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第16話…襲撃木屋町二條(『新選組血風録』)





(第16話)

▼土方の解説
慶応元年の暮,新選組は,本営を西本願寺より不動堂村に移した。
倒幕佐幕の闘いは,いよいよその激しさを加えていった。
新選組もまた,新たなる事態に備えて,飛躍的な発展を計らねばならぬ。
幹部は八方に飛んで,強力精悍なる隊士を集めていた。

▼隊士募集に近江の田舎道場へ出張した井上源三郎は,
調役の大石と共に,四名の若者を連れて帰還した。
その中の一人,牧 平馬は,故郷の恋人・志乃に手紙を書き,
新選組隊士として出世した暁には,京へ志乃を呼び寄せる約束をする。
牧も志乃も,互いに身寄りがなく,将来は夫婦になる約束を交わしていた。

▼見習い隊士の教練係を任された大石鍬次郎の指導は厳しい。
「一旦こうして入隊した以上は,一切の勝手や我侭は許されない,
聞いているのか!」と喝を入れる大石。
その大声を聞いた沖田は,土方と近藤のいる部屋へ来るなり,

沖 田 「始まりましたよ」
土 方 「なにがだ」
沖 田 「新入隊士の鬼係,大石鍬次郎さんのシボリが
     始まりましたよ(笑)」
土 方 「(笑)総司,やっている大石君は,あれで一生懸命なのだ。
     一応,選んで連れて来たものの,
     海のものとも山のものとも判らない浪人上がりや郷士達,
     それに,中元崩れやヤクザまがいな者まで混じっている。
     それが短期間のうちに,どうやら新選組隊士らしく
     恰好がつくのも,大石君独特の教育のおかげなのだ。
     それをお前が横から,その顔でニヤニヤ冷やかしていては,
     締りがつかんぞ」
沖 田 「別に,冷やかしちゃいませんがね(笑)」
近 藤 「いやァ,まあいい。しかし,井上君は流石に苦労人だ,
     先のことを考えて,人を探して来る。
     今までどこの藩にも属したことがない,
     浪人の垢にも染まっていない,
     新選組生え抜きの隊士を育てるには,
     そういう若い人たちが適任だ。
     五年先,十年先にはその人達が,
     新選組の中堅として活躍をする…」
沖 田 「十年先にも,新選組なんてありますかねえ」

振り返った近藤は,沖田を睨みつける。
しまった!とばかりにうつむく沖田。

土 方 「総司,もう行け,暇潰しなら,
     自分の部屋で菓子でも喰ってろ」
沖 田 「はい,はい」

と,外から大石の名乗る声がする。

沖 田 「噂をすれば影だ,鬼の影だな」
土 方 「(叱るように)総司」

土方は,大石に入るよう促す。
大石の報告では,見習い隊士のうち,実践の経験の全くない者が六名ほどいるため,彼らに襲撃戦闘の経験をさせたいとのこと。

▼井上は,稽古に熱心に励む牧を見て満足し,大いに期待する。
大石も剣術の腕前を褒めていたと言って,牧を励ましてやる。

▼牧は,志乃が京で働けるよう店を探していた。
鍋物屋の店先で,井上と沖田に偶然会った牧は,
彼らと一緒に飯を喰いながら,事情を話す。
井上は,牧の恋人の勤め先を,適当な店に口添えしてやることにする。
好意に感謝した牧は,一生懸命精進することを誓う。

▼ある晩,不逞浪士の襲撃に八番隊と四番隊を率い,土方が出動した。
大石は,実際の襲撃を体験させるため,見習い隊士三人を連れて行くことにした。銃を発砲する不逞浪士らが追い詰められて逃げて来たところを,
大石が進み出て斬り伏せたあと,見習い隊士三名に,とどめを差すよう命令する。しかし,既に虫の息で倒れている浪士を前に,牧だけは,とどめをさすのを拒否した。

