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第19話…あかね雲(『新選組血風録』)








(第19話)

▼土方の解説
慶応三年暮,倒幕佐幕の闘いは,その頂点に達し,王政復古の大号令は,正に鉄槌のごとく幕府の頭上に振り下ろされようとしていた。
その日,緊迫した事態に対処すべく洛中某所に,佐幕派各藩の重臣たちはひそかに会合した。新選組局長近藤勇も列席した。しかし,倒幕派に気付かれてはならぬ…。そのためには,警戒護衛もまた慎重に行わねばならぬ。新選組は,よりぬきの隊士をひそかに,その周辺に配置していた。
いずれも一騎当千の強者ばかりである。

▼ある寺院の周辺で,不逞浪士の襲撃を警戒しながら,
それと気付かれないよう待機している,永倉,島田,斎藤,沖田,そして土方ら,新選組の精鋭達。その日の会議が始まったことを土方から聞いた沖田は,後の段取りを斎藤へ知らせる。と,その時,辺りで辻占(おみくじ)を売って歩く少女「おしづ」の声が聞こえる。おしづは,斎藤や沖田に気付くことなく通り過ぎる。辻占の声を聞きながら,沖田と斎藤は,江戸の試衛館時代を思い出していた。と,俄かに寺の山門前に不逞浪士らが押し掛け,中へ入ろうと,その場にいた所司代役人の一人を斬った。
周囲に潜んでいた新選組隊士らが跳び出し,四散する浪士達を追いかける。斎藤は,附近の道へ逃げた浪士を追いかけた。

▼路地に入った斎藤は,そこらに潜んでいるはずの浪士を警戒しながら慎重に歩を進める。と,そこで行き会ったのは,先ほどの辻占売りの少女おしづだった。「ここは危ないから向こうへ行きなさい」と声をかけた斎藤だが,その瞬間,浪士が猛然と背後から襲いかかってきた。
おしづは,たまらずギュッと目を閉じる…が,「もう大丈夫だよ」という声に,恐る恐る目を開くと,そこには斎藤一の笑顔があった。
斎藤が斬られたかと思い,びっくしたと言うおしづ。
「あんたは京都の子供じゃないね?」…斎藤の問いかけに,
おしづは目を伏せて,淋し気に頷く。

斎 藤 「お父さんや,お母さんは?」
おしづ 「知らないの」
斎 藤 「知らない?」
おしづ 「だって,あたしが,小さいときにはもう…」
斎 藤 「そうか…大変だね,よし,小父ちゃんが,その辻占,
     買ってあげよう」







▼斎藤は,辻占を全部買ってやった。
おしづは,隊士たちと去って行く斎藤の後ろ姿をずっと見送る。
斎藤は,その帰途で辻占をひとつ開いてみた。
渋い表情の斎藤。傍にいた隊士は,どうかしたのかと尋ねたが,
斎藤は何食わぬ顔で辻占を捨て,歩を進めた。
占いは「凶」だった。

▼土方の解説
情勢は,日一日と切迫した。
大政奉還した将軍慶喜は,既に,大阪に下っていた。
日ならずして幕府の勢力は全て,その姿を京都から消すはずである。

▼斎藤は,部屋でひとり,辻占を全部開いて見ていた。
結果は,凶や大凶ばかり。
そこへ笑顔の沖田が来て,斎藤に「女性が訪ねて来た」と告げる。
普段から女ッ気のない斎藤は,そんなはずはないといぶかる。
沖 田 「厭だなァ,女だって,お婆ちゃんもいれば,子供もいますよ」
斎 藤 「え?」
沖 田 「出てあげなさいよ,待たすと,泣き出すから」

▼訪ねて来たのは,おしづだった。
おしづは,「辻占を全部,新選組の偉い人が買ってくれた」と親方に話したが,「辻占捨てて,どこかで金を盗んできたんだろう」と叱られ,
「何度も親方から叩かれた」と言って泣き出した。




斎 藤 「そうか…ひどい親方だな,よし,泣かなくていい,
     小父ちゃんが,親方のところへ行ってやる」

▼おしづを,どこからか証文で買い受けたと見える親方の竹蔵は,
おしづと同じような身の上の子供達を,昼夜構わず働かせているらしい。
斎藤は,竹蔵に,「自分の尺度で他人を計るな」と注意する。

▼斎藤は,おしづと境内あたりの茶屋で餅を食べながら話しをする。
「しいちゃん」と愛称で呼ばれているというおしづのことを、
斎藤も「しいちゃん」と呼ぶことにした。






おしづは幼い頃,ひとり浜辺で遊んでいた記憶を語る。
斎藤もまた,浜辺で遊んだことを話す。
すると,ちょうどそこらで遊ぶ子供達のわらべ歌が聞こえてきた。
「天神様の唄」を歌いながら輪になって遊ぶ子供達。
斎藤は,一緒に遊んだらいいとおしづを促す。
喜んで遊びに行ったおしづだが,
「知らない子は入れない」と仲間外れにされてしまう。
泣きながら引き返したおしずは,転んでしまう。
斎藤は急いで駆け寄り,涙で濡れた顔を拭ってやる。
京都では「誰も遊び相手がいない」と泣く,おしづ。
そんなおしづに,斎藤は「小父ちゃんが遊んでやる」と励ます。
両親が他界し,七つのお祝いもして貰えなかったおしづは,
先ほど子供達が歌っていた「七ツのお祝いの歌」
(天神様の歌)を教えて欲しいという。
斎藤は,天神様の唄を歌う…
♪とおりゃんせ,とおりゃんせ,
 ここはどこの細道じゃ,天神様の細道じゃ…♪
 おしづは,斎藤のあとについて歌う。

▼その晩,近藤は,試衛館道場の面々と会食をしていた。




斎藤の姿がないのを気にした近藤は,何処に行ったのか聞く。
すると沖田がニヤニヤしながら,
沖 田 「斎藤さんはね、面会に来た女性と,一緒に外出しましたよ」
近 藤 「なに,女と」




▼カタブツの斎藤に女ができた!
一同,騒然となるが,土方は,沖田の言葉をニヤリと疑う。




そこへ斎藤が入ってくる。

斎 藤 「遅くなりました。会食があるとは知らなかったものですから」
近 藤 「いやいや,急に思いついたので」
原 田 「一さん,あんた,どこへ行っていたのだ」
永 倉 「外出していたそうだが,誰とだい」




沖田は,にやにやと斎藤をみる。

斎 藤 「いやちょっと。仲良しになった女の子とね」
    



原田,永倉,顔を見合わせ,井上は奇声をあげ,近藤は関心したように,

近 藤「歳さん,やっぱり本当だ」

土方,判らない顔になる。



    
▼斎藤は,自分の全財産を,おしづの養育費として提供することにし,
小者の半助に養い親を探してくれるよう頼んだ。斎藤の心がけに感心した半助は,別室にいる近藤,土方,沖田の前で,そのことを話す。

沖 田 「いよいよ戦だからな,斎藤さんは,
     覚悟を決めてしまったんだなァ」

▼土方の解説
斎藤一はかつて,新選組に参加する時、
先祖代々の明石藩士の家柄もなにもかも,
全て整理してしまった男だ。
新選組を,死に場所と決めたからであろう,
斎藤一はそういう男だ。

▼幕軍が京都から大阪へ去った後,新選組は,京都の本陣を引き払って伏見に留まり,最前線を担うことになった。時勢に乗じた俄か志士の下らぬ挑発に乗らぬよう,土方は全隊士に注意喚起する。

▼そんな折,小者の半助から,おしずの養い先について連絡が入る。
一件,良さそうな家があったが,急に断って来たのだという。京を離れる「新選組」の関係筋ということで,敬遠されたらしい。しかし,半助は,他にも良さそうな家を探しており,最近,女児を亡くしたばかりで,寂しがっているという商家に,引き続き交渉を続けてみるという。
少し安堵した斎藤は,「京都に,いい思い出が,一つできそうだよ」と言って,沖田と喜んだ。

▼間もなく,斎藤は,おしづを引き取るため,竹蔵の家を訪ねた。
奥の間から出てきたおしづに,「迎えに来たよ」と笑顔を見せる斎藤。
おしづは嬉しそうに斎藤の胸へ飛び込む。が,その身体は火のように熱い。もともと身体の弱いおしづは,親方の竹蔵にこき使われ,風邪をこじらせていた。竹蔵は,熱のあるおしづに雑巾がけをやらせていた。これを聞いた斎藤は,「バカモノ!」と竹蔵を一喝する。




▼斎藤は,おしづを早速,医者にみせた。肺炎を起こしているらしい。
暫く医者の処に,おしづを預けることにした斎藤は,
病が治り次第,迎えに来ることにした。
隣室で寝ていたおしづが目覚め,斎藤を呼ぶ。
寝床にいるおしづに,斎藤は優しく話しかける。

斎 藤 「しいちゃんは病気だからね,ここはお医者さんの家だ,
     だから安心して寝ていればいい,すぐ治る」
おしづ 「治ったら小父ちゃん…」
斎 藤 「すぐ迎えにくる」
おしづ 「わー嬉しい,あたしね,この間見た夢,今も見てたの」
斎 藤 「どんな夢かな」
おしづ 「小父ちゃんとあたしとね,二人で,浜辺で遊んでるの,
     とってもきれいな夕焼け雲が海の上にみえるの。
     そして,小父ちゃんと一緒に,天神様の歌を歌っているの…」
斎 藤 「そうかい…二度も見たんだから,きっとその夢,本当だよ」

斎藤は,必ず迎えに来ると言って,おしづと指きりをする。

▼新選組は,二隊ごとに屯営を出立した。
近藤,土方らが隊を先導して続々と去り,
残るは沖田と斎藤の隊だけとなった。
 
▼その晩,医者の処へ大勢つめかけた町人連中が雑談で,
「新選組が、どんどん町から逃げて行く」と話していた。




それを隣室で聞いたおしづは,はっと身を起こし,
まだ熱のある身体で,夜道を駆け出して行く。
おしずは,必死に走りながら斎藤の幻影を追いかけ,
「小父ちゃん、行っちゃ厭だ!」と泣きながら叫ぶ。
路地の曲がり角で,うつ伏せに転んだおしづは,
地面から少し身を起こし,力なく呟く。
おしづ 「小父ちゃん,行っちゃ厭だ…」




▼斎藤と沖田が京都を出立する直前,屯営に町会所から世話役が来て,
生き倒れの子が斎藤の名を呼んでいるという。斎藤は驚いて出かける。

▼斎藤が町会所へ駆けつけた時,既におしづは息絶えていた。
奥畳の上の布団に寝かされた,おしずの小さな顔の上には,
白布がかかっている。斎藤は,おしづの枕もとに近寄り,
おしづに話しかける。

斎 藤 「しいちゃん,先に行って待っていなさい。
     浜辺で,天神様の歌を一緒に歌って
     小父ちゃんも遊ぶからね。
     小父ちゃんは御用があるから少し遅れる,
     でも必ず行くからね。
     しいちゃんの遊んでいる浜辺は
     何処の海岸か判らないけれど,
     小父ちゃんは,日本中の海岸を歩いてでも
     きっと探すからね」

▼その時,時を刻む鐘の音が聞こえる。
斎藤はふっと顔を上げる。
町会所の世話役が,「七ツやな,もう…」と呟く。

▼屯営に戻った斎藤は,沖田の一番隊と共に京の都を出立する。

▼土方の解説
その日,京都を去った新選組が,再び京に戻ってくる日は遂になかった。
新選組は,伏見・鳥羽に闘い,そして敗れ,大阪に退き,江戸に退き,
更に敗れた。同志の全ては倒れ,やがて散って行った。
だが,新選組三番隊組長斎藤一は最後まで,ただ一人黙々として闘った。
遠く,雪降りしぶく北国の果ての海まで闘った。ただの一度も,激しい言葉を口にすることなく,気負い立った姿を見せることもなく…」

▼斎藤は,正面を向いたまま,黙々と歩む。
斎藤には,おしづの歌う天神様の歌が聞こえている。
空に浮かぶ,あかね雲から「海がとっても綺麗よ」と,
おしづの声が聞こえてくる。
斎藤は胸の中で呟く。
「小父ちゃんは,日本中の海岸を歩いてでも,
 きっとしいちゃんを探すからね」…

(了)
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第18話…油小路の決闘(『新選組血風録』)




▼スライドショー(リンク)
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『新選組血風録』 油小路の決闘(省略字幕版)※光源染色初期画像






(第18話)

▼土方の解説
型破りの暴れ者の多い新選組の中でも,この男の豪放磊落は見事なものがある。諸士取調役兼監察,柔術師範頭・篠原泰之進(シノハラ タイノシン)である。参謀伊東甲子太郎の古い同志として,伊東の入隊と共に新選組に加わった。剣は北辰一刀流に長じ,柔術は良移心倒流の達人である。
この男の豪勇を伝える話は多い。例えば,かつて,ある日,潜伏した倒幕浪士を調べるため,奈良に赴いた時,浪士達は,札付きの暴れ者であり,
篠原達は,その場所を確かめればよい。新選組は大挙して出動する手筈となっていた。だが,倒幕浪士達は篠原達が調べに来たのを既に知っていて,俄然,逆襲に出た。

▼篠原は,襲いかかる相手の刃をかわし,得意の柔術で投げ飛ばす。
逃げる相手を深追いせず,「刀を置いて行く奴があるか」と投げ返してやった。

▼近藤は,篠原の豪放ぶりに感心する。
伊東もまた,彼ならではの技だと,篠原を高く評価するが,土方は,不快感を示す。

土 方 「近藤さん,いつまでも試衛館道場の
     武芸者のつもりでいては困る。
     武芸者ならば,篠原君のその技を褒めてもいい。
     しかし,ここは新選組だ。
     無刀流の稽古をするところではない」
近 藤 「…」
土 方 「篠原君は,新選組隊士として奈良へ行ったのだ。
     飛び出してきた倒幕浪士は,全て討ち取るか召し取るか,
     その二つしかないはずだ」
近 藤 「それは,その通りだ」
土 方 「篠原君は,確かにいい技をみせた。しかし,結果としては,
     倒幕浪士を二人,みすみす逃がしたことになる」
伊 東 「土方君,そう言ってしまえば身も蓋もなくなる」
土 方 「いいや,そんなことが局内に流行ってもらっては困る。
     私は,篠原君は隊士として,
     重大な失策をしたとしか思っていない」

近藤は,土方から篠原へ一言忠告するよう申しつける。

▼早速,土方は篠原を呼び,二度と同じことをすれば,局中法度によって処断する方針を伝えた。

▼土方の解説
参謀伊東甲子太郎は,江戸から連れて来た北辰一刀流の門弟を始め,
多くの隊士を側近として擁していた。
篠原泰之進は,その中で別格の扱いを受けていた。
篠原は,伊東の相談相手なのである。
才人伊東にとっては,篠原のような豪勇磊落の士が,
力強い支えとなっていたのであろう。

▼伊東は,新選組を利用して,勤王倒幕の一団を結成しようとしていた。
既に新選組の隊内から七人を味方に付けたという。篠原は,伊東の意見を聞く近藤はともかく,土方歳三は侮れないと忠告する。しかし伊東は,土方への対策については考えてあるという。近藤と江戸以来の同志であった藤堂平助も味方に付けたと,自信をみせる。伊東は,篠原の決意が決まり次第,行動を実行に移すという。

▼原田達は,山南の切腹以来,藤堂の態度がそっけなくなったとこぼしていた。「党中党を作るような伊東の仲間内に入っていくことはない」と言う原田。

▼土方の解説
藤堂平助が,同じ北辰一刀流につながる
伊東甲子太郎に接近していたのは事実である。
脱走の罪をもって切腹した山南敬助も,北辰一刀流であった。
藤堂は山南と仲が良かった。
伊東甲子太郎が,そのとき山南を弁護し,庇ったことが,
藤堂を伊東に近づけたのであろう。
伊東が,心中密かに何を策していたか,
おそらく藤堂には,わからなかったのかもしれない。
我々もまた,その時まで,何も掴むことはできないでいた。
山崎烝以下の監察部員が全力を注いで探っても,
何もわからなかったのである。
伊東は才人にして策士である。
おそらく,監察部に疑問を抱かせるような下手な手は打つまい。
しかし,伊東は確かに着々と事を運んでいるはずだ。
証拠はない。ただ,私には勘があった。

▼土方の指示で,山崎は伊東らの動きを探っていたが,特に変わったことはないという。中でも篠原泰之進は,反新選組の様子など全く見られないという。

▼土方の解説
監察山崎烝の調べたとおりであろう。
篠原泰之進は,あるいは倒幕佐幕ということなどに本当は興味がなく,
豪放磊落の男にすぎないのかもかもしれん。
ただ,あまりにも対照的な策士伊東甲子太郎だからこそ,
そういう篠原のような男を,最も必要としたとも思える。

▼ある晩,土方は,一人の刺客に襲われる。が,返り討ちにした。
そこへ来た沖田は,倒れた浪士にまだ息があるのを見て介抱してやる。

▼土方の解説
沖田はこういう男だ,今始まったことではない。
この時,私は黙って見ていた。
ただ,思いも寄らぬ手当を受けた刺客は,
呆然としたように沖田を見つめていた。

▼沖田は,浪士を医者へ運んでから屯営に戻ると言い,
土方には,先に帰るよう促した。

▼土方の解説
倒幕浪士が新選組を襲うということは珍しいことではない。
その夜の,その事件も,私にとっては別に気にかかることではなかった。

▼やがて屯営へ戻った沖田は,土方の部屋へ来る。

沖 田 「あの男,やっぱり死にましたよ,
     土方さんを襲った刺客ですよ」
土 方 「そうか」
沖 田 「困りましたよ,」
土 方 「何がだ」
沖 田 「あの男,息を引き取る前に,
     是非,私に話しておきたいことがあるというんで,
     聞いてやったんですが…」
土 方 「何を頼まれたのだ」
沖 田 「そうじゃないんです,困ったことを打ち明けて,
     死んでしまった…」
土 方 「言ってみろ」
沖 田 「あの男,伊東甲子太郎先生に頼まれて,
     土方さんを襲ったというんです。
     信じたくはないが,最期の言葉だから,
     私としては,黙って聞いているよりほかはない。
     厭な話で,私も気が進まないが…」
土 方 「わかった,その話,誰にも言うな」
沖 田 「勿論です」
土 方 「近藤さんにも黙ってろ」
沖 田 「そのほうがいいと思ってます」
土 方 「伊東甲子太郎に会っても,素知らぬふりをしておけ」
沖 田 「そのつもりですがね,上手く行くかなァ,
     私はとぼけるのが下手だから」
土 方 「そのときは総司,おまえも,刺客に襲われないように
     気を付けろ」

▼土方の解説
参謀伊東甲子太郎が,密かに刺客を使って私を襲う。
私はその事実を冷静に受け止めることができた。
何故ならば,私はその時が,遅かれ早かれ,
必ず来ることを予想していたからである。
伊東甲子太郎は,前に変わらず平然と,
近藤と時局を談じ,いささかの
疑いも持たれず,篠原泰之進は,
少しも変わらぬ磊落な振る舞いで,
隊士達の人望を集めていた。
だが,ある夕べ,
町の片隅で起こった些細な事件が,
伊東甲子太郎の運命を決めた。
しかもそれは,
どこの誰ともわからぬ若侍達の
酒の勢いが起こしたともいえる。

▼篠原は,隊士の鈴木と酔った若侍達の間に入り,斬り合いを止めたが,
相手を投げ飛ばした際,背中に刀傷を受けてしまう。仮にも新選組と名乗って闘い,相手を逃して一方的に斬られたことが局へ知れれば今度こそ間違いなく切腹だと慌てた篠原は,その晩,屯営へ戻らず,女の家へ逃げ込んだ。翌朝,伊東が訪ねてきたとき,篠原の覚悟は決まった。伊東は計画を実行することにした。

▼近藤と土方の前で,伊東は新選組から「分離」することを表明した。
驚いた近藤は,ひとまず伊東を別室に待機させ,土方と相談する。

近 藤 「歳さん,どう思うかね,こういう例は,今までにないことだ。
     精神は同じだが,別な方針でやりたいから,
     隊士の一部を連れて分離するという」
土 方 「近藤さん,伊東甲子太郎は,やっぱり清河八郎だったのだ。
     新選組を倒幕に利用しようというだけだ」
近 藤 「しかし,その証拠がない」
土 方 「その通りだ。だが,その証拠は,
     俺が必ずこの手に握ってみせる。
     ひとつだけ言っておくが,伊東はかつて,
     刺客を使って,この俺を襲わせたことがある」
近 藤 「なに,どうしてそれを私に言わん」
土 方 「言えば,あんたは即座に伊東を斬っただろう」
近 藤 「無論だ,断じて許せん」
土 方 「しかし,それでは,残りの敵を逃がしてしまう。
     私は,敵は全て,一網打尽にすべきと思っている」
近 藤 「なるほど」
土 方 「今,その機会が来たのだ。近藤さん,分離を認めろ,
     新選組を裏切る者の全てが,はっきりわかる時が来たのだ」

▼土方の解説
近藤は,伊東甲子太郎の分離を許した。
十五人の者が,伊東のもとに加わった。
局内は大動揺を起こした。
伊東と共に藤堂が分離することになった。




▼土方は,斎藤一を伊東派へ加えさせ,間者として差し向けた。

▼土方の解説
なまじ有能なる監察部員を使えば,
才人伊東甲子太郎は気付いたであろう。
だが,斎藤一の無策の策は,策士伊東の裏をかいた。
伊東甲子太郎は「御陵衛士(ゴリョウエジ)」を名乗った。
だが斎藤一の情報は,刻々と,伊東の本性を我々に知らせた。

▼近藤は,伊東を酒席に招いた。

▼土方の解説
伊東甲子太郎は才人であり,策士であり,
更に自信家でありすぎた。
彼は,礼を尽くした近藤の招きに応じ,
単身,近藤の前に姿を現した。
伊東は己の計画が崩れることなど,
考えることはできなかったのであろう。
才子,才に溺れたのである。
伊東甲子太郎は,あるいは近藤といえども,
いつかは己の傘下に引き寄せる自信があったのかも知れない。
しかし,北辰一刀流の名人として知られた伊東甲子太郎の最期は,
一瞬にして終わった。

▼ほろ酔い気分の伊東は,帰り道,
闇に潜んでいた新選組隊士らに斬殺された。
土方は,伊東の死体を戸板に乗せて油小路へ運ばせ,
やがて番所の知らせを聞いて駆けつけるであろう,
「裏切り者」の到来を待ち伏せた。




▼間もなく,伊東のもとへ御陵衛士達が駆け付けた。
中には藤堂平助もいた。
一網打尽にするため襲いかかる新選組。
乱闘の中,藤堂と出くわした試衛館のもと同志達は
彼を逃がそうとしたが,
行く手を阻んだのは土方だった。






