だった。
伊太郎の錠前破りの腕を知る伝次は,再び伊太郎の腕を借りようと頼むが,伊太郎はきっぱり断った。
その後,伊太郎は,女房・お袖の居場所を探す。
お袖は,伊太郎が遠島の刑で島流しになった後,仕事や所在を転々としたらしく,容易に居所がつかめなかった。仕方なく伊太郎は,大工をしている弟・清吉の家を訪ねてみると,そこに,お袖がいた。
お袖は,伊太郎が終生,島から戻ることはないと思っていた。
再会に喜ぶ伊太郎とは対照的に号泣するお袖。
そこに帰って来た清吉が,「お袖」と呼び捨てにするのを聞いた伊太郎は,弟の清吉が自分の女房を横取りした事実を知り,激怒する。
伊太郎に誠心誠意,謝る清吉は,苦労を重ねるお袖を不憫に思って引き取ったのだという。既にお袖は,清吉の子を宿していた。
これを聞いた伊太郎は,清吉達に絶縁を言い渡し,その場を去った。
後日,仕事先も決まった伊太郎だったが,
悪事に引き戻そうとする伝次が,裏で店の主に金を渡し,
理由もなく解雇させてしまう。
伊太郎は,行く先々で伝次に同じことをされ,
まともに職にも就けず,無一文で町を彷徨っていた。
辛酸を舐める伊太郎に,
伝次はひつこく声をかけて悪事に誘うが,
再び罪を犯すことはできないと,伊太郎は断り続ける。
空腹を抱え,行き場の無くなった伊太郎は,
以前,左近と入った居酒屋へ行き,オヤジの杢兵ヱに,
無賃でもいいから雇って欲しいと頼み込む。
しかし,伊太郎が「島帰りの罪人」と知っている杢兵ヱは,
その申し出を断る。
そこへ新十郎が来て,伊太郎に飯を奢る。
馴染みの新十郎から頼まれても,
杢兵ヱには,伊太郎を雇う気はなかった。
居酒屋で,島から帰って来た後の自身の事情を新十郎に話す伊太郎。
その話声を,店先で聞きつけた清吉は中に入り,
自分のところで働かないかと伊太郎に勧める。
しかし,伊太郎は,お袖や清吉の顔など見たくはないと,頑なに拒否し,
店から飛び出て行ってしまう。
伊太郎の態度に絶望する清吉だが,
新十郎は,伊太郎が本心では,自分の存在に気兼ねせず,清吉とお袖に幸せになって欲しいと願っているからこそ,わざと悪態をついたのだと教え諭す。(-_-;)出マヒたね…お得意の深読みチャンコナベ。
頑として悪事の誘いに乗らない伊太郎に,業を煮やした伝次は,
清吉の家に押しかけ,女房のお袖を残して,
清吉を人質として連れて行き,そこへ伊太郎を呼び出すことにした。
(-_-;)普通は力の弱い女房のほうを連れて行くんだけど…先の都合。
かがりは,清吉を必ず取り返すとお袖に告げ,伝次達のあとを付けるが,途中で見つかり,わざと捕まる。
伝次から清吉を引き取りに来るよう言われた伊太郎は,お袖に会うが,そこで,伊太郎が再び悪事に染まることになったとしても,生まれて来る自分の子供のために,清吉を連れ戻して欲しいと泣いて頼む(チョージコチューで得手勝手な)お袖の訴えを聞く。
伊太郎は愕然とするが,意を決して清吉を取り戻しに出向く。
(-_-;)もとの亭主を捨てたうえ,次の亭主との間にできた子供のため,
またもとの亭主が罪を犯すだろうことを引き換えに,今の亭主を取り戻そうとする,このお袖という女…恋夜としては大嫌いなタイプだね。
浪人一味に捕まったかがりは,小悪党達が次に強盗に入る場所を隣の部屋で聞きつけ,気付かれないうちに縄を切ってこっそり逃げ出し,
その足で,新十郎と左近に伝えた。
左近は,盗人一味を捕らえようと意気込むが,
新十郎は止める,
町方が出れば,悪事に利用されただけの伊太郎まで捕まえることになり,あとで言い訳も通用しないからだ。
と,いうわけで,ここでやっとこ新十郎が出向くことに。
その晩,伊太郎は,伝次の待つ場所へ行き,
清吉を無事に返してもらった。
それと引き換えに,
伝次達盗人一味と一緒に土蔵破りに出かける。
伊太郎が苦心の末に蔵の錠前を破ると,
そこにはドドーン…新十郎がいた。
で,みんな片づけてオワリ。(省略ね)
後日,杢兵ヱの居酒屋に,伊太郎や新十郎達が集まっていた。
「少しでも真っ当な人間になって恩返しをしたい」と言う伊太郎の誠実な言葉を聞いた杢兵ヱは,伊太郎を雇うと自ら言い出す。
実は自分も島帰りだと打ち明ける杢兵ヱ。
(-_-;)ソンナコッタと思った。
左近も新十郎も,美味い酒を酌み交わして上機嫌。
清吉やお袖にも明るい笑顔が戻り,
生き生きと働く伊太郎の姿があった。
これはハッピー!メデテェな(●^o^●)