▼屯営へ戻った土方は,近藤と井上の前で,襲撃の結果を報告する。
五人は討ち取ったが,四人ほど取り逃がし,いずれも鉄砲を持って逃げた。その行方は,所司代が追っているという。井上は,付いて行った見習い隊士のことを訪ねる。と,そこへ大石が来て,見習い隊士についての報告をする。三名のうち,二名は合格だが,牧平馬のみ,「命令違反」と「戦闘意志の不足」で,謹慎処分にしたという。井上は,血相を変えて牧のいる謹慎部屋へ向かい,事情を聞く。

「重傷を負って立てない相手を,何故斬らねばいけないのか」

と自己主張する牧は,自分が本当に隊士として駄目な男かどうか,もう一度試して欲しいと井上に懇願する。困った井上は,その後,大石に話をするが,大石の態度は硬く,井上は声を荒らげ抗議する。

井 上「しかし大石君,武士の情けというものがあるだろう
    (珍しく怒鳴る)」
大 石「それは一人前になって言えることです。
    牧君達は,まだ一人前ではない。
    井上先生,武士の情けで,闘いは勝てますか!
    倒幕浪士は,武士の情けで,幕府を向いてますか!
    奴らは手段を選ばない,目には目,歯には歯です!
井 上「それとこれとは,あんた,話が違う!」
大 石「同じです! だいたい新入隊士達は,
    ただ,直参に取り立てられるとか,給与がいいとか,
    そんな甘い気持ちで入って来る者が多い!
    私はその甘い考えを,叩き直そうとしているだけだ!(大声)
    倒幕佐幕の闘いは,武士と武士との闘いではない!
    倒すか倒されるか…,
    ただその結果があるだけの闘いではありませんか!」

言葉に詰まった井上は,大石の後ろの廊下で立って聞いていた沖田に聞いてみる。

沖 田 「よく判りませんがね…要するに…」
井 上 「要するに何だ!(大声)」
沖 田 「やめときましょう,言うと誰かに叱られそうだ」

そこへ土方と近藤が来る。

土 方 「近藤さん,どうする」
近 藤 「私は,牧平馬君が,士道に背いたとは思わない。
     あるいは武士として当然だったと言える。
     しかし,大石君の意見もまた,もっともである。
     従って私としては,この際,牧君の意思に任せたいと思う。
     牧君はまだ見習い中である,
     この際,本人が除隊したいと申し出るならば,
     許してもいいと思う。歳さん,どうかね」
土 方 「前例はないが,局長として許可するなら,
     それもいいかも知れない。井上さん,いいですね」

井上は困った顔をして押し黙る。
その後,井上は,牧の意向を聞いてみたが,
牧は新選組を離れないという。

「ひとたび志を立てた以上,私は最後までやり抜きます」

牧の意志は固い。

ちょうどその頃,新選組の屯営に,志乃が訪ねてきた。
応対に出た井上は,牧が謹慎中だとは言えず,公用で外出中だとごまかし,事前に口をきいて手配した店の手代と共に,志乃のために用意した京都の勤め先へ行くよう勧める。井上は,ちょうどそこへ来た沖田に,新入隊士を集めるのは難しくて,こりごりだとぼやく。


▼二條木屋町の料亭に鉄砲を持って潜んでいる浪士の情報が所司代より入り,土方はらは再び出動することになった。井上は,土方に,牧を連れて行っていいかと聞く。土方は,これを許可した。井上は,牧の謹慎処分を解き,出動に参加させるにあたり,明日は志乃に会えるぞと言って励ます。