藤堂は一瞬ためらうが,意を決して土方に斬り込んだ。
瞬間,土方の刃は猛然と藤堂に下った。




倒れた藤堂を,土方はじっと見つめる。
沖田や原田ほかの隊士達は,いたたまれず,目を反らす。




▼土方の解説
新選組を利用し,倒幕派の一大戦闘集団を作ろうとした,
策士伊東甲子太郎の企ては,慶応三年のその日,
十一月十九日,油小路に潰え去った。
虎口を脱した篠原泰之進以下の生存者は,
今や誰はばかることなく,公然と,薩摩藩京屋敷に入った。
しかし,もはや我々と彼らの暗闘の時期は終わった。
彼らと新選組が,白日のもとに,倒幕佐幕に分かれて,
日本の運命を決める決戦を展開する時期は,もう,目前に来ていた。
王政復古の大号令は,十二月九日に迫っていたのである。

(了)
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第17話…鴨川銭取橋(『新選組血風録』)





(第17話)

▼土方の解説
慶応二年,幕末の情勢は一刻も留まる事を知らずに動いていた。
いわく,公武合体,いわく,薩摩土佐同盟,いわく,
幕府の対長州強行政策,それに対応する薩長同盟への策謀,
いずれにしても,やがて凄まじい激突の時は迫っていた。
新選組は,ただ,その事態に備えるだけである。

▼土方の解説
武田 観柳斎(タケダ カンリュウサイ),
出雲松江藩出身,(甲州)長沼流軍学の免許を有し,
ために五番隊組長に抜擢され,兵学師範を兼ね,隊内に重きをなす。
特に,近藤に取り入ること極めて巧みにして,
軍学の講義と称してその感心をつかみ,
局内政治向きにも発言力を持った。
だが,時代の急変に応じて,幕府は旧来の兵法に変えて,
フランス式調連を正式に採用したため,
新選組もまた,それにならった。
長沼流軍学は廃止された。
武田観柳斎の権威は,著しく失墜した。
それが,武田観柳斎の運命を狂わせた。




近 藤 「ところで,フランス式調連の成果はどうだね」
土 方 「いいようだ,第一,隊士達が張りきっている。
      今までの軍学調連がつまらなかったからな」
近 藤 「(頷く)…」
土 方 「俺は黙って見ていたが,長沼流軍学というのは古すぎて,
     やれ首実験の作法がどうの,馬印の立て方がどうの,
     鎧の付け方がどうのと,あんなこと,いくら覚えたって,
     実際の戦闘にどれだけ役に立つか,わかったものではない」
近 藤 「(笑)…歳さん,君は土方流喧嘩軍学の開祖だからな(笑),
     ま,それはいいとしいて,武田君は,
     新しいフランス式調連を勉強してくれているのか」
土 方 「今のところ,その様子もないが…」
近 藤 「それは困るな,なんといっても武田君には
     軍学の素養があるんだ。
     早くフランス式戦闘方法を身につけて,
     隊士達に教えてもらわねばならん」

(土方の内心)
私は,言おうとしたことがあったが,口には出さなかった。
近藤は自分が誠実であるだけに,他人もまた,誠実だと思っている。
自分が人を裏切らないように,他人もまた,
自分を裏切らないと信じている。
近藤は,武田観柳斎を,誠実にして信頼すべき隊士と思っていた。

▼土方の解説
その日,武田観柳斎は,洛北某所の私宅に赴いていた。
新選組幹部は,「休息所」と称する私宅を許されていた。
新選組といえども,私宅における隊士の言動にまで,
干渉することはできない。

▼武田は,いつになく不機嫌な様子で,女房の「おはな」に当たり散らす。「もしかすると,新選組を辞めねばならんかもしれん」…武田はそう言い,おはなに頼んで,「ある場所」へ手紙を届けさせた。やがて帰宅したおはなに,うまくいったかどうか尋ねた武田は,後日,その返事が来ることを聞いて,ひと安心する。

▼土方の解説
武田観柳斎が,その日,自分の女に何を頼んだのか,
無論それは,わかる術とてない。
ただ,武田観柳斎は,存在を無視されたまま,
引き続いて勤務を続けた。
五番隊組長の役職に変わりはなかった。
それは近藤の,温情主義の表れでもある。
武田観柳斎は,当然,その近藤の好意に報いなければならない。
本人もまた,それを口にした。

▼ある日,武田は,近藤の部屋へ行き,自ら考案した意見書を手渡す。
近藤は,武田が席を立ったあと,傍にいた沖田に,それを見せながら感心する。と,そこへ土方が来る。沖田は土方に意見書を渡し,

沖 田 「武田観柳斎先生の意見書ですよ。
     薩長同盟をブチ壊す大英断が書かれてますよ」

土方は意見書に目を通す。

沖 田 「たいしたもんでしょ」
土 方 「なるほどな…」
近 藤 「武田君は,流石に有能の士だ。
     長沼流軍学に替わるべきもので,
     十分,新選組に尽くしてくれる」

▼近藤の部屋から引き上げる際,沖田は,横を歩く土方に,先ほどの意見書について尋ねる。土方は,「あの通りにできたら,言う事はない」と,特別問題にしない。沖田も同感し,剣の稽古に向かった。 

▼土方の解説
沖田は刀で新選組に尽くす。
武田観柳斎は,軍学を失った今,
何をもって新選組に尽くそうとしているのか,
沖田はその直感で気付いたのだろう。
武田観柳斎が近藤の歓心を買う事で,
新選組に尽くそうとしているのを…。
が,それはそれでいい。
いつかはそういう手段は,捨てられる運命にあるのだ。
その夜,小さな事件がひとつ起きた。
武田観柳斎とは,全く関係ない事件である。

▼監察の山崎から,三番隊平隊士の狛野(コマノ)千蔵が,清水の産寧坂で斬殺されたと報告が入る。三番隊組長の斎藤が,番屋で狛野の死体の傷口を見分したところ,狛野は,どうやら薩摩のお家芸「示現流」にやられたらしいとのこと。斎藤は,狛野と夫婦の約束を交わしていた「おそめ」という女に会いに行く。おそめは,「あけぼの」という料亭で,女中奉公をしており,狛野は,よくその店に来ていたという。狛野の死を伝えると,おそめは泣き崩れた。

▼おそめによれば,狛野は,その晩,店に泊まる予定だったとのこと。
更に,そのとき狛野から,店に新選組の武田が来ることを聞いたという。
武田は,島津藩が出入りする「薩摩屋」の紹介で,「あけぼの」に来ることになっていた。

▼土方の解説
三番隊平隊士・狛野千蔵の死は,不運な事故死として処理された。
どういう経緯で誰に斬られたのか,何の手がかりも得られずに終わった。
だが,その代わりに,思いがけない事実をつかむことができた。
全く偶然である。
武田観柳斎と薩摩藩出入り商人との間に,何かがある。

▼武田が私宅に戻ると,おはなは,薩摩屋からの連絡を伝える。
その晩,清水の料亭「あけぼの」で,武田と面談したいとのこと。
料亭の近くで三番隊の狛野が斬殺された事件があったため,慎重にしていた武田だが,もう大丈夫だろうと意を決した。

▼土方の解説
監察部は直ちに行動を開始した。しかし,相手に気付かれてはならない。
料亭「あけぼの」には,斎藤一が一人,密かに門をくぐった。

▼「あけぼの」に来た武田と薩摩屋を,別室で見張る斎藤は,彼らの様子を,それとなく女中のおそめに探らせ,その接触の機会を待っていた。
それぞれ,別々の座敷にいるという。

▼土方の解説
斎藤一は,根気良く粘った。そして,ついに掴んだ。

▼おそめからの情報によれば,両者は帰りがけ,廊下で接触し,薩摩屋が武田に「確かに」と言ったという。斎藤の報告を聞いた土方は,早速これを近藤へ伝えた。

▼土方は,それとなく沖田を使い,武田が薩摩と内通している噂があると,かまをかけてみることにした。

▼土方の解説
それから間もなく,「野狐おびき出し」の作戦は功を奏した。
沖田はうまくやった。

▼俄かに動揺した武田の様子を見た沖田は,それを近藤や土方に報告する。焦った武田は,自室で手紙を書き始めた。

▼土方の解説
武田観柳斎は,逃亡する恐れがあった。
我々は迅速に手を打った。

▼斎藤は武田に,近藤と日番の隊士らで会食をする旨,告げる。
武田は,島津藩宛ての手紙を早急に書き上げ,
小者の半助に私宅へ届けるよう頼む。
廊下の隅で待っていた土方は,半助から手紙を取りあげて内容を読む。
土方の表情は,驚きと憤りの様相を呈す。

▼土方の解説
野狐は罠にかかった。
新選組に巣食っていた狡猾なる野狐は,
今,その本性を現したのである。

▼山崎は武田の私宅へ出向く。
もともと銭勘定にうるさい武田のことを嫌っていた女房のおはなは,知っていることを全部話した。おはなから薩摩屋を通じ,武田は薩摩の中村半次郎に手紙を渡していたという。武田は,その晩,屯営を脱走し,薩摩の藩邸へ逃げ込むことになっていた。

▼斎藤のもとを訪れたおそめは,明日,田舎の駿河へ帰るという。斎藤はおそめに,狛野の死は決して無駄死にではなかったと,ただそれだけ伝えた。

▼武田と会食する近藤,土方,沖田,斎藤。
土方は,武田に,夜道は危険なので斎藤と沖田に同行させると申し出た。

▼土方の解説
武田観柳斎は,新選組を裏切った。
しかし,寝返りをうつ先方の薩摩藩が,
武田観柳斎を新選組と刃を交えてでも引き取るならば,
あるいは,この男にも,新しい運命が開けたかもしれない。

▼武田のすぐ後ろを付いて歩く斎藤と沖田。
銭取橋にさしかかったとき,
斎 藤 「武田君,もうおわかりだろうが,
     我々は局中法度によって君を処置する」
これを聞いた武田は,橋をダッと駆けて出す。
すかさず沖田と斎藤が追いかけ,武田の行く手を阻む。
すると武田は,「武田でござる! 武田観柳斎でござる!」と,
大声で橋の向こう側へ叫んだ。
橋向かいから,薩摩の侍三人が,武田を迎えに来ていた。
勢い走り来る侍たちを確認した武田は,抜刀する。

斎 藤 「そうか,こういう段取りになっていたのか」

沖田は,素早く橋の中ほどまで走り,侍たちの前に立ちはだかる。
相手は夫々抜刀したまま身構える。

沖 田 「新選組の沖田総司である。いずれの御家中か知らぬが,
     新選組内部のことに手出しは無用,
     たってと申されるならば,沖田総司が相手を致す」

沖田は抜刀し,侍達をけん制する。
侍たちは沖田の迫力に怖じ気づき,
今来た道を急に引き返して逃げて行く。
それを追いかける沖田。

一方,斎藤も,抜刀して武田と対峙する。

斎 藤 「武田君,武士らしく,覚悟を決めたまえ」

武田は,斎藤めがけ上段から斬りかかる。
が,斎藤の刃が一閃,武田の腹を斬り裂く。
武田は,倒れた勢いで,橋から下の川へ転落…即死した。

斎藤のもとへ,沖田が刀を鞘に収めながら戻って来る。

沖 田 「(侍たちは)振り向きもしないで行ってしまった」
斎 藤 「そうか,振り向きもしないで行ってしまったか」

沖田と斎藤は,プカッと浮かんで川面に漂う武田の背中を
橋のの上からじっと見つめる。
沖田は目を反らして呟く。




沖 田 「武田観柳斎は,新選組を出ようとしたが,
     初めっから新選組に入っていたのが,
     間違っていたのかもしれないな…,
     迎えに来た島津の藩士が,自分を見捨てて逃げた,
     みじめな思いをしただろうなあ。
     人間がその一生を終わる時,
     そんな思いだけはしたくないな」

武田の姿は,川の中に沈んで消えた。

▼逃げ帰った薩摩の侍達は,ちょうどそこへ来た中村半次郎に報告する。
中村は,武田の名前など覚えがない様子で,事が露見していたことなど大して気にもせず、「新選組を裏切るような男は,そのうち薩摩も裏切るかもしれん」と高笑いし,皆で宴会をしようと,清水の料亭へ出かけて行った。

▼土方の解説
新選組局中記録,慶応二年九月二十八日,
新選組五番隊組長・兵学師範武田観柳斎,
鴨川銭取橋において事故のため死す。
原因不明。

(了)
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第16話…襲撃木屋町二條(『新選組血風録』)





(第16話)

▼土方の解説
慶応元年の暮,新選組は,本営を西本願寺より不動堂村に移した。
倒幕佐幕の闘いは,いよいよその激しさを加えていった。
新選組もまた,新たなる事態に備えて,飛躍的な発展を計らねばならぬ。
幹部は八方に飛んで,強力精悍なる隊士を集めていた。

▼隊士募集に近江の田舎道場へ出張した井上源三郎は,
調役の大石と共に,四名の若者を連れて帰還した。
その中の一人,牧 平馬は,故郷の恋人・志乃に手紙を書き,
新選組隊士として出世した暁には,京へ志乃を呼び寄せる約束をする。
牧も志乃も,互いに身寄りがなく,将来は夫婦になる約束を交わしていた。

▼見習い隊士の教練係を任された大石鍬次郎の指導は厳しい。
「一旦こうして入隊した以上は,一切の勝手や我侭は許されない,
聞いているのか!」と喝を入れる大石。
その大声を聞いた沖田は,土方と近藤のいる部屋へ来るなり,

沖 田 「始まりましたよ」
土 方 「なにがだ」
沖 田 「新入隊士の鬼係,大石鍬次郎さんのシボリが
     始まりましたよ(笑)」
土 方 「(笑)総司,やっている大石君は,あれで一生懸命なのだ。
     一応,選んで連れて来たものの,
     海のものとも山のものとも判らない浪人上がりや郷士達,
     それに,中元崩れやヤクザまがいな者まで混じっている。
     それが短期間のうちに,どうやら新選組隊士らしく
     恰好がつくのも,大石君独特の教育のおかげなのだ。
     それをお前が横から,その顔でニヤニヤ冷やかしていては,
     締りがつかんぞ」
沖 田 「別に,冷やかしちゃいませんがね(笑)」
近 藤 「いやァ,まあいい。しかし,井上君は流石に苦労人だ,
     先のことを考えて,人を探して来る。
     今までどこの藩にも属したことがない,
     浪人の垢にも染まっていない,
     新選組生え抜きの隊士を育てるには,
     そういう若い人たちが適任だ。
     五年先,十年先にはその人達が,
     新選組の中堅として活躍をする…」
沖 田 「十年先にも,新選組なんてありますかねえ」

振り返った近藤は,沖田を睨みつける。
しまった!とばかりにうつむく沖田。

土 方 「総司,もう行け,暇潰しなら,
     自分の部屋で菓子でも喰ってろ」
沖 田 「はい,はい」

と,外から大石の名乗る声がする。

沖 田 「噂をすれば影だ,鬼の影だな」
土 方 「(叱るように)総司」

土方は,大石に入るよう促す。
大石の報告では,見習い隊士のうち,実践の経験の全くない者が六名ほどいるため,彼らに襲撃戦闘の経験をさせたいとのこと。

▼井上は,稽古に熱心に励む牧を見て満足し,大いに期待する。
大石も剣術の腕前を褒めていたと言って,牧を励ましてやる。

▼牧は,志乃が京で働けるよう店を探していた。
鍋物屋の店先で,井上と沖田に偶然会った牧は,
彼らと一緒に飯を喰いながら,事情を話す。
井上は,牧の恋人の勤め先を,適当な店に口添えしてやることにする。
好意に感謝した牧は,一生懸命精進することを誓う。

▼ある晩,不逞浪士の襲撃に八番隊と四番隊を率い,土方が出動した。
大石は,実際の襲撃を体験させるため,見習い隊士三人を連れて行くことにした。銃を発砲する不逞浪士らが追い詰められて逃げて来たところを,
大石が進み出て斬り伏せたあと,見習い隊士三名に,とどめを差すよう命令する。しかし,既に虫の息で倒れている浪士を前に,牧だけは,とどめをさすのを拒否した。

▼屯営へ戻った土方は,近藤と井上の前で,襲撃の結果を報告する。
五人は討ち取ったが,四人ほど取り逃がし,いずれも鉄砲を持って逃げた。その行方は,所司代が追っているという。井上は,付いて行った見習い隊士のことを訪ねる。と,そこへ大石が来て,見習い隊士についての報告をする。三名のうち,二名は合格だが,牧平馬のみ,「命令違反」と「戦闘意志の不足」で,謹慎処分にしたという。井上は,血相を変えて牧のいる謹慎部屋へ向かい,事情を聞く。

「重傷を負って立てない相手を,何故斬らねばいけないのか」

と自己主張する牧は,自分が本当に隊士として駄目な男かどうか,もう一度試して欲しいと井上に懇願する。困った井上は,その後,大石に話をするが,大石の態度は硬く,井上は声を荒らげ抗議する。

井 上「しかし大石君,武士の情けというものがあるだろう
    (珍しく怒鳴る)」
大 石「それは一人前になって言えることです。
    牧君達は,まだ一人前ではない。
    井上先生,武士の情けで,闘いは勝てますか!
    倒幕浪士は,武士の情けで,幕府を向いてますか!
    奴らは手段を選ばない,目には目,歯には歯です!
井 上「それとこれとは,あんた,話が違う!」
大 石「同じです! だいたい新入隊士達は,
    ただ,直参に取り立てられるとか,給与がいいとか,
    そんな甘い気持ちで入って来る者が多い!
    私はその甘い考えを,叩き直そうとしているだけだ!(大声)
    倒幕佐幕の闘いは,武士と武士との闘いではない!
    倒すか倒されるか…,
    ただその結果があるだけの闘いではありませんか!」

言葉に詰まった井上は,大石の後ろの廊下で立って聞いていた沖田に聞いてみる。

沖 田 「よく判りませんがね…要するに…」
井 上 「要するに何だ!(大声)」
沖 田 「やめときましょう,言うと誰かに叱られそうだ」

そこへ土方と近藤が来る。

土 方 「近藤さん,どうする」
近 藤 「私は,牧平馬君が,士道に背いたとは思わない。
     あるいは武士として当然だったと言える。
     しかし,大石君の意見もまた,もっともである。
     従って私としては,この際,牧君の意思に任せたいと思う。
     牧君はまだ見習い中である,
     この際,本人が除隊したいと申し出るならば,
     許してもいいと思う。歳さん,どうかね」
土 方 「前例はないが,局長として許可するなら,
     それもいいかも知れない。井上さん,いいですね」

井上は困った顔をして押し黙る。
その後,井上は,牧の意向を聞いてみたが,
牧は新選組を離れないという。

「ひとたび志を立てた以上,私は最後までやり抜きます」

牧の意志は固い。

ちょうどその頃,新選組の屯営に,志乃が訪ねてきた。
応対に出た井上は,牧が謹慎中だとは言えず,公用で外出中だとごまかし,事前に口をきいて手配した店の手代と共に,志乃のために用意した京都の勤め先へ行くよう勧める。井上は,ちょうどそこへ来た沖田に,新入隊士を集めるのは難しくて,こりごりだとぼやく。


▼二條木屋町の料亭に鉄砲を持って潜んでいる浪士の情報が所司代より入り,土方はらは再び出動することになった。井上は,土方に,牧を連れて行っていいかと聞く。土方は,これを許可した。井上は,牧の謹慎処分を解き,出動に参加させるにあたり,明日は志乃に会えるぞと言って励ます。

▼不逞浪士達が隠れている木屋町二條の料亭に到着した土方ら新選組は,
既に手入れが回ったと察知した浪士達が,近くの長州屋敷へ逃げ込むのを阻止するため,襲撃を強行する。銃を持った浪士達を料亭の表と裏から挟み討ちにするにつき,まず,土方一人が料亭にいる彼らの前に行き,役儀によって連行する話をする手はずにしたが,そこへ向かう途中,浪士達が料亭横の川伝いに逃げるのを目撃した土方は,細い路地の裏手へ回り込み,そこへ走り来る浪士達の前に立ちはだかり,既に新選組が周りを包囲しているため,無駄な抵抗はせず鉄砲を捨てろと怒鳴った。

が,浪士達は,銃を構えたまま,細い路地をジリジリと前進する。
土方は咄嗟に物陰に隠れるが,浪士達がすぐそこまで迫って来る。
土方の隠れた場所から少し離れた後方には,
井上や大石ら数名の隊士がいた。
暫し,こう着状態であったところ,
井上の横に控えていた牧が不意に飛び出す。
井上や大石は,銃を持った浪士達の前に突進する牧に,
背後から「やめろ! 伏せろ!」と叫んだが,
牧は勢い抜刀し,鉄砲玉のように相手めがけて突撃する。
慌てた浪士達が後退しながら放った数発の銃弾の中をかいくぐり,
牧は,なお勇猛に前進し,浪士らに斬りかかっていった。

▼屯営でひとり待つ近藤に,土方は,不逞浪士四名を全て討ち取ったと報告する。

近 藤 「御苦労,味方は」
土 方 「一人…一人,死んだ」

その後,牧の死体が戸板で運ばれてきた。
井上は,近藤の前で牧の顔の白布を少し上げ,近藤に確認のためみせた。
無言のまま,じっと耐える井上をはじめ,重苦しい雰囲気の隊士達の姿があった。

▼土方は,後日,屯営を訪れた志乃に面談する。
志乃は,牧の行方を聞くが,土方は黙ったまま沈痛な表情を浮かべる。
同じく沈痛な面持ちの井上が,骨壷に納められた白い包を持って来た。
沖田も次いで来る。井上は,遺骨を志乃の前へ差し出す。

井 上 「これが,牧君です」

志乃は声を立てずに「えッ!…」と驚く。

井 上 「昨夜,立派に,闘って,死なれた…」

志乃は,信じられないという顔で,土方のほうを見る。

土 方 「お気の毒な事をした,今更申し上げる言葉もない。
     あなたは,牧君のただ一人の身寄りだ。
     今後のことについては,新選組として,
     できるだけのことをしたい」

これを聞いた志乃は,初めて牧の死を実感し,
押し殺したような声で泣き出した。
土方は,黙礼して,その場を立ち去る。
井上も,いたたまれず,あとを沖田に任せて出て行く。
その場に泣き崩れる志乃。
沖田はじっと黙って見守る。

▼やがて,廊下に佇む土方と,横で力なく座っている井上の前に現れた沖田は,志乃が黙って遺骨を持って帰ったと報告する。
身寄りのない彼女が今後どうするのか,沖田なりに気にかける。

▼土方の部屋に来た大石は,牧の死は自分の処置のためではないかと尋ねる。

土 方 「牧平馬君は新選組隊士として倒れた,君と関係はない。
     君の任部は,隊士を鍛えあげることだ。
     鍛えて,鍛えて,鍛え抜くのだ。
     それ以外に考えることはない」

