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悩殺旦那と添い寝(#^.^#)


こんな寝顔を見せられた日にゃァ…思わず肉食獣化しちゃうゾ





アサの旦那 「寝てンのに、起こすなよ…」
キャー



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(※↑コーナーに一時停止ボタンあり)…是非、見つめ合って下さいね

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また霊なのか…?







































なんだか木目が不自然にズレてるし…その割れ目から白い手がヌッと出てるみたいに見える…。
反射する素材でもないから周囲の人影じゃないし…
細かく見たら,
モミアゲの長い,侍っぽい人のあたりから,
指のようなものが飛び出してて,
その頭上には,いっぱい小さい顔があって,
ハチマキのようなものをして,こっちを見ている人もいる(新選組の隊士みたいな感じも…)。
侍の下には,テングみたいなヤツもいて,
横には目だけがあって…,
ここまで言うと,恋夜は正気じゃないかも…なんて
思われちゃうかな…単なる目の錯覚か,
撮影フィルム上の傷…かなあ。
PC上ではあんまり見えないかも知れないけど…
カメラの液晶上で拡大したら…(-_-;)そんな具合です。
以前も,栗ちゃまのお写真上で,
いろいろなものを,お見かけましたが…またしても。
でも,あまり良くない赤いモノじゃなくて,
いつも白系だから,こういうのは大丈夫…かな
 
 
 
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暴れん坊の島田さん(1)

http://flash.picturetrail.com/pflicks/3/spflick.swf?ql=2&src1=http://pic80.picturetrail.com:80/VOL1925/11621644/flicks/1/8269173
(時代劇専門チャンネルにて再放送された『暴れん坊将軍』第1シリーズ,№28)

アラスジ…というわけでもないけれど,ちょいと脈略が必要なので記載しときます。


現政権の転覆を画策する金沢塾塾頭ほか門下の者達が,将軍吉宗の命を狙っていた。
同塾の軍学師範である小沼(「オヌマ」…だけ,下の名前はない,島田さんの役(^^ゞ)は,
彼らの意向に同意しかねていた。
ちょうど心持ちの優しい盲目の女・おみよに好意を寄せ始めたことも,
吉宗暗殺計画に加担することを躊躇させる原因となっていた。
そんな小沼をよそに,将軍暗殺計画は実行され,吉宗は狙撃された。
ところが,死んだのは吉宗ではなく,影武者の「榊原市之進」だった。
死亡した市之進の姉こそ,小沼が思いを寄せている,おみよである。

市之進と瓜二つの吉宗は,おみよの弟と勘違いされる。
生前の市之進は,影武者という職務の秘密上,身内や知人の間では,甲府勤番の侍ということになっていた。
久しぶりに市之進(以下「ヨシ市」という)と再会したおみよは,その晩,一緒に自宅へ帰り,
二人で束の間の時間を過ごす。

(恋夜個人が注目せざるを得なかった,問題の場面はここから!)

おみよ 「でも…あなた,甲府の話をしてくれるって…ちっともしないじゃない」
ヨシ市 「なァに,つまらんところさ。山また山で,別に,どうってところじゃない
おみよ 「またそんなこと言って(笑)」


山梨県・甲府市に住む恋夜としては,「ヨシ市のセリフ」が当たりまくっているだけに…(-_-;ちょっとだけ複雑コンチクショー気分…。勿論,見ながら爆ブッ飛んだことは言うまでもありません!(^^)!…別に,どうってところじゃないんだけどねッ!熊もイノシシも出たよッ,最近!




島田さんが出演していなかったら,
栗ちゃまとはまた別の,恋夜の個人的な楽しみとして,
こんなにバカ面白いところを,危うく見逃すところだった!!


島田さん,有難うございます(番組情報を下さった「27年生まれ様」にも感謝!!)


あ,そうそう,お話の続きですが…(早送りして,あんまり見てないけど…大体の(^^ゞ),
吉宗は,配下の者の調べにより,塾頭達が武器を調達する計画を知り,
それに小沼が関与するのを事前に引き留める。
最後に悪い連中が全部斬られてオシマイ…(^^ゞ単純。
あとは,おみよの目を治療するため,一緒に長崎へ向かう小沼であった…ニコニコのエンドでした。
恋夜は,島田さんが,いつ斬られるのか…と思って見てましたが…大丈夫だった

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用心棒の名は「一色 十郎太」・・





晩酌のお供に,栗ちゃまの用心棒などいかがでせうか
…チュウチュウタコかいな~


栗ちゃまの“超スゥエックスゥイ~
”な唇や目許が
たまりませんゼ!





ヒョウタンで酒を飲む栗ちゃま用心棒は,
いつも横側からの眺めが,最高に男のイロケ抜群で

撮影されたスタッフの方や監督さんも,
バッチリ「イロオトコ映え」を把握済み!)^o^(!
といった感があります。
素晴らしい映像を残して下さって,
いつも感謝感激するばかりで~す。
ファンの方々と楽しむためだけなので、お許しくださ~い!