▼不逞浪士達が隠れている木屋町二條の料亭に到着した土方ら新選組は,
既に手入れが回ったと察知した浪士達が,近くの長州屋敷へ逃げ込むのを阻止するため,襲撃を強行する。銃を持った浪士達を料亭の表と裏から挟み討ちにするにつき,まず,土方一人が料亭にいる彼らの前に行き,役儀によって連行する話をする手はずにしたが,そこへ向かう途中,浪士達が料亭横の川伝いに逃げるのを目撃した土方は,細い路地の裏手へ回り込み,そこへ走り来る浪士達の前に立ちはだかり,既に新選組が周りを包囲しているため,無駄な抵抗はせず鉄砲を捨てろと怒鳴った。

が,浪士達は,銃を構えたまま,細い路地をジリジリと前進する。
土方は咄嗟に物陰に隠れるが,浪士達がすぐそこまで迫って来る。
土方の隠れた場所から少し離れた後方には,
井上や大石ら数名の隊士がいた。
暫し,こう着状態であったところ,
井上の横に控えていた牧が不意に飛び出す。
井上や大石は,銃を持った浪士達の前に突進する牧に,
背後から「やめろ! 伏せろ!」と叫んだが,
牧は勢い抜刀し,鉄砲玉のように相手めがけて突撃する。
慌てた浪士達が後退しながら放った数発の銃弾の中をかいくぐり,
牧は,なお勇猛に前進し,浪士らに斬りかかっていった。

▼屯営でひとり待つ近藤に,土方は,不逞浪士四名を全て討ち取ったと報告する。

近 藤 「御苦労,味方は」
土 方 「一人…一人,死んだ」

その後,牧の死体が戸板で運ばれてきた。
井上は,近藤の前で牧の顔の白布を少し上げ,近藤に確認のためみせた。
無言のまま,じっと耐える井上をはじめ,重苦しい雰囲気の隊士達の姿があった。

▼土方は,後日,屯営を訪れた志乃に面談する。
志乃は,牧の行方を聞くが,土方は黙ったまま沈痛な表情を浮かべる。
同じく沈痛な面持ちの井上が,骨壷に納められた白い包を持って来た。
沖田も次いで来る。井上は,遺骨を志乃の前へ差し出す。

井 上 「これが,牧君です」

志乃は声を立てずに「えッ!…」と驚く。

井 上 「昨夜,立派に,闘って,死なれた…」

志乃は,信じられないという顔で,土方のほうを見る。

土 方 「お気の毒な事をした,今更申し上げる言葉もない。
     あなたは,牧君のただ一人の身寄りだ。
     今後のことについては,新選組として,
     できるだけのことをしたい」

これを聞いた志乃は,初めて牧の死を実感し,
押し殺したような声で泣き出した。
土方は,黙礼して,その場を立ち去る。
井上も,いたたまれず,あとを沖田に任せて出て行く。
その場に泣き崩れる志乃。
沖田はじっと黙って見守る。

▼やがて,廊下に佇む土方と,横で力なく座っている井上の前に現れた沖田は,志乃が黙って遺骨を持って帰ったと報告する。
身寄りのない彼女が今後どうするのか,沖田なりに気にかける。

▼土方の部屋に来た大石は,牧の死は自分の処置のためではないかと尋ねる。

土 方 「牧平馬君は新選組隊士として倒れた,君と関係はない。
     君の任部は,隊士を鍛えあげることだ。
     鍛えて,鍛えて,鍛え抜くのだ。
     それ以外に考えることはない」

大石は了解して出て行く。
入口附近に,井上が座っている。

井 上 「歳さん,あんたも大変だね」
土 方 「俺は,新選組に命を懸けている」

井上は黙ってうなずく。

井 上 「ワシは,江戸の貧乏道場におったほうが,
     性に合ってたかもしれんなァ」
土 方 「井上さん,あんたにはまた,新入隊士を集めるために,
     出張してもらわねばならない」
井 上 「…」
土 方 「井上さん…,行ってもらう」
井 上 「はい」
土 方 「そして探してもらう,若々しく,強く,精悍な若者を
     一人でも多く,新選組の旗のもとに,集める」

▼井上は,再び新入隊士募集のため出張して行った。

(了)
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