大石は了解して出て行く。
入口附近に,井上が座っている。

井 上 「歳さん,あんたも大変だね」
土 方 「俺は,新選組に命を懸けている」

井上は黙ってうなずく。

井 上 「ワシは,江戸の貧乏道場におったほうが,
     性に合ってたかもしれんなァ」
土 方 「井上さん,あんたにはまた,新入隊士を集めるために,
     出張してもらわねばならない」
井 上 「…」
土 方 「井上さん…,行ってもらう」
井 上 「はい」
土 方 「そして探してもらう,若々しく,強く,精悍な若者を
     一人でも多く,新選組の旗のもとに,集める」

▼井上は,再び新入隊士募集のため出張して行った。

(了)
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第15話…脱走(『新選組血風録』)





(第15話)

▼土方の解説

土 方「元治元年十二月,かねて江戸深川佐賀町に
    北辰一刀流の道場を開いていた剣客伊東甲子太郎が,
    新たに新選組に参加した。
    数多くの門弟同志が伊東に従って入隊した。
    いずれも文武両道に長じた一流の剣士である。
    近藤は新選組参謀の役職をもって伊東を遇した」

▼伊東の大流派としての顔は広く,各藩への挨拶回りで多忙な様子であることを,沖田が土方に話している。沖田が思うに,何故,大物の伊東が,今頃新選組に入ったのか疑問だという。

屈託なく笑っている沖田。
土方の表情に内心の声が流れる。

土方の声「沖田は利口な男だ。いや,不思議な男ともいえる。
     この男には,およそ欲というものがない。
     まるで生まれたまま大人になったようなところがある。
     丁度,少しの邪心もない子供が,
     本能的に物を判断するように,
     沖田のカンは,恐ろしいほどよく当たった。
     何故,伊東甲子太郎は新選組に入隊したか…
     沖田の目には既にそれは,
     異様なこととしてうつったのである」

▼伊東は,早速,北辰一刀流同門のよしみで,新選組総長の山南敬助と,八番隊組長の藤堂平助を会食に招いた。今後,天下を動かすのは剣ではなく,政治だと持論を述べる伊東。会談の帰途,藤堂や山南は,これまでの近藤や土方の方針とは随分異なる伊東の方針に戸惑いを隠せない。今後どうすればいいのか,藤堂は山南に問いかけるが,山南は疲れたと言う。

▼近藤は土方に,山南が最近,元気がなく,具合でも悪いのかと尋ねる。

土 方 「気持ちの病人だ,山南さんを病気にしたのは,
     たぶん伊東甲子太郎だろう」
近 藤 「歳さん,どうも君は,伊東君が気に喰わんようだな」
土 方 「気にいらんね,第一,何を考えているのか判らん」
近 藤 「そう言うな,あの人はただの剣客ではない,
     すぐれた学者だ。新選組も飛躍的に大きくなっている,
     ああいう論客もおっていい」
土 方 「近藤さん,あんたは無論それでいい。
     だが,伊東甲子太郎の弁舌で
     新選組本来の務めに身が入らなくなるような
     病人が出て来ては困る,私はそれを言っているのだ」

▼沖田は,医者からの帰り道,手桶を持って女中と出てきた医者の娘お悠と共に,清水の舞台の近くにある「音羽の滝」へ向かった。八の日には,音羽の滝の水を汲んで,お茶をたてるという。お悠は石垣の上から流れる細いスジ状の水を,ひしゃくで桶に汲む。沖田は,その風情を見ながら,倒幕・佐幕の只中にいる自分とは,あまりにも遠い生き方であることを痛感する。近くの茶屋にお悠と寄った沖田は,八の日に音羽の水を汲みに来ることを約束する。その様子を,先に茶屋へ居合わせた山南が聞いていた。その後,お悠と分かれて歩み出した沖田に,山南が声をかけ,一緒に屯所へ戻った。

▼山南は後日,沖田が通う医者の玄節のもとを訪れ,その病状を聞く。
難しい病であることを聞いた山南は,丁度,お茶を運んできたお悠に,
沖田のことを「よろしく頼みます」と,繰り返し申し入れる。

▼その晩,夜間巡察前の沖田に声をかける山南。
医者で病状を聞いてきたという山南は,無理をしないよう忠告するが,
沖田は,自分の病のことについて判っているが,どうにもならないと言い,出動する。その直後,山南は,若い隊士に「近藤と土方は留守なのか」と聞く。

土方の声 「山南敬助が,その日,近藤と私に何を話そうとしたか,
      それは永遠に判らない。新選組総長として
      隊の運営に関することか,あるいは,古い仲間としての
      沖田総司の身体のことについて言おうとしたのか…」

山南が廊下を歩き出すと,伊東がいた。伊東は,山南に何かの協力を要請しており,後日,打ち合わせをすると告げて去る。山南の後ろ姿に土方の解説が流れる。




土方の声 「伊東甲子太郎が,山南敬助に,
      どんな協力を求めようとしたか,
      それも,永遠に判らない。何故ならば…
      新選組総長山南敬助は,その夜限り新選組を捨てた。
      山南敬助は,一通の,簡単な書き置きを残して,
      姿を消した。その波紋は新選組の隊中に,
      大きく拡がっていった…」

▼近藤は土方の前で狼狽し,どうすべきか困惑した。
近藤としては,山南に刃を向けるようなことはしたくないというが,
放っておけばどうなるか…,

土 方 「新選組そのものを,あんたが否定したことになる。
     新選組を捨てた山南敬助を,あんたが認めたことになる」
近 藤 「歳さん,いつもとは場合が違う。
     山南君は,試衛館以来の同志だ,
     生きるも死ぬも共に一緒のはずの同志だ。
     すぐみんなを集める。
     江戸以来のみんなを集めてくれ,みんなの意見を聞こう」
土 方 「それもいいだろう」
近 藤 「それと伊東君も呼んでくれ」
土 方 「伊東さんは,試衛館の仲間ではないはずだが」
近 藤 「いや,参謀として,冷静な立場にいるはずだ,
     その意見も聞こう」


▼近藤は,部屋に揃った江戸以来の同志のほか伊東を交え,時計回りの席順に意見を聞く。




近 藤 「まず,井上君から,山南君をどうすべきか,
     意見を聞かせてもらいたい」
井 上 「(ひどく慌てる)わ,私は一番先に申し上げるのですか」
近 藤 「うむ,思った通り,忌憚(キタン=遠慮)のない意見を
     述べてもらう」
井 上 「(深呼吸をしてから)では申し上げます。
     私は…思っとるのです。つまり…私は,
     周斎先生以来の試衛館近藤道場の内弟子です。
     近藤先生の命令には,水火を辞さん覚悟でおります,
     私は,撃剣の筋も悪い,
     先生には御迷惑をかけてばかりいます。
     しかし,私は,近藤門下であることに誇りを持っています。
     私は近藤先生が死ねとおっしゃれば,今すぐでも死ねます,
     私は,学問もない,しかし私は…」




近 藤 「井上君,今聞きたいのは,今回の山南君の件について,
     君はどう処置するかということだ」
井 上 「はァ…私は…近藤先生のおっしゃる通りにすべきと
     思っとります」
近 藤 「いや,井上君,君の意見を聞きたいのだが…(苦笑い)
     いや,もう結構だ。原田君,君はどう思う」
原 田 「(珍しく困惑して)はァ…私は…私は思います」
近 藤 「うむ…」
原 田 「アタシ(私)だったらですね,
     山南さんみたいなやり方はせんです。
     考えられんですね。同じ釜の飯を喰った仲じゃないですか。
     アタシだったらですね,黙っていなくなるなんてことは
     性に合わんですよ,アタシだったらですね…」




近 藤 「原田君,君の場合を聞いているのではない。
     今回の山南君の行動に対する処置を聞いているのだ」
原 田 「はァ…つまり,アタシだったらですね…」
近 藤 「いや,君の場合ではないのだ…まァいい,
     次,斎藤君,君の意見を聞こう」
斎 藤 「はァ…山南さんは,何といっても,局の大幹部ですし,
     江戸以来,近藤先生の相談役です。
     私は,もう一度,近藤先生と山南さんが,
     話し合う必要があると思います。
     そうすれば,山南さんだって,
     また,別な方法をとるでしょう」




近 藤 「うむ…そう出来ればそれに越したことはないが,
     今となって,それが出来るかどうかだな,
     結構だ。次に,伊東君の意見をうかがおう」

一同,伊東に注目する。目をそむけているのは土方だけ。

伊 東 「私は,率直に申せば,山南君の今回の行動は,
     武士として最も潔い正々堂々たる行為と思います。
     何故ならば山南君は,逃亡したのではない,
     感ずるところあって新選組を離れる,
     同志諸君の健闘を祈ると書き置いて去った。
     断じて,逃走ではない。しかも,倒幕派に走ったのではない,
     自ら,身をひいただけだ。
     私は,あの人の去って行ったあとを聞いて,
     頭の下がる思いをした。身辺の整理,事務的今後の処置,
     全く,整然として潔白の一語に尽きる。
     立つ鳥後を濁さず,まことに,武士はそうありたい。
     山南君は,新選組創立の中心人物であった。
     今,事志と違い,静かに身をひいた。
     何らの,栄誉功名を求めることなく,
     淡々として去っていった…。
     私は,ただ,同君の今後の健闘と自愛を祈る気持ちで一杯だ,
     それが,同志を送るせめてもの志と思っています。
     ひとえに,近藤先生の寛大なる処置をお願いしたい」




近 藤 「よく判った。次,藤堂君の意見を聞こう」
藤 堂 「私は,伊東先生の御意見に賛成します」




近 藤 「そうか,次は,永倉君の意見を聞こう」
永 倉 「ハァ…私は…」
近 藤 「うむ,君は」
永 倉 「私は,沖田君の意見と同じです」




まだ意見を言っていない沖田が,ギョッとして永倉を見る。
が,永倉は平気でそっぽを向いている。




近 藤 「そうか,では,その沖田の考えを聞こう」
沖 田 「永倉さんが,まだ何も言わない私の意見と同じだそうだから
     私もその手を使いますがね,
     土方さんは,どうお考えです?」




土方はジロリと沖田を見る。

沖 田 「土方さん,どうお考えです」
土 方 「俺の意見など,ない」
沖 田 「どうしてです」
土 方 「初めから,決まっている…
     局を脱することを許さず。そう決まっている」




一同,目を伏せる。
伊東は,規則だけで全てを割りきってしまうのは冷酷すぎると反論し,
山南の場合は別だと主張する。
沖田から,「もし近藤先生が山南さんと同じことをしたらどうするか」と問われた土方は,

土 方 「近藤さんでも同じだ。局中法度に触れるときは,
     局長も平隊士も区別はない」
近 藤 「ほう,私を斬るかね」
土 方 「斬る」
近 藤 「本当に斬るか」
土 方 「本当に斬る…しかし,その時は…」
沖 田 「判りましたよ,土方さんの一生も終わる時ですね」

近藤は,山南敬助が脱走したものと決断し,土方に処置するよう命令する。土方は,沖田にだけ山南を連れ戻すよう指示した。

▼山南は,大津の宿に本名を隠さず宿泊していた。
沖田が迎えに来ると,「終わったな」と山南は呟く。
綺麗な湖と雲と波の色を眺めていたという山南。
死を悟ったかのような言葉を聞き,うなだれる沖田。
その日が「八の日」だったことを思い出した山南は,
沖田にお悠との約束について尋ねるが,沖田は,忘れていたと答える。
自分の命も左程長くないような気がすると言う沖田は,
闘うしか将来がない…と呟く。
山南は,「闘う前に自信を失った…ただ,それだけのことだ」と言い,
沖田と共に屯所へ戻った。

▼慶応元年二月二十一日,新選組総長山南敬助,脱走の故をもって,
沖田総司の介錯に依り,切腹。


(了)
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第14話…狂った盃(『新選組血風録』)





(第14話)
▼蛤御門(はまぐりごもん)の変。
土方の解説が流れる。

土方の声「元治元年七月十九日,長州藩は遂に実力を以て京に迫り,
     天主を擁して一気に倒幕の断を下すべく
     御所に侵入しようとした,世に言う蛤御門の変である。
     だが,戦乱は長州勢の敗走を以て終わった。
     新選組もまた,京都守護職会津藩軍勢の先陣として,
     伏見竹田街道に出動し,
     その戦いの記録を書き加えたのである。
     長州征討を巡って,世論は沸騰した。
     会津中将松平容保は,長州征討即時断行を唱えた。
     新選組もまた,会津藩と主義主張を同じくした。
     新選組は既に,浪士取締りの一団ではなかった。
     会津藩の中核として,幕府の最も精強なる
     戦闘集団たる地位を築きつつあった」

▼新選組が創立して約一年半が経過した。
江戸試衛館時代からの同志である新選組の幹部達は,
久しぶりに屯所で宴会を開いて盛り上がっていた。
しかし,そこに山南敬助の姿はない。
山南は,本願寺の寺侍(坊官=坊主の家老)
と面会し,長州征討について意見を聞いていた。

▼宴会を終えた晩,屯所では,土方が近藤の前で山南の話をする。

近 藤 「歳さん,山南君が変わったというのは,どういう意味だい」
土 方 「うん,つまり,ひとことで言えば,京に来てからあの人は,
     ひどく常識人になった」
近 藤 「あの人は,昔から物知りだ」
土 方 「物知りなのはいい,だからこそ,
     新選組総長になってもらった。
     あんたの参謀だ,軍師だ,軍師や参謀などというのは,
     いかに新選組が強く大きくなるかを考えてくれればいい。
     あんたがし易いように,
     縁の下の力持ちになってくれればいいのだ。
     それが自分がいい子になろうとし出したら,
     もう軍師でもなければ参謀でもない。
     この頃,しきりに伝手(ツテ)を求めて
     いろんな人に会っているらしい。
     いいことのように思えるが,実は,下らんことだよ。
     近藤さん,そうは思わないか。
     この時勢だ。人それぞれ立場も違うし,利害も異なる。
     会っても益のない人に,会う必要はない。
     食うか食われるかが戦だ。
     八方美人のいい子ばかりが集まりなら,
     新選組なんて,三文の値打ちもないのだ」
近 藤 「(頷く)…」
土 方 「明日の付き合いを気にしていては,
     今日の喧嘩はできなくなる。
近 藤 「全くだ」
土 方 「山南さんは,下らぬ付き合いに気を遣いすぎるのだ」

▼山南としては,会津藩ばかりの情報だけでなく,大勢の意見を聞くことで,広く視野を天下に向けようと考えていた。このとき,山南と坊官の仲介をしたのは,京都出身の勘定方隊士・佐野だった。京都の世情に詳しい佐野は,なにかと顔が広く,重宝された。

▼至って真面目な隊士の佐野であったが,酒に酔うと人が変わる傾向があった。山南との用事を済ませた佐野は,やはりその晩も居酒屋で酒を浴びるほど飲んだ。その帰り道,通りすがりの浪人に,無礼な酔っ払いだと蔑まれたことで憤慨した佐野は,勢い抜刀し,その浪人を斬殺してしまう。佐野は役人に届け出ようとしたが,その日,本願寺へ出向いたことを内密にするよう山南から口止めされていたため,ちょうどそこへ通りかかった酔っ払いの大工に,いかにもどこかの侍が浪人を斬って逃げて行ったかのように装い,斬った者を目撃したか否か,問い詰める。
その大工は,斬られた浪人を知っていたが,関わり合いになるのを恐れたため,佐野は大工を利用することにし,浪人の家まで一緒に死体を運んだあと,口止めのつもりで金を渡し,公言しないよう言い含めた。

▼浪人の家には,若い女房と三歳の娘がいた。
泣き崩れ,途方に暮れる女房の姿に,佐野は気が咎める。
女房としても,もとは武士だった浪人の亭主が,竹光(タケミツ=刀身が竹)でやれたという最期を役人に届け出れば,世間に亭主の恥をさらしてしまうことになり,ためらっていた。佐野は自らの事件も同時に隠ぺいするため,内密に葬儀を行うよう手配することにした。

▼山南が本願寺の坊官に会ったことが噂となり,近藤は,所司代役人から「反会津的行動」を慎むようにとの注意を受けた。このことを聞いて驚いた土方は,早速,山南を呼んで注意喚起を促した。山南は命令口調の土方に反抗的な態度を示すが,自らの行動を時期尚早とわきまえ,既に佐野に頼んでおいた会合を取りやめにすることにし,相手方には佐野から断りを入れてくれるよう申し渡す。

▼佐野から金を貰った大工は,不可解な出来事を目明しの佐吉に話す。
どうやら,佐野が浪人を斬って,口止めされたことに気が付いた大工は,
浪人の家を目明しと一緒に見張ることにした。訪れた佐野を確認した目明しは,それが新選組の隊士であることを知っていた。

▼浪人の供養を済ませた佐野は,不憫な母子に金を渡すなど,親切に接していた佐野だが,浪人の女房に好意を寄せ始める。しかし,亭主を殺したことを隠し,偽善者のように振舞う自身を責める。死んだ浪人の女房もまた,亭主が亡くなって間もないのに,佐野の親切に甘んるばかりか,心惹かれていることに気付き,そこから逃げなければいけないと悔い改める。

▼目明しは,早速,佐野の件を新選組勘定方の河合に相談し,やがてこれが土方の耳に入る。土方は,偶然そこへ来た沖田を連れて,佐野のもとへ行く。

▼佐野は,行きつけの居酒屋で酒を浴びるほど飲み,泥酔状態であった。
そこへ土方と沖田が来る。土方が,佐野に事件の晩のことを訪ねると,
佐野は,山南のことだと勘違いし,自分は紹介をしただけで,無関係だと弁解した。山南の名が出たことに,土方は意外な顔をするが,すぐさま,佐野自身が私用で外出した際,何処で何をしたのかと尋ねる。事件が明るみになれば,隊則によって切腹だと早合点した佐野は,精神的に追い詰められ,酔いがまわった影響から,いきなり抜刀して,土方と沖田のほうへ振り回すが空振りし,勢い店の座敷になだれ込んで,狂ったように暴れ出す。佐野の視界に入るもの全てが,円を描いたようにグルグルと回る…



(映像…目が回ってら(^^ゞ)。

土方は,沖田に処理(抜刀)を合図。
「付いてくるんじゃなかった」と,ぼやいた沖田は,見苦しい醜態をさらす佐野に,一言「おやめなさい」と言うや,飛びかかってきた佐野を一刀のもとに斬り倒した。

沖 田 「血の匂いがしない,酒の匂いがしている」

▼山南の部屋を訪れた土方は,佐野が乱心したので処分したことを告げる。血相を変える山南。

土 方 「あなたには関係ないことだが,先月28日の夜,
     酒に酔って,路上で浪人を斬った。
山 南 「…」
土 方 「相手も武士だ,佐野君は,抜き合わせての闘いに
     勝ったまでだ,別に,隊規に触れる落ち度はなかった。
     しかし,佐野君はそれを役人に届けなかった,
     届ければそれで済んだことだ。
     しかし,佐野君は届けなかった,
     届けることのできなかった,理由があったらしい。
     それだけ,あんたに知らせておきたい」

山南は,土方に顔を向けることなく,
じっと耐えるように黙って聞いていた。

▼その後,山南は,屯所の御用部屋に預けてあった金を全部引き出し,
佐野の遺族に届けたという。土方の部屋に来た沖田からそのことを聞いた土方は,江戸にいた頃から,山南は世話好きで,本当は親切な人なのだ,と話す。沖田は,京都へ来たことが間違いだったのかもしれない…と呟いてから間を置かず,佐野が斬った浪人の家にも金を届けるよう,山南から頼まれたと言い,「届ける際,死んだ佐野のことを浪人の女房から聞かれたら,どう説明したらいいのか…」と口ごもる。

土 方「俺にもわからん」

溜息混じりに答える土方,

そこへ巡察を終えた原田が帰隊した。
土方は沖田へそれとなく指図する。

▼原田と一緒に浪人の家へ行った沖田だが,既にそこは空き家となっていた。浪人の女房と女児の行方は分からない。往来で,若い女におぶさった女児が風車を落とす。拾ってやる原田。
それが,浪人の女房子供だとは知る由もなく,原田と沖田は通りすぎて行く。

(了)
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第13話…強襲十津川屋敷(『新選組血風録』)





(第13話)
▼素朴にして狂信的なる勤王思想の発祥地である大和十津川(ヤマトとつかわ:現在の奈良県)。
文久三年の天誅組事変において,最も過激なる倒幕志士を送り出した。
彼らを「十津川郷士」と呼ぶ。

※天誅組の変…文久三年(1863年)八月十七日,
吉村宙太郎の尊王攘夷派(天誅組)が公家の中山忠光を大将に,
大和の国で決起。幕府軍の討伐により壊滅した事件。

▼山深い山野から,続々と京の都へ上って来る十津川郷士達。
彼らは,勤王倒幕の時勢に便乗し,天下の志士となる功名心を抱いていた。ある屋敷に集まった十津川郷士らのもとへ,長州藩の三浦一誠が訪れる。三浦は,京都における倒幕志士を陰で操っている長州藩の大物である。十津川郷士の中には,まだ京へ来たばかりの青年・千葉大輔がいた。

▼新選組の屯所では,近藤と土方が話していた。




近 藤 「十津川の郷士が,だいぶ気勢を上げているらしい」
土 方 「巡察が小人数だと,向こうから喧嘩をふっかけてくるそうだ。
     全く,手に負えん奴らだ」
近 藤 「怖いもの知らずだからなあ」
土 方 「思いのほか,腕も立つらしい。
     昔から,土地に伝わっているという古風な剣技を,
     それなりに一応に身につけている」
近 藤 「剣というものは,それが本当だよ,歳さん。
     近頃のように,道場剣法が盛んになると,
     小手先の,見た目に綺麗な技ばかり流行るようになるが,
     いざというときはやっぱり駄目だ。
     剣はむしろ,馬鹿の一つ覚えのほうが怖い」
土 方 「お説の通りだが,感心ばかりはしておれん。
     隊士が,だいぶ狙われている。
     何しろ,新選組を一人斬れば,
     奴らの仲間では,たちまち羽振りがきくらしい。
     新選組を斬れば,それで一門の国士としてもてはやされる」
近 藤 「その功名心を利用して,背後で先導しているのが長州か」
土 方 「無論そうだ。奴らは,公儀に代わって天下を取るのが目的だ。
     そのときの立身出世のためには,
     今,自分の身を危険にさらすことはせん。
     危ない仕事には,全て,
     命知らずで熱狂的な十津川郷士を使う」

▼十津川郷士達は,新選組隊士を討つことによって,長州藩からその待遇を取り立てられることを期待していたが,新選組側は巡察の際,隊士の数を増やすことで,これに対抗したため,京へ来たものの,なかなか千載一遇の機会に恵まれない者も大勢いた。そんな折,長州の三浦は,京へ来たばかりの千葉大輔に目を付ける。彼の所作の隙のなさや,内面から沸き立つような闘志が気にいった三浦は,かねてより策謀していた水戸藩士の暗殺を千葉に実行させようと指名した。倒幕の大義のため,その身を捧げる決意表明をした千葉は,暗殺に関わる長州の宮田から,ある座敷の二階へ案内される。そこで,隣の民家に暮らす婦人のもとへ,夜間,通ってくるという「大物の武士」を斬って欲しいと伝えられた千葉は,その武士が,どこの誰であるのか素性も知らされないまま,寝室の障子越しにやがて現れるであろう「影の人物」を待ち伏せることになった。

▼新選組の屯所では,巡察から戻った斎藤が土方と沖田の前で話し出す。

斎 藤 「土方さん,今日,巡察の途中,
     所司代に寄って聞いたのですが,
     水戸家の住谷寅之介(すみや とらのすけ)…」 
土 方 「知っている,藤田東湖(ふじた とうこ)亡きあとの
     水戸尊王派の中心人物だ」
斎 藤 「はあ,最近,その身辺が,ただ事でないというので,
     水戸家から内密に,所司代に護衛を頼んできているそうです」
土 方 「ほう,誰が狙っているのだ」
斎 藤 「どうも長州藩の者らしいというのです」
土 方 「そうだろうな」
斎 藤 「おかしな話ですなあ,
     安政の大獄で大弾圧を受けた水戸尊王党の唯一の生き残りが
     住谷寅之介でしょう。
     いってみれば,勤王派の神様みたいな人だ。
     それを勤王一点張りの長州が狙う,複雑ですなあ」
土 方 「要するに,長州にとっては,水戸が手ぬるいのだ,
     だから斬る。乱世だな」
斎 藤 「そう言ってしまえばそうですねえ」
沖 田 「邪魔になってきたんだなあ,きっと」
斎 藤 「勤王の神様がか」
沖 田 「そうですよ,時代は動きますからねェ,ひところの神様より,
     長州にとってはもっと有り難い神様ができたんでしょうねえ。
     新しい女ができると,古い女が捨てられるのと同じですよ」
斎 藤 「ハハハハハハ(笑)」
土 方 「ほう,総司にしては,ひどく粋な例え方をしたな」
沖 田 「だって,そうでしょう?」
土 方 「長州に新しい神様,いや,新しい女ができたとすると,
     これは,ことだな」




そこへ二条城から戻った近藤が来て,長州と薩摩が裏で手を結んだらしいことを報告する。

近 藤 「我々の敵は,長州と各地の脱藩浪士達ではなくなる。
     七十七万石の薩摩が敵に回った」 
沖 田 「そのために,捨てられた神様が狙われたか」

▼待ち伏せしながら,千葉は,相手が誰か,わからないまま斬ってしまってもいいものか,これが勤王討幕のためなのか…と,少し思案するが,とにかくやればいいのだと決意を新たにする。

▼巡察に出た藤堂は,通りすがりに座っていた旅の娘に声をかける。
娘は,田舎から初めて出てきて道に迷ったという。河原町松原への道を尋ねられた藤堂は,親切に教え,去ろうとしたが,足を痛めたらしい娘の,おぼつかない足どりを見かね,平隊士の伊藤に娘を目的地まで送り届けさせることにし,藤堂の隊は先斗町の会所で待機することにした。
ところが,伊藤は,偶然通りかかった十津川郷士達に襲われてしまう。
一緒にいた娘は千葉大輔の姉・和恵であり,襲撃する十津川郷士らの中にいた杉本に声をかけ,やめさせようとしたが,伊藤はあっけなく斬殺された。

▼会所で待っていた藤堂は,目明しの佐吉から,伊藤が十津川一党にやられたことを聞く。

▼和恵は,杉本たち十津川郷士らが待機する屋敷へ通されていた。
新選組を倒さなければ,自分達がやられるという事情を殊更に強調する杉本。和恵も勤王倒幕浪士の娘であり,千葉大輔の姉として,口出しは控える一方,屋敷に弟大輔の姿がないことを心配し,どこに行ったのかと尋ねる。が,杉本も知らないという。和恵はふと,親切に荷物を持ってくれた人をいきなり斬ることが勤王の運動なのか…,弟の大輔も,それと同じようなことをするために京へ来ているのだろうか…と不安になる。

▼伊藤の斬殺を近藤や土方に報告した藤堂は,目明しの佐吉を呼び,
十津川屋敷を見張って,全員が集結する時を知らせてくれるよう頼む。
既に場所が判っている藤堂としては,根こそぎ討ちとらねば気が済まない。そんな思いを,近藤や土方も察していた。

▼そんな折,屯所へ会津藩の所司代役人が訪ねてきた。
御用の向きを聞いた土方は,早速,沖田の部屋に向かう。
沖田は日番で,ちょうど斎藤と将棋を指していた。

沖 田 「だいぶ雲行きが早くなったようですね。
     所司代からあの役人が来る時は,
     大抵,日番が取り消しにされる」
土 方 「隊士たちはいいんだ。沖田,役人は,
     君だけに用があって来たんだ」
沖 田 「え…私だけに?」
斎 藤 「おい,何か悪いことしたんじゃないのか?
     そうだったら早く謝って許してもらえよ」
沖 田 「冗談じゃない,土方さん,厭だなあ,なんです,用件は」
土 方 「ン…ちょっと危ない用件かもしれん」
沖 田 「いよいよ厭だなあ,斎藤さん,あんたも付き合いなさいよ,
     将棋,負けてあげるから」
斎 藤 「いや,沖田,どうしても一人でないと
     具合の悪い役だというのだ。
     斎藤君は,別な方で,私に付き合ってもらうはずだ」
沖 田 「おやおや,斎藤さん,どっちにしても,
     いい将棋じゃなかったねェ」
斎 藤 「良かったよォ,ちょうど砥ぎにやった刀が間に合って」


▼やがて,十津川屋敷に長州の三浦ほか,全員が集合する晩が到来する。
和恵は,長州の者が来たら,弟のことを聞いてくれるよう,杉本へ頼む。
新選組屯所にも,この情報が入り,藤堂と斎藤の隊を率い,土方が出動する。

▼その晩,千葉が見張っていた隣の寝室の障子に,狙うべき人物の影が現れた。千葉は,階下にいた宮田と,もう一人の長州藩士に声をかけ,斬る相手は知らないが,勤王倒幕のために斬るのかと,念を押すように確かめると,宮田はそうだと答える。成功したら,十津川屋敷で長州の三浦も交え,祝杯をあげることになっているという。意を決した千葉ば,庭先から潜んで襲撃に向かう。俄かに抜刀するや,「十津川郷士,千葉大輔!」と名乗って中へ斬り込んだ。が,瞬間,障子越しに動いた影の人物によって斬り倒される。部屋から刀を持って出てきたのは沖田だった。沖田は,もともとそこへ通うはずの住谷寅之介と背格好が似ていたため,所司代の役人から替え玉に選ばれ,待機していたのだ。千葉が一刀のもとにやられたことを二階から見分していた宮田らは,慌てて十津川屋敷へと急ぐ。




▼その頃,十津川屋敷の附近には,土方らが様子を窺いながら待機していた。そこへ来た目明しの佐吉によれば,十津川郷士は全部で一二名おり,酒盛りをしているという。長州の侍も来ているとのこと。そこへ,あとから宮田らが急ぎ来て,屋敷の中へ消えた。

藤 堂 「なんだ,あの二人は」
斎 藤 「気付かれたかな」
土 方 「構わん,強行する,襲え」

土方の掛け声と共に,隊士らは,十津川屋敷を襲撃にかかる。




▼やがて外に出てきた三浦を一刀のもとに斬り伏せた土方は,斎藤から屋敷の奥の間に和恵がいることを聞き,藤堂らと確認しに入った。

土 方 「あんたは,どうしてここにいたんだ」
和 恵 「あ,はい,弟に会いに来ておりました」
藤 堂 「この人です,伊藤君に送ってもらったのは」
土 方 「新選組としては,今更あんたに説明するつもりはない」
和 恵 「存じております」
土 方 「あんたの弟はどこに行っているのか,知っているのか」
和 恵 「存じません,今夜わかるはずだったのですが…」

▼その頃,千葉大輔の亡骸は,戸板に乗せられていた。
沖田の傍へ来た所司代役人は,こう上手く成功するとは思わなかったと言う。

沖 田 「もう私は,替え玉なんかになるのはお断りしますよ。
     十津川郷士は敵かもしれないが,それにしても,
     いまの人は,一番つまらない死に方をしましたね」

▼十津川屋敷
土 方 「弟が戻ってきたら,伝えるがいい。
     新選組は,十津川郷士が敵対する以上,
     あくまで闘わねばならん。
     あんたが,弟を連れて十津川の山へ帰ってくれれば,
     それにこしたことはない」
和 恵 「そう思っています。連れて帰ろうと思います。
     ここで弟の戻って来るのを待たせてもらいます」





深く頷いた土方は,隊を引き上げた。 

和恵は,弟へ渡す荷物と共に,そこへ留まる。

戸板で運ばれる千葉。沖田は沈痛な表情で歩く。

(了)
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第12話…紅鼻緒(『新選組血風録』)




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(第12話)
▼履物屋・嘉助の倅(せがれ)清作(きよさく)は,病気の父に代わって店を継ぎ,妹のお加代とともに,商いで生計を立てていた。
しかし,倒幕・佐幕のご時勢に,祇園で女物の下駄や草履を売って銭を儲ける腰抜けめ!などと,通りすがりの侍達から馬鹿にされ,道端で蹴倒されるような有様だった。

▼沖田は,監察の島田魁が隊の用事で江戸へ出向く際,姉に京土産を届けて貰うため,女の好みにやたらと詳しい原田左之助と共に,町を歩いて品物を探していた。草履が良さそうだと思った沖田は,原田と付近の履物屋へ入る。店先で応待するお加代は,まだ接客に不慣れの様子であったが,
原田は,お加代に話しかけながら,その素直さが気に入り,身の上を聞き始める。お加代の母は既に他界し,病気の父を看病しながら兄と二人で履物屋をしているとの話を聞いた原田は,「京女は一見おとなしそうに見えても芯が強いんだな」と,益々感心し,土産物選びはそっちのけ。
結局,沖田が草履をさっさと選んだ。

▼店へ戻った清作は,以前から抱き続けていた「侍として身を立てたい」という願望を父に話す。先祖は「高田」という隠し姓のある武家の家柄だということを知っていた清作は,父や妹の心配をよそに,一念発起して商人をやめ,新選組に入隊することを決めた。新選組は,入隊志願者の身分や経歴など一切無視して隊士を募集していたので,商人の清作でも,武士になることが可能であった。しかし,隊士として採用されるには,相当,腕に覚えがなければならず,剣術師範頭の斎藤一が清作の腕試しをしたが,まるで見込みがなかったため不採用となった。清作は,斎藤から丁重に断られたにもかかわらず,いつまでたっても屯所から帰ろうとしない。

▼最初は放っておいた斎藤も,清作のことが気になって仕方がない。
沖田は,原田が巡察から帰ってきたら,うまく断って貰えばいいと提案するが,頼みの原田は,門前で兄の帰りを心配して待っていたお加代を見つけ,任せておけとばかりに,入隊志願の清作を入れてやるよう,近藤や土方に頼み込む。これを聞いた斎藤は,驚いて反対するが,原田から,かつて試衛館で,沖田の姉さんが土産に持ってきた大福を一番沢山食ったのは,あんただろうと指摘され,流石の斎藤も反論できない。

「沖田の姉さんが,そう仕組んだんだ,そうとしか思えん」

そう原田が言ったことから,近藤も土方も,江戸の試衛館時代を思い出し,淡い感傷を抱くと共に,妙な錯覚を起こしていた。沖田の姉さんと履物屋の倅清作は全く無縁であったにもかかわらず,結局,「沖田の姉さんに免じて…」という意味不明な理由で,近藤は清作の入隊を許可した。

▼「高田清作」は,当初,見習い隊士として仮採用され,御用部屋の勘定方へ配属された。帳簿付けや算盤(そろばん)など,商人の経験が生き,その仕事ぶりは的確であり,また,物腰の低さと謙虚な人柄も相まって,皆から「良き人材」として信頼を得た。やがて,僅かな期間で正隊士に昇格した清作は,実家の履物屋に多額の手当てを渡せるようになり,至って順風満帆のように見えた。

▼ある日,会津藩邸から公金を受領して屯所へ運ぶ御役目を初めて言い使った清作。運悪く,同行していた二人の護衛隊士が,帰り道で公金を強奪しようと,勢い抜刀して襲いかかってきた。運送に同道していた小者の半助は,隊士の一人に斬られながらも身を挺して公金箱を守ろうとしたが,清作は,隊士が刃を振り回して追いかけてきたことに恐れをなし,
橋の下を流れる小川の中を,ムチャクチャ必死こいて逃げ,公金を奪って逃走する隊士達を追うこともなかった。




▼このことは,一命を取り留めた半助の証言から明らかにされ,清作には,局中法度の「士道不覚悟」により,切腹の処断が下された。早朝,血のりを拭って刀を鞘に納めた沖田は,そこへ来た斎藤に,目をつむって人を斬ったのは,今日が初めてだと言う。清作が切腹できずに逃げ出したため,三人がかりで押さえつけたところを介錯したという。

「やっぱりあの人は,侍じゃなかったんだなァ」…沖田は呟く。




▼清作の存在が忘れ去られた頃,土方は斎藤を伴い,会津藩邸の所用へ出かける。その帰り道,待ち伏せしていた浪士数名に襲われた。が,全員斬り倒し,再び歩き始めたところ,土方の草履の鼻緒が緩んで切れそうになったため,二人は附近にある履物屋へ寄った。




▼店先には誰もいない。そこらに女物の草履が僅かばかり置いてあった。適当な草履を手にした土方は,それを斎藤へ渡す。斎藤が店の奥へ声をかけると,出てきたのは,お加代だった。しかし,お加代は,新選組の羽織を見た途端,驚きと憤りの入り混じった表情でじっと凝視したまま黙り込み,斎藤が値段を聞いても答えようとしなかった。お加代の不可解な様子に,土方は「新選組だ」と名乗るが,お加世は突然,店から去ってくれ(「去【い】んでおくれやす!」)と冷たく言い放つ。




お加代 「ようその新選組が,うちのところへ,
     草履なんか買いに来られたもんや」
土 方 「…」
お加代 「うちの兄さんは,新選組に殺されたんえ。
     うちの兄さんは,あんた達が殺したんえ」

はっとする土方と斎藤に,お加世は,「高田清作の妹だ」と,素性を明かす。

お加代 「兄さんの帰ってくるのを,楽しみにしていたお父さんは,
     兄さんのこと聞いてそのまま倒れて,死んでしまはった。
     あんたらは,兄さん殺しただけと違うえ,
     うちの父さんも殺したんえ,
     あんたらは鬼や,新選組は鬼や」




泣き叫ぶようなお加代の声に,ただ凝然と立ち尽くす土方と斎藤。

お加代 「あんたらは新選組の偉い人や,
     うちの兄さん一人位,どうでも出来たはずや,
     こんな履物屋の兄さんや,
     どうせ立派なお侍になれるはずあらへん。
     せやったら,仰山叱って,
     追い出してくれてもええやないか,
     なんで殺さなあかんのえ,
     うち,兄さんが,腰抜けでも弱虫でもかまへん,
     お父さんと三人で,
     一緒に,楽しゅうやっていきたかったんや,
     新選組がそれをめちゃめちゃにしてしもうたんや」
土 方 「…」
お加代 「早う去んでほしいわ,そんな顔みるのも厭や,鬼や,鬼や,
     鬼が草履みたいなもんはくことあらへん,裸足でええのや,
     裸足で歩いたらええのや」

泣き崩れるお加代。




土方と斎藤は黙って店を出た。

▼附近の道を土方と斎藤が,黙々と歩いてくる。
と,遂に土方の草履の鼻緒は切れた。

斎 藤 「きれましたな」
土 方 「いい,あの娘の言う通り,裸足で行こう」

土方は草履を捨てて歩み出す。
すると,後ろに人の気配が…。
土方と斎藤が振り返ると,離れたところにお加代の姿があった。
お加代は,じっと土方らの方を見つめたあと,
何かを地面に置いて,パッとその場から去った。
地面に置いてあるのは,新しい紅鼻緒の草履だった。
土方も斎藤も,ただ,無言のまま,それを見つめて立ち尽くす。




(了)
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第11話…槍は宝蔵院流(『新選組血風録』)






(第11話)

▼新選組七番隊組長,槍術師範頭・谷 三十郎,
かつて実弟と大阪において宝蔵院流の町道場を経営。
かねてより「板倉周防守の落胤」との噂のある周平を(谷家の三男?お話では谷の実子)近藤の養子として以来,隊内においても勢力を誇っていた。

▼ある日,屯所の中庭で谷三十郎の槍術試技が行われていた。
沖田は部屋で囲碁をしている永倉と藤堂,傍にいる斎藤,松原,井上に,谷の「名人芸」を見学したらと勧める。永倉の話では,同じ宝蔵院流の原田も,谷の腕前は「さっぱりわからん」とのこと。井上によれば,「近藤先生は,谷さんの槍は日本一だと仰っている」という。沖田は「本当に近藤先生って,いい人なんだなあ」と感心する。池田屋襲撃の際,谷が何人もの敵を倒したため,近藤も評価しているらしいが…,

松 原 「しかし,実際に,それを見た人はいないんでしょう?」
永 倉 「ああいう乱戦だからねえ,誰が,何処で,
     何をしていたか分からんよ」
井 上 「そんなこと言うもんじゃねえ,本人が何人倒しました
     と言えば,近藤先生にとっては,それは絶対,
     本当のことなんだから。仮にも一流の武芸者が,
     そんないい加減なこと言うわけがねえ」
沖 田 「…と,近藤先生は思っていらっしゃる」
斎 藤 「それで,いいじゃねえか」
永 倉 「まあね…」

▼谷が隊士を集め,ご高説を唱える最中,土方は廊下を通りながら一瞥する。沖田達が屯す部屋へ向かった土方は,誰か谷の槍と模範試合をやれと申し向ける。ちょうど沖田が阿弥陀クジを作っていたため,土方はニヤリとし,

土 方 「斎藤君,君は阿弥陀に弱いらしいな」
斎 藤 「はあ?」
土 方 「なら,阿弥陀で決めるといい」

谷の相手は斎藤に決まった。

▼審判は沖田。
大勢の隊士が周囲に陣取り,土方も試合を見守る。
斎藤は谷の槍に押され,一見,不利。
沖田は,土方が斎藤に勝たせて谷の鼻をあかそうとしていることを察するが,斎藤には勝つ気があるのか否か…と疑問を抱く。
斎藤も躊躇していた。






斎藤の内心の声「まずいな,どうも。負けたくはないが,
        といって,無理して勝つのも…どうかな。
        戦国物ということになっている,
        この人の自尊心を傷つけると,
        あとが面倒だな…。
        沖田,なんとかうまいことしてくれよ…」






双方が打突を重ねる中,沖田は勝負を止めた。

谷は何故止めたのかと文句を言うが、「両先生の試技は,十分,拝見できた」と沖田は判断し、斎藤も,これ以上やれば自分の負けだと言い,引き上げる。「宝蔵院流の奥の手はまだこれからだ,いい加減に分けてもらっては困る!」と怒る谷に沖田が謝ると,土方が来て,「勝負より,いい技を見せてもらうのが目的だったのだ」と言い,その場を去った。

井 上 「どうも難しいな,ワシにはわからん」
松 原 「続けたら,どうなりましたね」
永 倉 「沖田は流石に利口だな。いいところで分けた」
藤 堂 「谷さんの動きは派手だからなあ。素人目には,
     続けていたら槍が勝つように見える」
永 倉 「しかし,あれが限度だ。ああ動いては
     誰でもくたびれてしまう。
     それから先は気力の闘いだ,だから沖田は分けたんだろう」
松 原 「なるほど,しかし,みんなにそれがわかったかな」
藤 堂 「わからんように止めたところが,沖田のいわば名人芸さ」

▼土方の部屋に来た沖田は,
沖 田 「いいでしょう? あんなところで」
土 方 「まあ,やむを得ん。しかし,竹刀を相手にすれば,
     谷さんも流石に上手いな」
沖 田 「上手いことは確かに上手いですよ。あの人は槍だけではない,
     なんでも上手いですよ」

▼その後,大阪町奉行所から新選組に,倒幕浪士の大阪における活動を取締まるよう,出張の要請があった。土方に相談した近藤は,谷三十郎が,かつて大阪にいて現地に詳しいため,谷の七番隊を当てることを決めていたが,精鋭としては実力に欠けるので,ほかに斎藤の三番隊を当てることにした。

▼谷と大阪へ行くことになった斎藤は,ぼやく。土方は,斎藤に,十日ほどで交代させ,調役の大石を同行させると告げる。

沖 田 「土方さん,気を遣ったな,模範試合なんかさせたもんだから」
井 上 「歳さんってのは,そういうことを心得ている人だよ。
     ま,一さん,上手くやんなさい」
斎 藤 「ン?…ま,どうってことないよ,仕事だからね」

▼大阪へ到着後,早速,谷は,現地の町奉行所が手配した安宿に文句をつけ,料亭などを借りるよう要請する。更に,前もって声をかけておいた地元の者達と一緒に,宴席へ繰り出すことにした。斎藤は,倒幕浪士の動きを知る必要から,大石に番小屋へ目明しを集めるよう指示する。谷は斎藤へ,一日交代で任務につくことを申し渡す。その晩,七番隊は休養。谷は伍長二名を伴い,知人と料亭「松花」へ出かけた。その後,宴会を抜け出した谷は,妾の家へ行って泊まった。

▼斎藤のもとに大石から情報が入る。倒幕浪士数名が境内に集まっているという。付近に「松花」という料亭がある。斎藤は,谷が倒幕浪士に狙われていることを察知し,直ちに三番隊を率いて出動する。谷の七番隊は全員酔って寝込んでいた。

▼斎藤と大石が松花へ駆け付けた時には,既に浪士の襲撃を受けたあとだった。そこに谷の姿はない。町方から七番隊も襲撃されたとの知らせが入る。

▼大石は,近藤と土方に事の次第を報告する。新選組創立以来の大失策の収拾を図るため,近藤は,沖田の一番隊を大阪へ送ることにし,土方が指揮をとるよう命令する。

▼斎藤は,町方役人からの情報を聞くや,隊士を連れて,昨晩,襲撃された浪士達の居場所へ向かった。

▼大阪へ到着した土方と沖田は,大石も交え,谷の弁明を聞く。谷は,斎藤が功を焦って狼狽したと非難する。大石は,谷のいる料亭が浪士の標的となっていることを斎藤が知り,一刻も早く駆けつけただけだと反論するが,それこそ慌てた証拠だと,谷は譲らない。斎藤には,料亭を退席して別な用へ向かうと事前に告げてあったし,斎藤が隊士を残さず,宿屋を留守にしたせいで,七番隊の六名全員がやられ,斎藤に見殺しにされたなどと主張する。これには沖田も土方も不愉快な色を浮かべる。大石も,少し言いすぎではないかと反発。しかし,谷は,半数の隊士を宿へ残しておくべきで,斎藤が判断を誤ったと言い張る。が,大石は,料亭が襲われるほうが念頭にくると反論。谷は大石を小馬鹿にし,それは君がまだ将たる器がないから思うだけのことであり,本拠を無防備にした言い訳にはならんと主張。

谷   「そうでなければ,斎藤君は一瞬の判断の時に,
     本能的に恐怖心に襲われたのだ」
大 石 「恐怖心?…どういうことです?」
谷   「つまり,なるべく大勢の隊士と一緒にいたいということだ。
     だから八人全部を連れて飛びだしてしまった。
     斎藤君は,臆病だったともいえる」

侮辱した発言に,沖田は土方を見る。同じく大石も土方に注目。

谷   「土方さん,ワシは近藤局長の養子の父親だ。
     ワシは近藤局長の名誉にかけて,はっきりしたい」
土 方 「谷さん,もう結構です。留守を斎藤君に任せて
     外出された以上,別にあなたに落ち度はない。
     しかもあなたは,当地に滞在するに,
     今後,必要ありと判断された人に会うために,
     外出されているのだ」
谷   「無論,その通りです」
土 方 「あとは,斎藤君個人の問題です」

と,障子の外に斎藤がきて部屋の中へ一声名乗る。斎藤は障子を開け,昨夜の倒幕浪士達を襲撃したことを報告した。

土 方 「やってくれたのか?」
斎 藤 「浪士十一人のうち,即死八名,
     負傷三名は町奉行所に引き渡しました。
     三番隊は負傷者二名を出しましたが,
     別に今後の勤務に支障はありません。
     とりあえず,ご報告します」
土 方 「御苦労。結構だ(ちらっと谷を見て),大変,結構だ」

沖田は笑顔で大石と目を合わす。谷は憮然。

▼三番隊は一番隊と交代し,谷も京へ戻った。
斎藤は指揮判断に手落ちありとして,謹慎処分となる。
幹部の間では,谷が近藤の養子の父親だから土方が遠慮し,
谷の弁明を聞き入れたのだと思われていた。
近藤もそれを気にする一方,
谷が当日,何処へ行っていたのかと土方に尋ねる。
土方は,谷の説明どおり,滞在上,必要な人物と会っていたと答える。
土方としても,一流の武芸者である谷が,いい加減なことを言うはずはないと信じていた。

土 方 「この事件は,一切済んだことにしよう。
     近藤さん,あんたは新選組の局長だ,
     その名誉は絶対的なものだ。
     それだけは,どうしても守らなければならない。
     従って,谷三十郎の名誉もまた,
     同じく守っていきたいと思っている」

土方の声「谷三十郎の名誉は守る。
     しかし,新選組局長近藤勇の
     養子の父親としての名誉に留まる。
     武士の名誉とは,あくまで別なものでなければならぬ」
 
▼その後,大阪から戻った大石により,事件当夜の谷の居場所が判った。
谷が情夫の処へ行っていたと知った土方は,直ちに斎藤の謹慎を解き,
夜明けと共に,一緒に外出するよう促す。
谷の槍に恐れを抱くのならば,付いてこなくてもいいという土方に,
斎藤は,近藤の名誉は守れるのかと尋ねる。
無論だと答える土方。外出しなかったことを大石が証言するという。
大阪から戻った沖田も同行することにした。

▼谷は,妾のところへ泊り,朝帰りの途中,斎藤と出くわす。
斎藤は谷に真剣の勝負を申し入れ,持参した槍を渡す。
新選組七番隊組長が刺客と闘って倒れても,
谷や近藤の名誉に傷はつかないと斎藤は言う。
谷は,大阪の逆恨みか,土方の差しがねかと問うが,
現れた土方は,模範試合の続きだと言い,
沖田は審判として,今度は引き分けにはしないと告げる。
小雨の降る中,勝負は開始された。
突進する谷の槍をかわす斎藤の剣は,
やがて相手の腹を二度斬り裂いた。

谷のことは「清水坂で倒幕浪士に襲撃され,名誉の討ち死にを遂げた」との扱いがなされた。土方は,近藤の親類として恥ずかしくないだけの葬儀の手配をしたと報告する。近藤は深く頭を垂れ,礼を言う。

土方の声「新選組は,常に,誠の集団でなければならない。
     それが新選組を支える,ただひとつの柱だ。
     近藤は,谷三十郎の全てを既に気付いていた。
     近藤はやがて,養子周平を実力不足の故を以て
     平隊士の身分に落した。そして,更に,
     新選組の運命を決する鳥羽伏見の戦いに際して,
     周平を自ら最前線に配置した。
     ただ己の胸の中に秘めた谷三十郎の恥を,
     その一子周平が償ってくれることを祈って。
     だが,槍は宝蔵院流の名人谷三十郎の倅は,
     近藤の願いも空しく,戦乱の中に
     その行方をくらまして消息を絶ったという」


(了)
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第10話…刺客(『新選組血風録』)




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(第10話に関するちょっとした解説)

京都の狩野家(狩野派)の画家・冷泉為恭(れいぜい ためたか)は,幕末の公家・右大臣三条実萬(さんじょう さねつむ)の推挙によって御所へ出仕し,小御所の襖絵などを描いたほどの人物で,京都所司代とも交流があった。徳川家ゆかりの大樹寺の襖絵を描いたことが,勤王倒幕派の反感を買い,斬殺された。

と,歴史上ではそんな具合らしいですが,
このお話に出てくる冷泉さんは,
公家の内情を所司代にバラして金を貰うわ,
妾には逢い放題だわ,
女房の供養も済まないうちに,女中へ手をつけようとするわ,
絵師というより,もろエロ氏…(^^ゞ。
土方さんにも,ボロクソ言われるほど,
一見,お上品な,しょう~もない下劣な男です。


(アラスジ)
その冷泉が,秘密をばらしていることが公家達に知れ,
刺客が差し向けられた…との情報を掴んだ京都所司代は,新選組に護衛を命令。冷泉家の警護には,新選組諸士調役兼監察・大石 鍬次郎が任命された。


(第10話)
▼冷泉家では,夜分,奥方と女中のお清が,為恭(ためたか)の帰りを待っていた。雨戸を閉め忘れたお清が戸締りをしに奥へ向かったところ,外から刺客の倒幕浪士・田丸作兵ヱほか二名が侵入してきた。彼らは,為恭の行方を尋ねるが,奥方は知らないと言う。奥方としては,古くから親交のある所司代屋敷へ出向いていることを口外すれば,倒幕浪士達にあらぬ疑いをかけらえる…と,常日頃から案じていたため,このときも難く口を閉ざしていた。
「女房が亭主の行方を知らぬはずはない!」…田丸は乱暴に問い詰め,
お清にも詰問する。と,そこへ木戸の開く音が…。
為恭が帰ってきたと思った奥方は,必死で逃げるよう叫ぶが,背後から田丸に刺し殺されてしまう。一目散に外へ飛び出した浪士たちの斬撃の気配…。やがて,家の中へ静かに入ってくる一人の男の姿がお清の目にとまった。新選組調役の大石鍬次郎だった。




▼大石は,所司代屋敷から新選組へ入った要請により,夕刻には帰路についたはずの為恭の警護をするよう申し使ってきたという。お清は,大石に,「奥方は帰ってきた亭主と間違え,逃がそうとして斬られた」との事情を話す。あとから駆けつけた目明しの佐吉もこれを聞き,「良くできた女将だったのに」と,世間の評判も良かった奥方の死を嘆く。お清は部屋の雨戸を閉め忘れたため,浪士達が侵入したのだと,自身を責める。大石は,すすり泣くお清に,運が悪かったのだと言って慰める。

▼所司代屋敷へ出かけた為恭は,家に戻らず,妾の処にいた。
朝廷の秘密を所司代へ密告して金を蓄え,妾に料亭を持たせてやる腹積もりだ。

▼大石は,やがて帰ってきた為恭に,奥方が刺客の倒幕浪士達に殺害されたことを話す。しかし,為恭は,何処に行っていたのか明確にしようとしない。刺客の一人が逃げたため,再び復讐しに襲ってくる可能性があることを,大石は為恭に年を入れて申し伝える。

▼屯所にひとまず戻た大石は,土方へ事の次第を報告する。土方は,大石が冷泉為恭という人物を好ましく思っていないことを察する。

土 方 「御所や殿上人に近いのを利用し,
     手に入れた情報を所司代に売り込んで,報酬を得ている。
     冷泉為恭に,信念もなければ,主義も主張もない,
     ただ,金銭だけで動いてる。
     間者の中でも最も下劣な間者だ,犬だ。
     しかし,たとえ犬でも,冷泉為恭の持ってくる情報は,
     所司代や守護職にとって,貴重なものであることに
     間違いない。
     今,その為恭は,倒幕派の刺客に狙われるところとなった。
     新選組は,これに対抗して,刺客を防ぎ,倒さねばならぬ。
     軽蔑すべき男として,為恭を見殺しにすれば,
     幕府の威厳は失墜する。そして更に,自らの信念を以て,
     間者として倒幕派に潜入している大勢の人達の自信を失わせ,
     幕府に対し,不安と不信の念を抱かせることになるだろう。
     新選組は,軽蔑すべき人物・冷泉為恭を護るために,
     刺客と闘わねばならぬ。
     場合によっては,生命を失うかもしれん。
     大石君,君は,為恭のために,命を捨てられるか?」

暫し押し黙る大石の顔を,土方はじっと見つめる。

大 石 「引き続いて任務に従います」
土 方 「よし,行きたまえ」

大石が去ったあと,土方の解説が流れる。

土方の声「これが新選組の仕事だ。下劣な一人の人間のために,
     命を失うかも知れぬ。だが,新選組はその人間を庇って,
     恐るべき刺客と闘わねばならぬ。
     闘わねば,新選組は,その真を問われる。
     もし,大石鍬次郎が,この任務を拒否したならば,
     私は大石鍬次郎を隊則違反として処分しただろう。
     何故ならば,新選組に個人の意思はない。
     新選組の意思とは,倒幕の怒濤を身を以て防ぐ,
     闘う集団の意思があるだけだからだ」

▼大石は,所司代の役人や目明しの佐吉と共に冷泉家を厳重に警備する。その間,一歩も外出することを許されず,暇を持て余した為恭は,女中のお清に手をつけようとするが,佐吉や大石は,それとなくこれを防ぐため,それまでの屋外の警護を屋内に変え,為恭を寝ずの番で見張ることにした。

▼そんな折,夜分遅く,土方が冷泉家を訪れた。
大石が待機する部屋に通された土方は,その場に控える目明しの佐吉や女中のお清に労いの言葉をかけたあと,隣の寝所にいる為恭に,聞えよがしに,こう言い放つ。

土 方「捕まえようとするならば,冷泉殿を一人にして,
    みんな引き上げねばならぬ」

床で起き上がって聞いていた為恭は,一瞬ギクリと驚く。
土方はなお,こう続ける。

土 方「刺客の現れるのを待つより,刺客の現れるのを防ぐのが,
    我々の役目だ。(お清に向かって)辛抱するがいい」

言い残し,土方はその場を去った。為恭は,ひとまず安堵する。

▼帰り際,木戸をくぐる土方は,何か思い出したように立ち止って引き返し,大石を伴い裏庭へ回った。
土 方 「為恭の外出は許しているのか」
大 石 「許しておりませんが…」
土 方 「所司代の方針か?」
大 石 「いえ,私の判断です」
土 方 「為恭が今後外出を申し出たら,許可しろ」
大 石 「は?」
土 方 「この屋敷の裏表,所司代の張った人では十人を超える。
     君はあの男の隣に,寝ずの番をしている。
     備えとしては万全だ。おそらく刺客は手を出すまい。
     いや,永遠に手は出せまい。
     とすれば,冷泉為恭は,一生,十何人の所司代役人と
     新選組の君を,個人的な用心棒として,
     安全に,夜を過ごすわけだ」 
大 石 「…」
土 方 「大石君,新選組の任務は,相手と闘って,
     それを倒すことだ。
     いいな,現れない刺客をいつまでも待つことはない。
     こっちから呼び出す工夫をしろ,いいな」

土方はこう命令し,去った。
大石は,その意図を推し量る。

▼為恭を狙う田丸らは,引き続き配下の十津川郷士らに様子を探らせていた。しかし,新選組ほか所司代役人らによる鉄壁の警護によって,手出しができない。田丸としては,既に冷泉が公家の情報を所司代へ内通したことが倒幕派に知れた以上,もはや冷泉など一文の値打ちもない,ただの絵師にもかかわらず,何故,所司代や新選組が厳重に警護するのか図り兼ねていた。

▼一方,大石は,所司代へ警護する役人の手配を引き続き申し入れていた。しかし,担当の役人からは,それほどまでにして守らねばならぬべき人物か…と,疑問視される。しかし,大石としては,考えがあった。
そのうち全て解決はつく…と,決意したように念を押す。

▼その後,案の定,為恭のほうから,目明しの佐吉へ外出を申し出てきた。表向き,絵の用事で出かけると言うが,実は,店を持たしてやる約束をしていた妾のもとへ行くためである。女中のお清は,以前から妾の存在に気が付いており,女将が殺されたときも,妾のところへ行っていたのだろうと非難する。激怒した為恭は,お清に出ていくよう申しつける。

▼番小屋にいた大石は,佐吉に為恭の外出を許可するよう指示する。
そこへお清が慌てて来て,冷泉は,絵の御用で外出するのではなく妾の処へ行くのだと,泣きながら打ち明ける。大石は,お清に妾の居所を聞き,先回りして出向く。妾には,為恭が刺客に狙われているので,新選組が護衛すると言い,屋内に上げり込んで待機する。

▼やがて,白昼堂々,警備された駕籠に乗り,為恭が妾のもとを訪れた。
妾から新選組が待機していることを聞いた為恭は,身の安全を知って安堵する一方,自由に妾と楽しめないため,不満そうに「これでは何もできない」と呟く。と,そこへ,為恭の外出を察知していた田丸ら数名の浪士が襲撃してきた。為恭は,「新選組,来てくれ!何をしている!」と何度も叫ぶ。が,裏手にいた大石は,その場から外へスっと消えた。「天誅!」…田丸の猛烈な声と共に,冷泉は斬殺され,同じく妾の女も殺害された。
田丸の配下の十津川郷士らは,新選組など一人もいないことを報告する。
家から引き上げようと外へ出てきた田丸達だが,一閃,大石の刃が遮るように一人を斬り伏せた。脱兎の如く逃げる連中のうち,一人は背中,また一人は腹と,猛然,斬り捨てる大石。最後に凄まじい勢いで田丸を追い詰め,斬り結ぶ暇さえ与えず,鋭く袈裟斬りに仕留めた。あとから駆けつけた佐吉ら役人が目にしたのは,田丸以下,十津川郷士ら四名の斬り倒された姿だった。大石は,為恭の倒れている現場を確認し,傍にきた佐吉にも無言のまま,その場を去る。新選組の中でも恐るべき脅威の刺客として名高い,大石鍬次郎。「人斬り鍬次郎」の異名のとおり,まさに瞬殺の一瞬であった。

▼屯所に戻った大石は,早速,土方に任務の終了を報告する。
「一人でやったのか」と確認した土方は,若干手首に傷を負った大石に,
殊勲ものだと言って,近藤に伝えようとするが,大石は,これを辞退する。自分の手落ちで冷泉を護りきれず斬殺されたことを伝える大石に,
土方としても「やむを得まい」と,承諾する。土方は,冷泉家の女中のお清へ,餞別として金の包を渡すよう,大石に託した。

▼早速,大石は,お清のもとを訪ねたが,そこにいた佐吉によれば,既にお清の姿はなく,郷里へ逃げるように帰ったのだという。手柄を立てたお清が,急に旅立ったことに,佐吉は首をかしげるが,大石は,お清の気持ちがわかるような気がする…と呟く。お清は,旅路の途中,京の町を振り返り,冷泉家の今は亡き奥方の姿を思い出しながら,ひとり京を去って行った。

(了)
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第9話…池田屋騒動異聞(『新選組血風録』)


第9話も,以前の記事を少し修正したものです…あしからず(^^ゞ…手抜きかな?





★新選組監察:山崎 烝(ヤマザキ ススム)の過去にまつわる出来事
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(第9話)…ちょっとした解説。
★『山崎 烝(ヤマザキ ススム)』という名前は,山崎がまだ苗字も付かない町人「マタスケ」を名乗っていた頃,当時通っていた剣術道場から上級資格の目録(免許皆伝に等しい)を貰う際に「マタスケ」だけでは書状に記せないことから,山崎の病床の父の考えで,先祖の発祥地である山崎村にちなみ,“山崎”を苗字とし,それに武家の源氏名である“烝”の一字を付け,「山崎烝」と名乗るようになった…というわけです。山崎の先祖が,赤穂浪士の討入り計画から離脱した奥野将監(オクノショーゲン)か否か…歴史上の事実は不明ですが,このお話では,そういうことになっています。そして一方,大高源吾(オオタカゲンゴ)は,吉良邸に討入りした赤穂四十七士に名を連ねたことで有名ですが,その子孫である大高忠兵ヱ(チューベー)という男が山崎の過去の回想から登場します。この大高は,先祖の誉を盾に世渡りしている高飛車な武士で,山崎の通っていた道場へも客人として招かれます。そこで山崎の先祖の素性を陰で言いふらしたり,道場主の娘(お譲様の小春)に手を付けたりと,とにかく山崎を先祖ごと「腰抜けめ!」と嘲り罵るという憎々しい侍で,当時から長州藩の大阪屋敷に出入りし,二年後には倒幕浪士と共に池田屋へ集合する面々に加わります。このとき新選組の監察として商人に扮装し,池田屋の探索に当たっていたのが山崎烝でした。山崎は,大高の来訪を知って物陰に隠れますが,その場で「ブチ殺したろか…」と,懐から短ドス(短刀)を抜きます。しかし,池田屋探索に当たる前,土方から言われた「(武士の誇を捨てねばならんような)屈辱に耐えられるか」との言葉を思い出して躊躇…。そこへ懐妊した小春が店先に大高を訪ねて来ますが,居留守を使われ,あっさり捨てられてしまいます。この様子を陰から目の当たりにした山崎は,沸々と湧き上がる憤りや衝動を抑えつつ,新選組隊士として,本物の武士として,大高と対決する時期が来るのをじっと耐え忍んで待つ…という流れです。決闘シーンは,ドロドロでした…でも帰り道では綺麗で愛らしい「キューピーちゃん顔」の山崎烝さんでした…事に及んで冷静沈着?…スミマセン,つい画像で遊んじゃいました(^^ゞ。
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第8話…長州の間者(『新選組血風録』)

★沖田総司の静かな殺気が光る『長州の間者』…省略編★



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(第8話)…簡単な解説

「間者(カンジャ)」とは,現代で言う「スパイ」。いわば諜報部員のような存在で,敵の組織へそれとなく潜入し,密かに情報を収集して,味方にそれを知らせるという役目のことです。このお話で登場する深町新作という男がソレです。もっとも,この男は,いきあたりばったり的に間者にさせられたようなもので,倒幕・佐幕の主義主張とはまるで関係なく,単に,親しくなった女と所帯を持つために,侍に仕官して身分の保証が欲しかったという理由だけで,長州の桂小五郎に雇われたわけで,新選組のこともろくに知らず,他者に言われるまま動いたデクの棒に近い人です。
★アラスジ★
たまたま旅先で知り合った女(おその)と懇意になった(デキちゃった)のが,この深町新作の運命を狂わすきっかけとなりました。やがて深町は,おそのと夫婦の約束を交わすのですが,このときの深町は,剣免許皆伝とはいえ,浪人同様の身分。定職に就かない男が所帯を持ちたいと言っても,女は不安ですから,ダダをこねて「仕官してくれドス!」…なんて要求するわけです。困った深町は,どこかの藩の侍として仕官せねばならず,仕方なく,おそのの姉夫婦のツテを頼って紹介されたのが,長州藩の桂小五郎でした。桂は,深町に仕官させる条件として,「新選組へ間者として半年ほど潜入し,情報を流す」よう命じました。既に,他の間者も新選組に潜ませてあるとのこと。半年間,任務を果たせば仕官できる…おそのと所帯を持てる…深町は桂の指示を受け,特に疑われることもなく,新選組に入隊しました。ところが,その二日後,新選組は,「長州の間者」の手配を指示する総元締の古高俊太郎という侍を捕縛。拷問の末,古高の記した帳簿から,隊に潜入している間者の名前がバレバレに…。そこには当然,深町の名前も…。土方や沖田ら幹部は,素知らぬ顔で,隊士達に古高のことを聞いて回り,わざと深町の反応を確かめたりします。古高のことなど全く知らない深町は,キョトンとして,先に潜入してる間者のことがバレたのだろう…と天然ボケ。程なく土方の命令で,深町に「長州の間者」を斬る任務が言い渡されます。沖田の一番隊と共に「長州の患者」を待ち伏せる深町は,やがてそこに現れた男を斬り倒しました。同じ隊の伍長(隊士の身分)の男が間者だったと知り,深町は内心,少し驚くのですが,無事に任務を終えたことを沖田に報告すると…「実はアンタも間者デス」…に,もっと驚きます。違う違うと喚きながら「俺はまだ間者を働いていない!」なんて墓穴を掘りまくる深町は,その場を逃げようとジタバタしますが…四方八方を隊士に取り囲まれ…後始末は一番隊組長・沖田君のお仕事。破れかぶれで向かってきた深町をバッサリ斬り倒して任務終了。深町死亡後,おそのの姉夫婦は,全てをひた隠すことに…。深町の仕事の内容を知らず,待ち続けるおそのには,懐妊の兆候が見られ…(完)
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第7話…菊一文字(『新選組血風録』)





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(第7話)
▼路地裏へ逃げ込んだ倒幕浪士たちを追う新選組。
土方の指示で二手に分かれる。言下にいた沖田は指示通り猛然と路地を走り,浪士を追い詰める。挟まれた浪士は,沖田のほうへ突進する。
沖田はこれを斬り倒したあと,すかさず周りの隊士達に,浪士の残党を追いかけるよう命令する。息が荒い沖田は,胸から喉へ込み上げるものをこらえきれず,天桶水に顔を突っ込んで,激しく咳込む。と,そこへ来た平隊士の日野助次郎が,土瓶に入った水を差し出す。苦しそうに咳込む沖田は,それを受け取り,うがいをするように水を一気に口へ含ませた。日野は,沖田の具合を心配し,少し民家で横になって休むよう勧めたが,沖田は任務中の毅然とした態度で,これを断る。そこへ土方が来て,浪士らを全部討ち取ったと満足そうに報告する。沖田は何事もなかったように,「良かったですね」と笑顔で答えた。土方が,ふと,日野の手にしている土瓶を見ると,日野は,沖田の先ほどの症状のことを知られまいと,そそくさとその場を離れて行った。土方は,日野の様子を幾分不可解そうに見送り,どうしたのかと尋ねたところ,沖田は,喉が渇いたから水を貰った…と,ごまかし,その場を去った。

▼土方は,近藤に,沖田がだいぶ疲れているらしいことを話す。
妙な咳をすることも,土方は心配する。沖田の咳は子供の頃からのことで,近藤も,医者へ診せたらどうかと土方に勧めるが,沖田には,まるでその気がないのだという。

▼そんな沖田に,日野は,一度医者に診て貰うことを勧める。
沖田とは,親子ほど年の差がある隊士の日野は,息子を労咳で亡くしていた。沖田の症状がそれと同じであり,その病は手遅れが一番怖いのだと言って説得する。沖田は沖田で,相変わらずニコニコと,「じゃァ,私も死ぬかな」と,驚きもしない。しかし,日野は,生きていれば沖田と同じ年頃だった息子も,早く医者にかかっていさえすれば助かったのだと言い,かつて所司代へ勤務していた頃に知り合った医者を紹介する。気の進まない沖田だったが,日野の提案どおり,名前を「沖山」と変え,皆には内緒で医者へ行くことにする。

▼酔って歩いていた新選組の隊士二名が,祇園の路地で背後から斬られた。斬ったのは,陸援隊浪士・戸沢鷲郎。

▼屯所の近藤の部屋に,監察・山崎の報告が入る。
陸援隊は十津川郷士の腕ききを集め,新選組を狙っているという。土方は,先手を打って新選組のほうから襲撃をかけ,一網打尽にしてはどうかと提案するが,近藤は,土佐藩同様の陸援隊を刺激してはならぬとの京都守護職の方針故,襲撃はできないと言う。そこへ陽気な沖田が来た。刀屋へ研ぎに出してある刀を取りに行くと言う。近藤や土方は,陸援隊のことを話し,外出の際は注意するよう申し渡す。

▼「蘭方医・玄節」の邸宅門前で,沖田は,中から出てきた若い娘と出くわす。戸惑って引き返す沖田に娘は声をかける。医者の娘・お悠だ。沖田は少し安堵し,医者の門をくぐる。ズケズケとした物言いをする蘭方医の玄節に診察を受けた沖田は,余命があと五年ほどしかないと告知される。
しかし,医者の薬を飲み,静養していれば長生きできると言われ,夜更かしや撃剣など,無茶をせぬよう忠告されるが,沖田は,他人事のようにニコニコしながら,生返事で了解する。帰りがけ,沖田は堀川沿いで川の流れを見ながら,

沖 田「そんな約束,とても守れないな…」と,困ったように呟く。

▼医者からの帰り道,刀屋に寄った沖田は,店の老主人・道伯から,是非拝見して欲しいと,一振りの刀を差し出される。沖田は刀を受け取って鞘から抜き,刀身をじっと見つめる。「まるで生きている」…沖田は,魂を奪われたように呆然と見入る。

道 伯 「そうでございましょう,沖田様,
     これは,お判りになったとは思いますが,
     菊一文字でございます」
沖 田 「菊一文字…」
道 伯 「はい,後鳥羽上皇様の御番鍛冶で,
     菊の御紋を彫ることを許されましたお刀でございます」

沖田,黙って刀身に見入る。

道 伯 「鎌倉期のものでございますから,
     もうそのお刀も,七百年になります」
沖 田 「(呟く)七百年…」
道 伯 「たいしたものでございます。
     その間,京の都も幾度戦の中に巻き込まれたか判りません。
     刀というものは,その中をくぐり抜けるもの,
     折れたり,損じたり,焼けたりして
     当たり前のものでございますのに,
     この菊一文字はその中を,
     こうして生き抜いてきたわけでございます…。
     何と申しますか,このお刀には,
     そういう生命があるのかもしれませぬ」

沖田は,この菊一文字を,研ぎが遅れている刀の代わりの差料として拝借する。その帰り道で戸沢ら数名に襲われた。

▼屯所へ戻った沖田は,近藤や土方,山崎の前で,戸沢達を斬ることなく,ただ「逃げてきた」と笑いながら話す。そして,菊一文字を差し出して鞘から抜く。近藤は,「菊一文字の斬れ味を試してみれば良かった」と言うが,

沖 田 「いいえ,この刀を見たら,判ります。
     とても人を斬る気なんかしませんよ。
     この刀は七百年ですからねえ,もっともっと,
     いつまでも長生きさせたい刀ですよ」

沖田は,近藤らの前で嬉しそうに眺めてみせる。
土方は,「刀を買ってやろうか」と聞くが,沖田は身分不相応だと言って断る。

土 方 「しかし,刀は飾り物ではないぞ」

沖田は,ニコニコしている。

沖田を襲った戸沢について,山崎には見当があった。戸沢鷲郎は,最近,陸援隊に加わった水戸藩の浪人であり,人斬りの名人で,神道無念流の免許皆伝の腕だという。

▼近藤から外出を控えるよう言われた沖田の代わりに,日野が率先して医者へ行き,薬を貰って来るようになった。

▼後日,近藤や土方,そして沖田の前に,刀屋の道伯が呼ばれていた。
菊一文字を沖田の差料として買うためだった。近藤は,沖田総司の差料の善し悪しは新選組の戦力にかかわると言い,刀を値を聞く。すると,道伯は,「一万両」と答えた。これには近藤や土方も目の色を変えて驚く。
が,それは道伯の言い値であって,普段から沖田を好いている道伯は,
菊一文字を沖田に見せたときから,まるで生きているようだと言った沖田こそ,刀の本当の持ち主だと思ったという。道伯は,改めて,菊一文字を沖田に譲渡した。

▼菊一文字を貰った沖田は,嬉しそうに部屋へ戻る。廊下で出くわした日野は,薬を沖田に渡す。沖田は,お礼に菊一文字を見せてあげると,部屋へ連れていく。

▼近藤と土方は,道伯と沖田のことで雑談していた。近藤は,沖田の喜びように,「まるで子供のような男だ」と笑う。子供の頃から沖田を知っている近藤は,沖田が怒ったりした顔を見たことがないと言って,土方に話を振る。が,土方は,何か別のことを考えながら,不思議な男だ…と呟く。

土方の声 「沖田は,事実,子供のように喜んで菊一文字をもらった。
      だが,私には,ただ気に入った刀というだけでは
      ないような気がした。それ以外の何かが感じられた。
      沖田が,むきになって言った,七百年という言葉が,
      妙に,心に残った…」

▼沖田は自分の部屋で菊一文字を日野に見せながら上気したように話す。

沖 田 「日野さん,この刀は七百年も生きているんですよ,
     凄いですねえ,七百年ですよ,人間の一生なんて,
     それに比べれば,短いものですねえ。
     ご覧なさい。七百年生きていたというのに,
     たった今,世の中に出てきたように,みずみずしくて,
     生き生きしているでしょう。これが本当の刀ですよ,
     命のある刀なんですよ」

▼ある日,日野は薬を取りに行った帰り道,戸沢らに斬殺された。
屯所では,戸板に横たわる日野の死体の前で土方が佇み,山崎が控える。
日野の亡骸の前に崩れるように座る沖田。顔にかけられた白布を上げ,呆然とする。土方は,日野の懐に薬袋があったと沖田の前に差し出す。
日野が沖田の薬を取りに行ってやられたと知った土方は,「折角の薬だ,そのつもりで飲め」と言い,更に厳しい口調で続ける。

土 方 「総司,刀は飾り物ではない…
     あの時,戸沢を斬っていれば,日野は死なずに済んだ」

土方はその場を去る。
肩を震わせながら,激しく嗚咽(おえつ)する沖田。

▼沖田は監察の山崎に,戸沢の動きがわかり次第,隊に内緒で知らせてくれるよう頼み込む。そして,自らも,毎日のように日野が斬られた場所へ出向き,戸沢を探していた。土方は内心,日野が死に至った経緯や,沖田がその仇を討とうと躍起になる気持ちを理解していたが,近藤には伏せておいた。

▼やがて,山崎から沖田のもとに,大阪へ向かう戸沢達の情報が入る。
相手は戸沢ひとりだけでなく,五~六人いるという。沖田は,隊には知らせないよう言い残し,菊一文字を手に,一人で向かった。途中,お悠と行き会う。お悠は,診察へ来るようにとのお願いを,日野から何も聞いていないのかと心配そうに尋ねてきたが,沖田は,ぶっきらぼうに「明日行きます」と言って走り出す。

▼屯所へ戻った山崎は,仇討に行った沖田のことを土方に知らせる。
土方は,隊を動かさず,一人で沖田の加勢に出向くことにする。
山崎も同道すると申し出,二人で沖田のもとへ向かう。

▼沖田は,橋の袂に腰かけ,戸沢を待ち伏せしながら,
日野とのことや,菊一文字を入手した時のことを思い出していた。

▼やがて戸沢が五,六人の浪士を従えて来た。
物影から前に出た沖田に,戸沢は驚いて下がり,沖田の名を叫んで抜刀する。沖田は凄まじい速さで殺到し,一刀のもとに一人を斬り倒す。
他の浪士達が一斉に沖田に襲いかかる。沖田は激しく斬り結び,また一人を倒す。が,息が上がり,咳込む沖田。その場へ倒れそうになる。が,勢い襲いかかる戸沢の刀を払いのけ,気力を振り絞るように他の浪士を斬り伏せたあと,向かってきた戸沢を渾身の力で斬り倒した。

▼沖田は,橋の袂に身をかがめ,息苦しそうに胸を押さえる。
と,そこへ土方と山崎が来た。
沖田は,はっとして立ち上がるが,息が荒い。
山崎は,駕籠を手配しようとしたが,沖田はこれを断り,後始末を頼む。
土方は,沖田の手にある菊一文字の刀を見て,「戸沢を菊一文字で斬ったのか,日野も,これで浮かばれるだろう」と言ったが,沖田は,「死んでしまっては何もならない…」と呟き,歩きながら懐紙で刀の血のりを拭い,川へ放り投げた。その後ろ姿を土方はじっと見送る。

土方の声「沖田総司は,その後,二度と,
     菊一文字を使おうとはしなかった。
     菊一文字を抜いて闘おうとは決してしなかった。
     七百年生きた菊一文字の生命を
     人間の生命と同じように愛しんだのであろう。
     いつまでも,いつまでも生きていけるように,
     まるで,祈っているかのように…」

(了)
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第6話…鴨千鳥(『新選組血風録』)



土方「あの女の一生も新選組の動きと共に変わって行くのかも知れぬ」
▼スライドショー(リンク)
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★本来,白黒映像ですが,恋夜城ではカラー風の画像にしています★

(第6話)
▼ある晩,土方は,小者の半助を従え,堀川の所司代屋敷へ向かう途中,
丸太町通りの辻で待ち伏せしていた倒幕浪士ら数名に襲われた。猛然と斬りかかってきた浪士一人を斬った土方は,勢い道を走り,振り返りざまにまた一人斬り,その後,付近の茂みに隠れながら,現れた一人の浪士を間髪入れず斬り倒した。その様子を暗闇でじっと見ていた仲居風の女がいた。土方は,女に,関わり合いにならぬよう,見なかったことにして去れと言い,通り過ぎる。しかし,女は,背後から土方の名を呼び止めた。
立ち止り,振り返る土方。女は,おみねであった。かつて近藤に,「長曾禰虎徹(ナガソネ コテツ):通称・虎徹(コテツ)」の贋の刀を二十両で売ったおみねは,身を汚して作った金で本物の虎徹を買い,江戸から京の新選組屯所へ届けに来て以来,京に留まり,“待合座敷”「千鳥」という店で仲居をしていた。おみねは追われる土方をかくまうような形で「千鳥」の裏座敷へ案内した。

▼同じ頃,千鳥の表座敷には,おみねと仲のいい芸妓の幾松(いくまつ)が,一人の侍に身を寄せていた。男は長州藩の桂小五郎。幾松とは度々,京都で忍んで逢う恋仲だった。このとき桂は,長州藩士らの隠密の会合のため,千鳥で仲間の到来を待っていた。席を外した幾松は,店の女将が按摩をする男に指圧を受けながら,“土方が浪士を四人も斬り,どこかに消えた”ことを話しているのを小耳に挟む。おみねの部屋に,先ほど来た「客」のことが気になる幾松。

▼一方,土方は,おみねと他愛ない会話をしていた。
おみねの父が生前語っていたという,

おみね「勤王倒幕等といいながらも,その実,
    将軍に代わって天下を握りたいのでは…」

これを聞いた土方は,満足そうに微笑し,
おみねともっと早く知り合いになれば良かった…と,
一瞬,彼女を熱く見つめる。そして苦笑いを浮かべ,かつての自分は貧乏道場の居候の身であったから,どこでも門前払いを受けたかも知れぬ…と話しを続けていたところ,不意に廊下の気配を察して鋭く睨みつけ,

土 方「誰だ,そこにいるのは!」

と言うや,刀を掴んで立ち上がり,障子を開けた。
そこにいたのは幾松だった。幾松は,おみねと土方のいる座敷の気配をそれとなく窺っていた。土方は盗み聞きしていた幾松を容赦なく非難する。
すると,そこへ桂が来て,自らの名を名乗る。一瞬,土方と桂の間に緊張が走る。しかし桂は,幾松の無礼を詫び,追っ付け仲間の長州藩士らが千鳥へ来ることを明らかにしつつ。

桂  「新選組の土方さんは,ここにいないほうがいいと思う」

と忠告する。

と,程なく,表口に長州藩士らの来訪の気配がする。
土方は,おみねに促され,二階の座敷窓から裏の川原へ去った。

▼屯所へ戻った土方は,早速,近藤の部屋でその晩の出来事を話していた
当然,おみねのことも。そこへ,土方の行方を捜しに行った原田左之助が,隊の羽織を着込んだまま慌てて戻って来た。何事もなかったような顔をして茶を飲んでいる土方に,原田は胸を撫で下ろしたように安心するが,日番の沖田などもわざわざ出動する羽目になった…と,少しばかり愚痴を込める。土方は,原田に軽く詫び,襲われたときの様子を話す。

土 方 「うん、三人、いや、四人は斬ったかな。
     最初の一人を斬ったら、もう刀に脂がまいて、
     斬りにくくなった。あんなことは初めてだったが…」
原 田 「よっぽどでぶを斬ったんだねえ、で、それからどうした?」
近 藤 「なァに、土方君は女にかくまってもらったらしい」
     原田、きょとんと、
原 田 「女? ほ、本当ですかい」
近 藤 「しかも、馴染みの女だ」
     原田、きょとんとして、
原 田 「どうなってんだ…」

次いで部屋に入って来た井上源三郎も,やはり土方を探しに行って戻って来たばかりだったところ,その無事な様子に安堵する。原田は,土方の行方について「馴染みの御婦人と遊んでいた」などと,さも心配して損をしたような口ぶりで話すが,井上には,何が何だかわからない。近藤は,大口開けて笑い出すが,土方は苦笑い。

▼桂との会合の席で,土方と遭遇したことを聞いた長州藩士らは,きっかけになったおみねを利用して,土方の行動を探らせようと,千鳥の女将とともに,おみねに打診する。しかし,おみねはこれを断る意向を含め,
女将に暇を頂戴して店をやめてしまう。

▼後日,おみねに逢いに千鳥を訪ねた土方は,店の女将から既に彼女が店を辞め,行方知れずになったことを聞いて落胆する。土方は,かつてニセ虎徹のことを見抜いた自分のせいで,おみねに武士の娘の身分を捨てさせたばかりか,今また彼女の人生を狂わせてしまったのかも知れぬ…と気が咎める。

土 方 「あの女の一生も,新選組の動きと共に,
     変わって行くのかも知れぬ…」

▼おみねは,やつれた様子で人形売りの行商をしていた。
風呂敷包みを持って路地を歩いていると,幾松が偶然通りかかったので,おみねは彼女を呼びとめる。幾松は,密かに入京した桂小五郎のもとへ行くという。羨ましがるおみね。幾松は,おみねが土方のことを好いているのではと,優しく気遣う。しかし,相手が新選組では聞いてあげるわけにもいかない。おみねは遠慮がちに,所在も教えず,ただ,「三条の室町の辻で,お人形を売っている」と幾松に告げた。

▼その頃,新選組の屯所では,桂の潜伏先を突き止めていた。
出動した土方,沖田,原田ほか新選組隊士ら数名は,桂と幾松の密会場所を外から囲む。これに気付いた桂は,奥の部屋の襖ごしに隠れる…と,そこへ土方と原田が来る。息を呑む幾松の様子をじっと見つめる土方は,すかさず襖の奥の気配を窺うように睨みつける。桂がそこに隠れている…と察する。一方,桂は,そっと刀に手を忍ばせ,抜刀体勢をとる。
沈黙する幾松,桂,土方…各々に戦慄が走る。しかし,ふと気を反らすように土方は緊張を解き,

土 方「俺は人に借りるのが嫌いだ」

と,桂へ聞こえるように言い,今度遭うときは,どちらかが倒れるときだ…と告げ,その場を離れる。安堵した幾松は,去りかけた土方を呼びとめ,深く感謝して礼を言い,三条の室町の辻で,お人形を買ってあげて…と,土方に告げた。幾松は,桂の手前,それとなく,おみねのことを教えたのだった。土方も,暫し思い巡らす様子だったが,すぐにおみねの居場所だと察しがつく。

▼路地端の誇にまみれながら人形を売っているおみね。
そこへ男の足が止まる。人形を買いに来た客だと思い,顔をあげるおみね,そこへ立っているのは土方だった。驚くおみね。土方は,行商の重い荷物を持ってやり,行く当てもなく,おみねと連れ立って歩き始める。
おみねは,土方が自分と歩いていたりしてもいいのかと,遠慮がちに尋ねる。

土 方「あんたの行きたいところへ行こう」




土方の優しい言葉を聞き,おみねは,意外に感じつつ,恥じらいながら土方の後ろに付いて歩く。その後,二人は鴨川で啼く千鳥を見に行った…。

(了)
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負けないで!島田さん!

島田さんが,なんかヤバそうです…弱ってます。下記に記事を引用します。
島田順司オフィシャルブログオフィス斉藤・島田順司です。公式の場で現状を伝えます。無題
May 09 [Sun], 2010, 7:43
先方の長と話し合いを致しましたが、ブログ書き換え、記事削除の要請を強いられ、対話は侮辱一貫の態度にて、断念致します。誠意の対話も出来ず血風録の解説を一から記せとの指示まであり、噛み合わせの皆無を実感致しました。私自身の携帯電話を近親の者に与えていると読み違えられ、記事を削除致しました。侮辱の重なる攻撃に精神が限界を超えました。事件の返答は文章を休憩日に練り書きますとの返信を受け、練って話す事では無く、血風録他のの話をする状態ではない事の判断もつかないご様子に、残念ですがこの件の和解の決裂を決意致しました。多方面に渡り皆々様へは大変ご心配をおかけ致しました、お詫び申し上げます。旭さんへは留守電でのやり取りが重なり話が出来ず、留守電の私へのご心配のお言葉に大変感謝しておりますが、お会いし詳細を語る約束でおります。 ご理解下さる皆様、この度につきましてはこれで終結とさせて頂きます。よろしくお願い致します。 辛く困惑しています。この際ブログを休止する事も関係者と相談しているところです。余りに無責任な反応に応える気持ちが失せ、現実に昔から応援して下さっている皆様にも迷惑と思い、しばらく休止をも考慮すべきだと思っています。無性に虚しい疲労感におそわれ、哀しさ包まれています。 インターネットを使う事がいかに厄介な事かが理解出来、今後の課題として考慮していく気持ちでおります。 俳優島田順司
クッソー!!いったいどんなヤツね?島田さんを傷つけるヤツは!!
「血風録全話の解説をしろ」だあ~?アホ抜かせ!!
島田さんは,ひとりの俳優であって,文筆家じゃないぞ!!
そんな指示なんか♪虫コナ~ズ~♪。
もうね,こりゃ,イヤガラセだね。
そんな頭のイカレたような輩
相手にするだけアホくさいですよ
島田さんを困らせて,一体,何の得があるってのかね?…いい加減にしろッ!!
偉そうに…ナニサマのつもりだッ!!
と…恋夜がこんなところで,一人吠えても何にもなりませんが,
大好きな島田さんが一方的にとっちめられて弱っているなんて,
なんか我慢ならん!! クサレきったネット攻撃なんかに
凹んじゃダメ!!負けるな島田さん!! 
関わってきたファンならば,島田さんに守ってもらうばかりでなく,
こういうときこそ,心の支えになって,お守りして差し上げなくちゃ。
 
何が真実で,誰が正しいか,
天知る地知る,俺が…いや,ファンは
皆,知ってますヨ。だから大丈夫!!
 

 
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CMで栗ちゃま爆唱!!


なんと!栗ちゃまがッ!シャンソン風に熱唱!~CM(金鳥 虫コナーズ『ガラスに虫コナーズ 窓ふきシャンソン編』

http://flash.picturetrail.com/pflicks/3/spflick.swf?ql=2&src1=http://pic80.picturetrail.com:80/VOL1925/11621644/flicks/1/8184804


上の画像はCMとは関係ないものですが、現在の栗ちゃまで御年73歳。世間でいえば「おじいちゃま」?(^^ゞ世代ですが、年齢を感じさせない若々しさで、CMでも張りのある美声を披露。CMの内容はこうです。『小窓用のガラス一枚を抱え、布でフキフキしながら、夜だというのにデカい声でシャンソンを歌って路地を歩いて来た不思議なオジサマ(栗ちゃま)。晩御飯を食べてる他人様の家の窓を外からフキフキ…(住居侵入罪かも(^^ゞ)…そしてまた歌いながら去っていった…と思いきや、またどっかの家?の外灯をフキフキ…』どうなるんでしょうね~…(不審者として捕まらなければいいけど…(^^ゞ)。大真面目に歌っているところが茶目っけがあってとっても可愛らしいです。冬なのに半袖シャツで屋外の撮影をなさったとか。その昔、時代劇(宮本武蔵役)で真冬に滝つぼへ浸かったのと比べれば、へっちゃらなのかもしれませんが(^^ゞ


▼栗ちゃまが熱唱された歌詞です(^^ゞ▼
♪窓を拭い~たら~…「どうなると思う?」
♪窓を拭いたら~虫が来ん~♪ 
「なんじゃそれとは言わないで!!」
♪ガラスに~虫コナァ~ズゥ~♪
♪窓を拭い~たら~虫が来ん~♪
♪灯りを拭い~たら~…「どうなると思う?」 
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栗ちゃま Happy Birthday!2010


5月9日は、大好きな栗塚旭さまのお誕生日。どうぞ、いつまでもお元気でご活躍下さいませ。お誕生日おめでとうございます!に付け足して「お誕生日、有難うございます!」と言いたいほど、役者としての栗ちゃまの存在そのものに感謝しています。いろいろな役を演じる面白さあったればこその役者稼業。ファンとしてもいろいろな栗ちゃまを楽しみながら応援しています。

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第5話…海仙寺党全滅(『新選組血風録』)



土 方 「一人で…凄いことをやってのけたらしいな」
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★本来,白黒映像ですが,恋夜城ではカラー風の画像にしています★

(第5話)
▼町の通りを歩いてくる斎藤の姿に,土方の声が解説として流れる。
土方の声 「斎藤一。明石藩脱藩、江戸以来の同志。新選組三番隊組長,剣術師範頭。その剣,絶妙を極め,隊中屈指の使い手なれども,いささかも,おごり高ぶるところなし。人望あり」

中倉主膳(しゅぜん)という浪人が,居酒屋で斎藤を待っていた。
新選組へ入隊するためだ。斎藤とは,明石の同郷で,幼い頃剣術の稽古をしたという。人の好い斎藤は,ちょうど隊士募集中の近藤や土方の前に,この中倉という男を紹介する。斎藤の知人ということで,特に幹部の異論はなく,中倉の入隊が決まった。

その場にいた沖田がクスクス笑いだす。
近 藤 「沖田,なにがおかしい」
沖 田 「近藤先生も甘いなァ」
近 藤 「何が甘い?」
沖 田 「斎藤さんの同門だからといって,
     斎藤さんと同じように強いとは限らないでしょう。
     斎藤さんみたいな名人は,百人に一人,千人に一人だ,
     それに第一,斎藤さんは努力家だ 」
土 方 「総司,そんなことは,近藤さんは百も承知だ」
沖 田 「そうでしょうねえ,ハハハ,斎藤さんも人が好いからなァ,
     内心は,困っているんじゃないのかな」

▼中倉は,入隊早々,斎藤に十両(大金)の前借りを無心する。
斎藤としても急なことで持ち合わせはなかったが,なんとか金を用意してやった。冴えない中年男の中倉に金が要る理由…それは,心底ズブズブに惚れた若い妾(めかけ)女の「お小夜」に貢ぐためだ。中倉は,早速,斎藤から貰った大金と手土産を持って,お小夜の家へ向かった。
新選組に入隊したことを話したあと,中年男のあさましさを隠そうともせず,情事に及んだ。お小夜という女は,打算的に媚態を示し,金目立てに平気で身体を許す小悪魔的な性悪女だった。実のところ中倉は,彼女の御機嫌をとるために,新選組に入隊したのだった。

▼中倉は斎藤率いる三番隊に配属されたが,
可もなく不可もない様子や,剣の腕も実戦向きでないことから,土方は,斎藤に相談したうえで,中倉を帳簿付け役に回そうと考えていた。それとは別に,近藤と土方は,水戸藩の過激分子「海仙寺党」(かいせんじとう)の存在を気にしていた。公儀に挑戦的な水戸藩士らが徒党を組み,海仙寺という寺を勝手に占領して気勢をあげていたが,所司代や新選組としても,水戸藩と会津藩との大問題に発展する恐れもあるため,うかつに手が出せないでいた。

▼そんな折,斎藤は,勘定方の河合耆三郎から,中倉の前借りが激しいことを聞く。中倉は,たびたび隊から金を借りては,お小夜に高額の品物を貢いでいた。斎藤は居酒屋に呼び出した中倉から,この事実を聞く。
中倉は,面目なさそうに惚れた女のことを打ち明けながら,斎藤や隊の名誉を守り,決して迷惑をかけないと誓う。

斎 藤 「いやいやそれで結構です,ハハハ,
     金のかかる女のほうがきっと,楽しいでしょうな,
     ま,とにかく飲みましょう」

中倉は恐縮しながら盃の酒を飲む。

▼お小夜は,売春斡旋業者の利助から紹介された赤座智俊(あかざともとし)という侍を家に招いていた。この赤座こそ,水戸海仙寺党の親玉格の侍であった。お小夜は,しおらしく振舞い,真昼間から赤座と情事に及ぶ。

▼その頃,新選組の屯所では,土方が斎藤を呼び,中倉を御用部屋の小荷駄を扱う任務に移動させるよう指示する。いざというとき,斎藤が困らぬよう配慮したからだ。斎藤も早速これを了解し,出動の際,中倉に配置替えを言い渡し,任務は明日からで良く,早退して骨休めするよう申し添える。

▼中倉は,お小夜の家に向かった。
外には目明しの佐吉が赤座を探索するために張り込んでいたが,中倉の来る気配に,陰へ隠れる。お小夜は,中倉の不意の来訪に内心動揺したが,
赤座の手前,町内の者が来たものと偽り,それとなく赤座には部屋の奥へ隠れて貰った。中へ入った中倉は,普段と違う様子のお小夜と,煙管(キセル)や茶菓子のある部屋の有様から,来客…しかも男の気配に気付き,お小夜を問い詰める。ちょうど中倉の背後にあたる襖隣の部屋に隠れていた赤座は,中倉の口から「新選組」という名前があがった途端,抜刀するや,
襖越しに中倉の背中を一突きする。中倉は赤座に向かいかかるが,なおも背中を斬られ,その場に倒れる。赤座は,すぐさま,お小夜を連れて逃げ出した。駆けつけた目明し佐吉の前で,中倉は,

「斎藤さんに迷惑をかけ,すまない…面目ない…」と言い残し,息絶える。

一方,往来を赤座と逃げるお小夜は,あまりの恥ずかしさから,妾女の本性を露わにし,激怒した赤座に髪を削ぎ落され,置き去りにされた。

▼斎藤は,屯所の外で,佐吉から中倉が斬死したことを聞く。
佐吉によれば,傷は皆,背中ばかりだという。部屋へ戻った斎藤は,それまで沖田と指していた将棋にも身が入らず,やめる。様子を察した沖田に,斎藤は,中倉のことを話す。

斎 藤 「中倉主膳がやられた」
沖 田 「どうせ,そんなことだと思った。
     すぐ手を打たないところをみると,
     不味(まず)いやられ方ですね。
     公用の闘いではないのですね」
斎 藤 「隊士として,いや侍として,恥ずかしいやられ方をした」
沖 田 「困ったな。あの人は,あなたが入れた人でしたね」
斎 藤 「仕返しをしなければ,私の恥になる」
沖 田 「(あっさりと)私が手伝いましょう,相手は判ってますか」
斎 藤 「判っている」
沖 田 「じゃァ,すぐ行きましょう,表沙汰にならないうちに,
     相手も倒してしまえば,中倉さんの恥もそそげる,
     行きましょう」
斎 藤 「そうはいかん,君に,手伝ってもらうわけにはいかん」
沖 田 「どうしてです」
斎 藤 「どうしてもだ」
沖 田 「強情だな」
斎 藤 「生まれつきだ」
沖 田 「そうでしょうね」

その場から出た斎藤は,土方の部屋へ行く。

斎 藤 「ちょっとお願いがあるのですが…」
土 方 「改まって,何かな」
斎 藤 「私がお願いして隊に入れた中倉主膳,
     あの人を病死したことにして戴けませんか」
土 方 「病死?」
斎 藤 「そうです,今日,病死した,そうして戴ければ,
     本人の武士の面目も保てますし,
     同門稽古仲間ということで紹介した私の名誉も,保てます」
土 方 「(鋭い眼差しで)斎藤君,君の名誉を守るためなら,
     そう取り扱ってもいい。
     その代わり,中倉君を病気で死なせた相手を
     倒してもらわねばならぬ」
斎 藤 「勿論です」
土 方 「中倉君は病気で倒れた・・・・とすれば,
     その相手を倒すのに,新選組を動かすわけにはいかん,
     君の隊の者も,使ってもらっては困る」
斎 藤 「当然です,私一人で致します。暫く休暇を戴きます」
土 方 「相手は判っているわけだな」
斎 藤 「判っています」
土 方 「誰かな」
斎 藤 「今はまだ申し上げない方がいいと思いますので…」

斎藤は一礼し,淡々と部屋を出た。
土方の内心の声が流れる。

土方の声「斎藤は,こういう男だ,
     僅かに,昔の馴染みだった男に頼まれれば,
     それだけで,厭とは言えない人の好さがある。
     その男は,我々が案じていた通りに,
     斎藤に迷惑をかけたらしい。
     斎藤は,その男の恥を,
     自分の恥としてそそごうとしているのだ」

▼斎藤は,目明しの佐吉の情報から,海仙寺党の留守を見計らい,事前に寺の内部を見て回り,彼らの帰りを待った。

▼沖田は,菓子を食べながら土方に斎藤の話をしていた。
相手が誰か,土方も知らないと言う。なにやらふと思いついた沖田は屯所を外出し,目明しの佐吉のもとへ行く。やがて用から戻ってきた佐吉から,斎藤が海仙寺党の様子を探っていたことを聞いた沖田は,急いで駆け出す。

▼海仙寺に,赤座たちが帰ってきた。
室内に明かりがともされた。と,誰かが斎藤に気付いて驚く。斎藤は,抜討ちに一人,返す刀でまた一人斬る。不意を突かれ,狼狽して抜きつけた赤座らを,凄まじい斬撃で斬り伏せてゆく。

▼沖田が海仙寺の前に到着したとき,斎藤は,何事もなかったように

「もう済んだよ」と言って歩み出す。

沖田は呆れたように首を捻り,海仙寺のほうをふと眺める。
寺の中には,赤座以下,七名の死骸が転がっている。

▼屯所に戻った斎藤は,土方の部屋に向かった。
誰を倒したのか,相手のことを告げず,中倉の恥をそそぐため,ただ仕返しをした,ということのみ報告する。土方も,私闘であるから守護職への届け出の必要はないとして,詳細を聞くことはなかった。斎藤が部屋を出て行くのと同時に,沖田が入って来る。

土 方 「なんだ,なにをにやにやしている」
沖 田 「土方さん,近藤先生が喜びますよ」
土 方 「なに?」
沖 田 「いや,所司代や,会津も喜ぶでしょう」
土 方 「何のことだ」
沖 田 「海仙寺党なんていうものは,もう一人も残ってませんよ」
土 方 「なに? 海仙寺党?」

▼土方は,斎藤の部屋へ行き,刀の手入れをしている彼の横で,呆れたように呟く。

土 方 「一人で凄いことをやってのけたらしいな」
斎 藤 「いや,別に,何も…」

斎藤は,照れくさそうに呟いた。

土 方 「水戸海仙寺党は全滅した。無論,
     新選組が出動した事実もなく,
     その証拠もない。ただ,
     その日,新選組の記録に書き入れられたことは…
     三番隊隊士中倉主膳,病死。
     三番隊組長斎藤一,休暇届出のところ,
     翌日帰隊勤務に復帰す。
     所司代より,海仙寺党解散せし模様との知らせあり…
     詳細明らかならずという …」

(了)
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第4話…胡沙笛を吹く武士(『新選組血風録』)



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★モノクロ画像を少しだけカラー風に光源染色★

(第4話)

▼土方は,京都所司代の要請により,ある晩,一人の武士を襲撃するため屯所を出た。同行したのは,まだ入隊間もない隊士見習いの鹿内 薫(しかない かおる)。

土 方 「ひどく口数の少ない,田舎出(いなかで)丸出しの男である」

出身は,奥州・南武藩脱藩(※奥州…福島県・宮城県・岩手県・青森県と,秋田県の一部)。
土方は,緊張気味の鹿内が,まだ真剣を使った経験がないと言うのを聞いて,若干,後悔する。しかしながら,この鹿内には,クソ度胸のような怖いもの知らずの面があった。
やがて狙う武士がきた。所司代の情報に反し,護衛が多数だったため,
土方としても襲撃を断念しかけたところ,鹿内は,悠然と抜刀しながら相手の前に出た。「新選組」と,小さく名乗りを上げ,土方が止めるのもきかず,ひとり猛然と武士らに斬りかかった。遅れて土方も加勢し,襲撃は成功したが,土方は,鹿内の無茶な行動に半ばあきれながら,意外な頼もしさに感心する。この話を屯所で聞いた原田左之助の要望により,鹿内は,平隊士として原田の十番隊に所属することになった。

▼鹿内には洒落っ気など微塵もなく,無骨な田舎者で,楽しみといえば,郷里で伝わる胡沙笛(こさぶえ)を吹くことだった。
その昔,東北地方にいた蝦夷(えぞ・えみし)が吹いていた笛だという。
この笛を吹くと縁起が悪い事が起こるらしく,地元でも忌み嫌われていたため,鹿内は,京都へ来てからも,人目を避けて笛を吹いていた。
その笛の音を,偶然,髪結いの仕事帰りだった「小つる(こつる)」という女が聞きつける。鹿内と小つるは,雨宿りをしながら互いに打ち解け,再会の約束をする。そしてその後,深い仲になった。

▼土方は,当初,鹿内を頼もしい隊士として期待していた。
鹿内と同じ十番隊の平隊士・平野などは,出動前の鹿内の身なりを土方が気遣う様子を見て,羨ましがるほどだった。しかし,鹿内は,小つるとの関係が深まり,出動時刻に遅刻するようになる。土方は,不意に目を反らす彼の態度を見るなり,思っていたような男ではなくなった…と勘づく。
小奇麗に変貌していく鹿内。女ができたからだと隊内でも噂になる。
事実,とある雨の日,往来の店先に仲睦まじく相合傘でやってきた鹿内と小つるの姿を,土方も偶然,目撃していた。
土方は,それとなく鹿内を呼び,女と抜き差しならない関係にならぬよう忠告する。ところが,小つるは鹿内の子を身ごもる。
鹿内は,原田に相談し,所帯を持つことの許可を得る。
原田としても,鹿内に手柄を立てさせて,出世できるよう協力する意向を示す。だが,これを原田から聞いた土方は,反対する。

土 方 「(略) 新選組の使命と,所帯の里ごころ…
     これは全く相反するものだ」
原 田 「(略) なあに,大丈夫だ,
     女のひとりくらい持てないようじゃ,一人前じゃねえや」
土 方 「一人前になっていない者は,仕方があるまい」
原 田 「キツイね,言うことが。とにかく,任しといてくれ。
     俺の組のもんだ,あんたに迷惑はかけねえ」

▼相手を特定し,制定された法令が記載された掲示板のことを「制札(せいさつ)」という。所司代の制札が,土佐藩士らにより,引き抜かれる事件が度重なり,新選組は出動を要請される。土方は一番隊を指名しようとしたが,近藤は十番隊を任務に当てる。原田から出動の催促があったからだ。
土方は,原田率いる十番隊に,出動命令と,待ち伏せ作戦の手筈を指示する。原田は,制札付近の見張り役に,平野と鹿内を指名し,成功すれば伍長に昇進させることを約束する。土方としては,一抹の不安から,原田に鹿内を外すよう忠告するが,原田は原田で,鹿内に手柄を立てさせようとしていたため,成功後の待遇を土方に打診してから,大丈夫だと言って出動する。

▼こじき姿で橋のたもとに座る平野と鹿内。
土佐藩士が制札を抜き取る様子があれば,笛を吹いて知らせる任務だ。
十番隊は二手に分かれ,やや遠方の場所に隠れて待機する。昇進を約束された平野は,嬉しさと緊張の入り混じった様子だったが,鹿内は,じっと小つるのことを考えていた。彼女が所帯を持ちたいと泣いて懇願する様子を思い出しながら…。

▼やがて,ほろ酔い気分の土佐藩士ら数名が橋を渡ってやってきた。
制札を見つけ,こじき以外に,ひと気がないことを確かめた土佐藩士らは,嘲笑いながら,地面に立てられた制札を引き抜きにかかる。これを見た平野は,鹿内に合図の笛を吹くよう言い,置いてあった刀を取って,斬り込みにかかった。しかし鹿内は…笛をその場に残し,逃走した。平野は必死で十番隊を呼び寄せながら,ひとり応戦したが,原田ら十番隊が駆けつけた時には,既に脳天や腹を斬られて重傷を負っていた。

▼原田の十番隊は屯所へ戻った。
土方と近藤らが見守る中,平野は虫の息で,鹿内君が逃げた…言い,絶命する。

近 藤 「鹿内薫君…士道不覚悟!」(=切腹)
土 方 「原田君…」
原 田 「あんたの,言った通りになった」

原田は苦渋の表情を浮かべながら,十番隊を率いて再び出動した。

▼鹿内は,局中法度に反して新選組を脱走し,小つるを連れて逃亡するが,そのあまりのみじめさに,小つるは泣いて嫌がり,雑木林の木にすがりついて動こうとしない。そこへ原田の十番隊がジリジリと来る。
抜刀する鹿内。

原 田 「鹿内君,俺と約束した筈だな,ひとつだけ守ってくれ,
     士道背くまじき事。君も侍なら,自分で始末してくれ」
鹿 内 「嫌だ! 俺は…俺は,逃げるんだ,
     俺には子供ができるんだ!」

と言うや,勢い,原田に斬りかかる鹿内。
だが,咄嗟に身を翻した原田の一撃を受け,即死する。
原田はなお,その場で呆然とする小つるを斬ろうと近寄る。
が,そこへ沖田が来て,女は逃がしてやるように言う。土方の命令だった。原田の十番隊は,小つるを残し,その場を去る。

▼鹿内の存在は忘れ去された。
ある日,土方と沖田は町の往来を歩いていた。
とある店の前で,土方がふと目に止めたのは,赤ん坊を抱いた若い夫婦連れの姿だった.かつて,鹿内と小つるが,同じ店の前で中睦まじい様子でいたのを偶然見かけた土方は,赤ん坊を抱いたその夫婦連れの姿に,鹿内と小つるの姿を重ね,立ち止って見つめる。が,沖田の声掛けで,すぐまた歩き始める。沖田はその様子を不思議に思いながら,また土方と歩み出す。

(了)
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第3話…昏い炎(『新選組血風録』)



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(第3話)

▼京都守護職の命により,新選組筆頭局長芹沢鴨,同じく局長・新見錦ら一派と共に,大阪城へ出張した近藤と土方。
大阪町奉行所と提携して,京・大阪に暗躍する倒幕浪士を一挙に制圧する相談であった。しかし,新選組の存在などは軽く見られ,打ち合わせは手早く済んだ。帰りがけ,芹沢らと遊興に繰り出すことになったが,往来で行く手を阻んだ酔っ払いの中年男を,芹沢は一刀のもとに斬り伏せてしまう。近藤と土方は,不意の出来事に驚くが,新見などは,無礼討ちだとほくそ笑み,意に介さず宴席に向かう。斬られた男は大工の棟梁だった。
早速仇を討たんと,大勢の大工の職人らが酒宴の店先に押し寄せてきたため,芹沢一派は返り討ちに出る。

土方と近藤は,じっと傍観しながら,芹沢一派の剣の実力を見ていた。
近藤らの護衛として,密かに大阪入りしたのは斎藤・長倉・井上の三名であったが,斬り捨てられた者の傷口を見た斎藤によれば,芹沢は,相当の剣の達人であり,下手をすれば近藤や土方も危ういものと見込む。


▼屯所に戻った土方と近藤に,沖田は,芹沢一派を始末する割り当てを考えたと無邪気に話す。

沖 田「野口,平間,平山には,長倉,藤堂,原田さんがぶつかり,
    あと詰めとして,井上さんと山南さんが加勢すれば,
    なんとかなるでしょ。
    新見は相当な使い手だが,こちらは斎藤さんにやってもらう。
    斎藤さんなら,新見にも負けないでしょう。悪くて,相討ち」
土 方「芹沢には誰が向かうのだ」
沖 田「仕方がないから,私が当たりますよ。
    私がやられたら,土方さんがやって下さい,
    二人が死ぬ気になったら,芹沢だって倒せますよ。
    そうすれば,向こうは全滅,こっちはみんな死んでも,
    近藤先生が残る,こっちの勝ちだ」
近 藤「総司,みんながいなくなってしまって私一人が残っても,
    なんにもならんぞ,江戸から来たみんなと一緒に作る新選組だ」
沖 田「でも,このままじゃ,しょうがないでしょう?」
土 方「総司,まあ,待て,こういうことは,焦っては駄目だ。
    打つ手は,打ってあるのだ」

土方は,既に監察の山崎に,新見の金策先である商人のもとを探らせていた。やがて山崎は,商人から,新見による金銭強奪の動かぬ手口と証言を得た。新見が屯所へひとり帰らぬ晩,土方は,その泊まり先を訪れる。

土 方「新見先生…いや,新見君。君は,局中法度に反した。
    新選組の名を勝手に使って,商人から金銭を強奪した,
    その証拠は,監察部によって既にあがっている。
    士道,最も不覚悟と言わねばならん」 

当初,激怒していた新見だが,居直ったように見せかけながら抜刀したため,その場で土方に叩ッ斬られ,粛清された。

▼芹沢は,この処断に激怒したが,局中法度の前では,局長と平隊士の区別などないことを,近藤及び土方から諭される。新見を失った芹沢一派と,近藤一派の力関係は,このときを以て形勢が一変した。芹沢らは,土方を暗殺しようと画策する。人を金で雇い,往来で襲わせようとするが,ことごとく土方に斬られ,失敗する。

▼その後,芹沢一派は,金策のため,大和屋という商家を訪れる。
かつて大和屋が,新選組に五百両を寄贈する約束をしていながら,いまだに金が提供されていないのはどうしたものかと聞く芹沢。大和屋の主人は,おもむろにその場へ妻のオハマを呼ぶ。オハマは,大阪で芹沢が斬った大工の棟梁の妹だった。彼女にとって,芹沢と新選組は恨めしい存在でしかない。芹沢とは別に,土方も大和屋を訪れ,主人に謝罪する。

▼金策の当てが外れた芹沢らは,逆恨みし,兄の法要のため,伏見の船宿に出かけていたオハマのもとへ出向き,暴行(また無理やりテゴメ)。
芹沢らの様子に不審を感じた土方は,早急に駆けつけたが,既に芹沢らは去り,辱めを受けたオハマは自害しようとしていた。土方はこれを止めるが,半狂乱のオハマから「腰の刀は,お飾りドスか?」と罵られる。

▼芹沢の騒動が新選組の評判を失墜させていることは,既に会津中将も把握しており,土方と近藤は,会津藩本陣に呼び出され,所司代役人から暗に芹沢らの暗殺を,ほのめかされる。遂に腹をくくった近藤と土方。

▼豪雨の深夜(屯所)。
芹沢がひとり寝ている。寝込みを襲いにかかったのは,近藤,土方,沖田,井上の四名。雷鳴轟く中,芹沢の粛清(暗殺)は決行された。

▼後日,会津藩本陣に出向いた土方。所司代も芹沢らの粛清に暗黙の了解を示す。役人の見送りを受ける土方の前に,狂人と化したオハマがふらりと現れ,土方を見つけると,意気地がないだの弱虫だのと激しく笑い,罵りはじめた。役人らはオハマを取り押さえようとしたが,土方は,知っている女だと言って止め,オハマに言わせるだけ言わせ,そのうち身内の者が駆けつけきて,連れて行かれる彼女の哀れな様子を,痛々しく見つめるばかりだった。

オハマさん…お歯黒で眉が薄く,真っ黒な口を開けて騒ぐから,余計,不気味ちゃん…(^^ゞ。

▼最後に土方のナレーション。
土 方「芹沢派との昏い闘いは終わった。
    新選組は,その第一歩を踏み出したのである。
    局中法度はその力を発揮し始めた。鉄の規律と信念を以て,
    新選組は次第に京洛の巷に,その存在を認められていった。
    凄まじい倒幕・佐幕の時代の闘いが,これから始まる。
    新選組はその先陣をきるために立ち上がる。
    だが,その新選組は,数え切れぬ人々の,
    痛ましい犠牲の上に作られたのだ。
    その新選組を,俺は動かそうとしている。
    それが俺の悔いのない生き方と信じているからだ。
    理屈はいらない。
    この剣が飾り物かどうか,
    俺がこの命を燃え切らした時,決まる」

(了)
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いさかい物語(想像)

以下は島田さんブログの記事から引用したものです。よ~わからないですね…(-_-;)?
タイトル:頼みます・・・
May 05 [Wed], 2010, 13:07
ニケさんアドレス有難う。
巻き込んだ二人のうちの一人の方へ。Sにメールをして下さい。
話があります。
すべてを知ったが、裏切って居たのか、話をしないと信じられない。
連絡を下さい。
やっとすべての誤解の元も分かった気がする。
揉めに関わった方は誰でも良いから連絡下さい!
私は話をしたい!
関わった人ならわかるだろうけれど、
Sはいたずらなどして居ないし、
私とは古参ファンの母親、業界後輩の弟もあって家族ぐるみの長い付き合いだ。
公には言えなかった。
トップの方、もし読んでいるなら、Sを通してでも連絡して欲しい。
らきあさん、Sに連絡取れますか 話をしてありますのでお願いします。
書くがこのSはさくらです。
さくらはF(名前の頭文字)さんに必死に訴えたにもかかわらず無視をされ、
だから私と相談し、
「島田さんやグループのトップの方を入れて話をしましょう」と提案し伝えた。
だが無視された。
どうしてさくらを皆で悪者にするのか。
必死に訴えても信じてもらえないのか。
周りの友達は若いLoveファン隊だ。
全員で意見は一致して居る、
友達を使いネットだろうがどこだろうがいたずらをしたと言うならば調べてもらいたい、
法的手段も考えて居る、
全員一致の意見だ。
私が本当に避けて居たのはFさんだ。
彼女と私が直接にあった出来事が原因で誰にも知るよしはない。
ネット不信でもない。
さくらが嫌わせたなどは無い!
いい加減に誤解をときたい。協力してくれる方は連絡頼みます。
 
以下は恋夜が上の記事をもとに想像した架空話です(^^ゞ…こんなかな~?
何分,わからないもので…。
 
チャウチャウ犬は,村で人気の青年とは家族ぐるみの仲でした。
そのチャウチャウ犬の周りには,青年を慕う子犬の群れがいて,
ある日,ゴリラの存在を知りました。(←ここがわからん)
青年も,ゴリラの主張には,いまいち馴染めませんでした。
それがわかっていたチャウチャウ犬は,
親しい子犬の群れたちと井戸端会議で,
それとなくゴリラとその集団の噂話をしました。
すると,どこからか,ゴリラを知るモグラとタヌキがひょっこり現れ,
その話をそれとなく聞き,どうやら,チャウチャウ犬が子犬たちを先導して,
ゴリラの悪口を言いふらしているようだ…と勘違い。
しかも,チャウチャウ犬のほうで,青年がゴリラのことを嫌いになるよう
仕向けているのではないか…と誤解。
そもそも,チャウチャウ犬たちを使って
青年自身がゴリラやその集団を遠ざけようとしているのかも…と,
誤解が誤解を招き,ゴリラサイドは激怒。
(もしや,ゴリラの集団のほうが既に青年の悪口を言っていたとか?)
チャウチャウ犬があとでいくらゴリラに誤解だと吠えても,ゴリラは無視。
困ったチャウチャウ犬は,
青年を交え,ゴリラとその集団のボスとで話し合いをしたいと提案。
しかし,これも無視されてしまいました。
やがて,ゴリラサイドからの反撃が開始され,
見えないゴリラパンチがチャウチャウ犬と青年の身に浴びせられました,
青年などは,存在そのものを否定されたような扱いを受け,
どうしてこんなことになってしまったのか…と悩み続けました。
仕方なく青年は,直接ゴリラに会ったそうですが,
一度硬直したゴリラの心は開きませんでした。
そして,ゴリラのボスとは依然連絡が取れないまま経過し,
現在に至っています。
騒動に巻き込まれたモグラとタヌキにも連絡が取れず,
弱ってしまった青年は,
この問題を,村の掲示板に公に出そうかどうか迷った末,
密通文書箱を設けて,どうしたらいいものか意見を募りました。
もしかしたら,内緒の手紙でなら,
ゴリラのボスが連絡をくれるかも知れない…,
青年は,そんな淡い期待をどこかに抱いたものの,
やはりゴリラのボスからは何の連絡もありませんでした。
 
これまで,ひたすら低姿勢を重ね,弁解し,
話し合いの機会を懇願しながら無視され続けたチャウチャウ犬たちは,
自分たちはゴリラやその集団に対して悪口なんか言ってない!潔白だ!
なんなら調べてみろ!…と,遂に逆切れし,
お白州に出たってかまワン!…と,全員一致で団結する始末…。
ややもすれば,泥沼の方向へ向かってしまう恐れもあります。
ホウ~的な手続きなどをちらつかせて,
相手を驚かせようとするのは一番マズい方法なのですが…。
やがて青年は,それとなく設けた密通文書箱の情報から,
誤解の全貌が,ようやくわかりかけてきた模様。
この先,どうなるのやら…続く(-_-;)?
 
 
こんな感じでしょうかね…?…なんか気になって…ってどうしようもないか。
!(゜o゜)!ヤバッ!
こんなことしてる場合ではない…血風録見て,まとめなくっちゃ。
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第2話…誠の旗(『新選組血風録』)



▼スライドショー(リンク)
http://flash.picturetrail.com/pflicks/3/spflick.swf?ql=2&src1=http://pic80.picturetrail.com:80/VOL1925/11621644/flicks/1/8174258
★モノクロ画像を少しだけカラー風に光源染色★

▼第2話は,新選組結成当時に作られた「誠の旗」が焦点。
土方のナレーションで,新選組結成までの経緯が簡単に紹介されている。
清河八郎と決別し,京に残ったのは,近藤の試衛館道場の面々のほか,水戸脱藩の芹沢 鴨(せりざわ かも),新見錦(にいみ にしき)ら数名。

★「新選組」成立の経緯
文久三年二月八日(1863年3月28日),
将軍徳川家茂の京都上洛にさきがけ,清河八郎が将軍警護のための浪士組を江戸で募集。これに参加した近藤や土方,芹沢鴨らは,中山道を一路京都へ向かった。後日,もともと尊王攘夷派の清河は,勤王派の勢力と通じていたため,浪士組を幕府から独立した天皇配下の兵力にしようと画策していたことが,取締役らの知るところとなり,清河及び浪士組は江戸へ戻ることになった。しかし,これに反発した近藤・土方らの試衛館派と,芹沢・新見らの水戸藩出身派は,将軍警護のため,あくまで京へ残留することを主張し,壬生村へ残った。その後,清河は江戸で暗殺された。

★同年三月,公武合体に基づく攘夷断行の実現に助力する…という目的のもと,「壬生浪士組」が結成され,壬生村の八木低・前川邸を屯所とし,隊士を募集。会津藩主(京都守護職)松平容保の預かり(配下)となった壬生浪士組は,勤王倒幕浪士ほか不逞浪士の取り締まりなど,主として京都の市中警護を任される。

※文久三年八月十八日(1863年9月30日)の政変時,壬生浪士組の活動が認められ,以後,「新選組」を拝命された。
※文久三年八月十八日の政変とは…孝明天皇や公家,薩摩藩・会津藩などの公武合体派が,長州藩を主とする尊王攘夷派を,京都の政界の中枢から追放した事件。

(第2話)




▼近藤ら,試衛館道場の面々は,隊士募集のため各地を巡り歩いていた。
そんな中,同じ八木低に残った芹沢鴨ら一党は,連日連夜,祇園・島原へ繰り出し,酒や女遊びの遊興三昧。
土方らは,芹沢らの横暴な振る舞いを,当初から見て見ぬふりをする。
彼らを立てておくことには理由があった。芹沢は,もと水戸攘夷党の生き残りとして,既に,一門の志士として名が通っており,会津藩にも広く顔が利くからだ。

土 方「新選組は,芹沢の口利きで出来上がったともいえる。
    従って芹沢は,新選組を自分一人の徒党の如く思っていた」

土方は,芹沢一党とは別に,着々と水面下で「自分たちの新選組」を作るために動く。
まず,新選組の局長を二名にすることを提案し,芹沢のほか,近藤も局長とするよう進言した。
すると,芹沢は,局長は三名でも良かろうと言い,新見錦も局長にするよう要求。土方に対しては副長になれと命令する。
近藤も土方も,これを了解した。

▼その後,土方は,京で評判の良い染物屋を訪ねる。
その店の未亡人の女将・お栄(オエイ)は,土方から隊旗の制作を依頼される。
浪士隊の旗…と聞いて,戸惑うオエイに,土方は,旗の真ん中に「誠」という一字を染めて欲しいと頼む。

土 方「そうだ,まこと(誠),誠実のせい,真心の,誠だ」

これを聞いて納得した様子のオエイは,誠心誠意,「まことの旗」を染め上げることを誓う。

▼隊の軍律(規則)である「局中法度」を芹沢らに提示した近藤,土方は,既に芹沢や新見らが,隊の御用金と称して,商家から金員を強奪し,
豪遊に明け暮れる様子を把握していた。
芹沢は,法度書にある「士道」とは,どういうことかと尋ねる。
その際,土方は,ひとことで言えば,誠…武士の信義だと答える。
これには芹沢も二の句を継げず,黙り込んでしまう。

▼近藤・土方は,新たに入隊した山崎烝に,監察(諜報)の任務を命じ,芹沢らの金策の証拠を掴まんと,その行動を更に監視させる。

▼染物屋では,オエイが,何度も誠の旗の試作を繰り返していた。
店に寄り,その様子を陰から見た土方は,オエイが我がことのように旗作りに精を出す様子に感心する。
オエイも,率直な志の土方に,いつしか心惹かれていることに気付く。
今後,良いことが起こりそうな…そんな予感さえ抱く。

▼山崎の報告により,近藤と土方は,芹沢らが局中法度に反し,勝手に金策していた証拠を掴む。一方,芹沢も,土方らの動きを察していたため,事前に山崎を問いただしたうえで,土方を呼びつけ,監察が局長を探るとは何事だ!と,怒りを露わにする。
土方は,別段,動じる気配も見せず,

「山崎君は,監察として局中法度に基づき動いている」と説明し、

志を同じくして集まった新選組の隊士間に,家臣と主のような主従関係などないことを指摘した上で,芹沢の発言を失言であると,けん制した。

▼強気な土方の存在が気に入らない芹沢一派は,一応,局中法度を考慮しつつ,近藤派を潰すためにも,まずは土方を怒らせ,私闘で刀を抜かせ,局中法度を自ら破るよう仕向けることにした。
ちょうどその頃,屯所へオエイが訪れ,完成した誠の旗を持参していた。
土方は,その見事な出来栄えをじっと見つめ,心から感謝の念を示す。
オエイが土方の来客であることを知ったエロオヤジの芹沢は,染物の注文があるからと,自室にオエイを呼びつけ,まんまと手ゴメにする(暴行)。

なかなか戻ってこないオエイを気にする土方。
と,部屋に沖田が来て,芹沢の部屋の様子が変だと言う。
慌てて廊下に出た土方が目にしたのは,乱れた帯と着物を引きずり,放心状態で芹沢の部屋から出てきたオエイの姿だった…。
動揺する土方。
オエイはあまりの衝撃に声も出ず,張り裂けそうな瞳から涙をこぼしたまま,その場を走り去った。

▼咄嗟に怒りを覚えた土方は,近くの廊下に,ふてぶてしく佇む芹沢に
今にも挑みかからんとする…が,突然,後方から近藤の声がする。
完成した誠の旗を見せてくれ…と言う近藤。
近藤もまた,土方の心の内を十二分に理解していた。
しかしながら,今ここで堪忍袋の緒を切ってしまえば,構想を重ねてきた独自の新選組結成の夢が途絶えてしまう。土方は,その場に硬直したまま必死で耐える。

土方(心の声)「耐えるのだ。今,俺が,芹沢に向かえば,
        俺の作った局中法度に触れる。
        たとえ,あの女が俺にとってどんな女にせよ,
        俺は新選組のために,耐えねばならん」

新選組のために耐えるのだと,自らに言い聞かせる土方。

芹沢らは,つまらなさそうに一旦部屋に引き揚げたあと,土方の様子を嘲笑うと,今度は,屯所へ芸者連中を呼び寄せ,宴会を開いて大騒ぎする。
土方はその騒動にもじっと耐えていたが,急に思いきったように立ち上がる。と,ちょうど部屋に来たのは近藤だった。
近藤は,土方の気持ちを察し,外へ月を見に行こうと誘う。
そこへ,新見が来て,嫌みったらしく,一緒に宴会をしないかと申し向けるが,近藤は,毅然とした態度で断る。

▼その後間もなく,オエイは自害した。
染物屋を訪れた土方は,生前,オエイが目を輝かせて夢見ていたとおり,
誠の旗が必ず都の空へ翻る時が来る,と心の中で誓う。
そんな土方へ偶然声をかけたのは,芹沢だった。染物屋の女が自殺したことを伝える土方。しかし芹沢は,まるで他人事のように,バカなことをする女だと言い捨てる。土方は,ここでもまたグッと憤りをこらえる。
芹沢一派は,一緒に宴席に来ないかと,土方をからかうように笑いながら誘ってきた。これに土方は素直に応じる。
酒の席で,酔い潰れた末,抜刀して暴れ,喚き散らす芹沢らの振る舞いを横目で見ながら,土方は,ひとり静かに座して酒を飲みながら,心の中で呟く。
土方(心の声)「芹沢鴨,暴れたければ暴れろ,喚きたければ喚け。
        狂って,狂って,狂いまくれ。
        狂人は必ず容貌を失い自滅する。
        俺はそれを待つ。新選組のために,
        それを待っているのだ。
        鴨,もっと狂え,もっと狂え!
        そのとき俺は,貴様を斬る。
        新選組の誠の旗のもとに,貴様を…斬る!」


(了)
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第1話…虎徹という名の剣(『新選組血風録』)



▼スライドショー(リンク)
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★モノクロ画像を少しだけカラー風に光源染色★

▼元治元年六月五日(1864年7月8日)の池田屋事件が,物語の冒頭からくる。その仔細について,この場面では特に触れてはいない。
大雑把な流れとして,新選組が池田屋(と,「丹虎【タントラ】」四国屋)へ襲撃する直前,祇園会所で会津藩及び所司代の指示により,待機している場面から始まる。事件の経緯ではなく,池田屋襲撃の際,近藤勇が如何なる剣を振るっていたか…が,焦点となる。

※池田屋事件とは,
祇園祭の頃,京都三条木屋町の池田屋に集結した長州・土佐藩士ら尊王攘夷派の22名が計画した京都御所焼き打ち計画を,新選組の襲撃によって阻止した事件。
※京都焼き打ち計画とは,京都御所に火を放ち,その混乱に乗じて公家の宮様(中川宮朝彦親王)を幽閉したうえ、徳川慶喜はじめ,会津藩京都守護職・松平容保を暗殺し,帝(孝明天皇)を長州へ連れ去る計画。


前回の放送のとき,この第1話については画像とシナリオで触れ,過去の恋夜のブログ記事にシコタマ載せてあるので,人物紹介画像などは割愛し,今回は,文字で真面目に記載します。

(第1話)

▼池田屋襲撃の際,近藤の帯刀した長曾根虎徹(ナガソネ コテツ)の斬れ味は凄まじかった。
近藤は,かつて,江戸の「試衛館」(しえいかん)道場の主であったところ,清河八郎の浪士組募集によって京へ上る直前,「おみね」という若い武家風の女から,僅か二十両で買い受けた贋(ニセ)虎徹を,本物の虎徹だと信じ込む。


(回想)
▼ニセ虎徹とはいえ,その刀のもとの持ち主であった,おみねの父は,
浪人暮らしの赤貧の身で,病床に伏せていたが,もとは武士であり,
家老の不正を暴いて失脚したという過去の経緯があった。

刀には,その気骨ある武士の誇と魂が宿っていた…(のだと思う)。
そんな父との長年の浪人生活に困窮したおみねは,父の刀を売って金に変えようと刀屋を訪れた。

たまたまその刀屋に,近藤がかつて二十両で虎徹を求めに来ていたこともあり,おみねは,虎徹を欲しがっている近藤のことを紹介される。

若干,躊躇するおみねだが,刀屋からは,近藤が刀の鑑定については素人同然なので,ニセモノを本物だと言って売っても気付かれないから大丈夫だと勧められ,どうしても金が要り用だったおみねは,刀屋の言うとおり,近藤の道場へ赴き,ニセモノを本物の虎徹であると偽り提供する。

欲しかった「虎徹」が,工面して支度した二十両で手に入る,というので,近藤は子供のように喜び,虎徹を買い取った。
が,その場にいた土方や沖田は,本物の虎徹が百両以上することから,僅か二十両で売りつけた刀など,本物であるはずがない,と,勘付いていた。

土方は,帰り際のおみねを斬らんばかりに睨みつける。
しかし,大喜びの近藤を可哀想に思って心に留めたことを,ちょうどそこへ来た沖田に話す。

近藤が虎徹を二十両で買い取ったことを聞きつけた山南敬助も(同じ道場仲間で博識),あとから来て憤慨するが,土方は,あんたが買った刀ではないと言い捨てる。


▼おみねの父は,刀を本物の虎徹と偽って売ったことを,おみねから聞いて激怒する。

おみねも,武家の娘として,年老いた父の代りに人を欺いて金を手に入れた行為の屈辱と恥を一身に受けたことを告白し,自らを責める。
そして,以後,働いた末に,本物の虎徹を近藤に届けることを父の前で誓った。


▼新選組の結成間もなく,京都の豪商鴻池の塀の上から出てきた盗賊らを退治した近藤・土方・沖田。
(沖田「私は犬に詳しいから啼き声でわかる」…(#^.^#)いつもココで爆ッ!(^^)!)

乱闘の際,初めてニセ虎徹を使った近藤は,「よく斬れる…」と,その斬れ具合の良さと手ごたえを実感し,流石に本物は違う…と感心する。
土方と沖田はそれを見てニコちゃん…(^^ゞなんかホノボノしててカワイイ。


▼その後,近藤が鴻池から褒美に貰ってきたのが,これまた虎徹だった。
土方と沖田は,既に近藤がニセモノを入手していることを承知しているため,本物か?…(゜o゜…と,一瞬,疑いの眼…(^^ゞ。


▼刀の目利き(鑑定)に詳しい斎藤一を呼ぶ。
鴻池から貰った虎徹が,正真正銘本物であることを確認する。
虎徹を二つ持てる身分になったと喜ぶ近藤。
ある日,今度は本物の虎徹を身に帯び,土方と共に市中を歩いていたところ,再び黒覆面の賊らに襲われる。

抜刀した土方は相手を斬り伏せるが,近藤は,斬っても斬っても相手が倒れず,何故かニセ虎徹のときと同じように斬ることができなかったため,俄かに動揺する。

屯所へ戻った近藤は,憮然として斎藤を呼びつけ,本物の虎徹を「ニセモノだ!」と言い放つ。
斎藤は斎藤で,刃こぼれした本物の虎徹を確認するなり,斬った相手が鎖を着込んでいたからだと言って笑ったが,近藤は尚ニセモノだと言い張る。斎藤としても,これには少し怪訝な顔で言い返そうとするが,土方が遮る。

近藤は,刀架にあるニセの虎徹を掴んで鞘から抜き,こっちが本物だ…と,また思いっきり信じ込む…(^^ゞ。

土方は,一度心に決めたことを曲げない近藤の性質を,子供の頃から良く理解していた。近藤が信じているほうが,本物の虎徹である…と。そして,それは,新選組を象徴する唯一の刀であると。


▼やがて,おみねが江戸から新選組の屯所を訪ねてきた。
おみねは,ニセ虎徹を売った経緯を打ち明けようとするが,対面した土方は,おみねに冷たい。

土方としては,親友の近藤を騙した者を許す気はなかった。
しかし,おみねとしては,苦しい胸の内を訴える。
既に他界した父は,最期まで刀のことを責めて逝ったこと,
当時の土方の目が心を突き刺し続けたこと,辛さに耐えてきたことなど…
そして,身を汚してまで金を貯め,入手した本物の虎徹を持参するため江戸から京へ来た…と。

それを聞いた土方は,ようやく,おみねの健気な誠意を感じ,京までよく届けに来てくれたと礼を言うが,その刀を近藤には取り次がないという。
驚くおみねだが,土方は,なお続けて言う。

土 方「あのときの刀は,あれでいいのだ。
    あれは虎徹だ。あの刀は虎徹だった」
土方は,戸惑うおみねを遮るように続ける。
土 方「あれは近藤さんにとっては,なにものにも勝る虎徹だ。
    新選組局長・近藤勇の刀は,新選組の象徴だ,
    その刀は一つだ,虎徹はひとつあればいい。
    その刀がなんであれ,既に近藤さんにとっては,
    それが虎徹なのだ。
    それは信念のようなものだ。近藤さんはそういう人だ。
    俺には良くわかっている」

(ニセモノだろうがなんだろうが,どうでもいいのだ!…
それでいいのか?(-_-;…それでイイノダ!バカボ~ンのパパ~?)

土 方「自分の命を全て懸ける,俺も近藤さんも,
    男の一生の全てを,新選組に懸けているのだ。
    自分の心に決めたことは,もう変えることはない。
    ちょうど,あの刀が虎徹だと思いこみ,
    信じきっているのと同じだ」

こう告げた土方は,改めて,おみねの持参した刀を手にし,「新選組として買い取る」と言い,それまでのおみねの心情を察し,「苦労したらしいな」と,優しく労いの情を見せる。

おみねは,胸のつかえが下りたように,その場に泣き崩れた。


▼ラストシーン。
池田屋から凱旋する近藤,土方ら新選組が,誠の旗を翻して市中を歩み来る。激戦を制した近藤。その腰に差したる虎徹は,折れも乱れもせず,
整然と誇らしげに,新選組を象徴する存在となった。

(第1話…完)

結局長くなっちゃったゾ…省略したかったけど,
最初だし,このお話大好きだし,
省略デキないヨ~(-_-;~次は手を抜くカモ…?
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