ァ…でも,お酒じゃなくて,
このときは,ナニ飲んでたんだろ…(?_?)…お水かな


あのヒョウタンになりたい!…と,
女性ファンはきっと同じように思うでしょうね~

ニクイゼ、栗ちゃま!

「暴れん坊将軍」の初期の頃は
殆ど見たことがないので,
今後、登場する栗ちゃまの演技が楽しみですね!(^^)!
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クマ注意報!

 
恋夜の住む山梨県は,東京の西隣です。
ド田舎ではなく,適度に田舎です。

でもサ…
熊が出た!
 



















 
 
今ね,甲府市からのスピーカーで,
お知らせがあったの。
「見かけたら,最寄りの警察署,または,
市役所へお知らせください」と(゜o゜)サ。
見かけたら…襲われちまうんじゃない?
ある日森の中熊ちゃん出会いたくないスタコラサッサッサのサ…熊ちゃんに出会いたくない~♪…字余り(-_-;
 

←この人がいれば助かる…
『空手バカ一代』
飛鳥 拳(Asuka Ken)
 
かつて,熊と闘った経験がある。
 
 
 
チェストォー!! …殺せなかったけどね(-_-;!
 
時間を置いて,夕方…
今度は,朝日町のガード下に,
「イノシシが出た」(゜o゜)
が出たのは,恋夜んトコに結構近い,
『♨湯村山』というところだけど,
イノちゃんは,それより更に近い場所だ。
 
でも驚かないよ…前は,すぐ隣の空き家にイノが棲みついてたもん…ガフッ!
動物大集合の甲府市…(゜o゜)オラヤダ…。ァ,今度はサッカーオランダ戦だったね…オランダ…オランウータンはまだ出たことないンダ。
 
いつか出るかな…(-_-;)。
 
 
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用心棒で初登場!(『暴れん坊将軍』第Ⅰシリーズ)出演メモ





この当時の栗ちゃまは,
かつての白黒時代の用心棒のイメージを彷彿とさせつつ,
全体的にはチョイ枯れした(失礼!)チョイ悪系の
オジサマ用心棒ですね(*^^)v。

今回,初めて見ましたが,
基本的に,やっぱり栗ちゃまは,
スポットライトが当たれば当たるほど,
俳優としての本来の輝きが滲み出るようで,
この頃は,少し勤続疲労が表に出て来たとはいえ,
まだまだ寝顔の色っぽいのなんの…(#^.^#),






見ていて…というより,
激写しながらドキドキしちゃった






なので,当然,ストーリーはスッ飛ばし傾向で,
栗ちゃましか見てねえや状態…(^^ゞ。

終わりの5分くらいで,
将軍様のシンさんが悪事を解説するのを聞いて,
恋夜としては,「あっそうなんだ」で,一件落着。

いかんなァ~…脚本は結束先生で,
松尾正武監督作品なのに…スミマセン。

とにかく,『燃えよ剣』の土方さんと同時並行して,
いっぱい撮った画像を見つめながら,
何度卒倒しかけるか…キャー!!イカ~ン!!

恥ずかしながら…画像に感情込めてしまいました…(#^.^#)
爆裂悩殺ボケで,
なかなか前進しないクルクル画像処理…
スジもヘッタクレもないけれど,
イカした栗ちゃまにイカレた目線で,
お披露目していきたいです。

でも,用心棒の旦那って,なんでいつも,
ヘボヤクザみたいなのに雇われてるのかね(-_-

「裏切ったな~」か,なんか親分に言われて,
「表返ったのだ」…言うてるし(^^ゞ。
良心のある用心棒・一色十郎太…
フテブテしくて,なかなか良い!!



時代劇専門チャンネル★2010年6月以降の『暴れん坊将軍』

★栗ちゃま出演予定メモ★

6/09(水) #21 纏は見ていた
6/15(火) #25 素破 天下の一大事
6/18(金) #28 明日に咲いた影の花(★島田さん)
6/23(水) #31 御狩場から消えた女
7/01(木) #37 女の一途に目を醒ませ
7/05(月) #39 琉球渡来の甘い罠
7/07(水) #41 切腹酒呑み代官(★数カット)
7/12(月) #44 鮮血!拝領の剣
7/14(水) #46 天下御免のお年玉
7/20(火) #50 味一番!細腕べんとう
7/22(木) #52 失脚!大岡越前
7/23(金) #53 からくち一番!母子酒
7/27(火) #55 奮戦!いも侍(★左右田一平、西田良さん)
7/29(木) #57 百鬼!一刀両断(★クリチャマス)
7/30(金) #58 江戸一番 桜おどり
8/03(火) #60 太陽だけが知っていた
8/06(金) #63 一六勝負に散った花(★クリチャマス)
8/09(月) #64 槍を持つ手に一番纏
8/10(火) #65 恐れ多くもお茶壺道中
8/12(木) #67 大岡越前 自決す
8/16(月) #69 名刀 誇りあり(★数カット)
8/17(火) #70 三万石よりどじょう(★数カット)
8/24(火) #75 失踪!加納五郎左衛門
9/17(金) #93 呆れかえった武門の意地(★数カット)
9/24(金) #98 狼の里から来た女(★クリチャマス)
10/ 5(火) #105 止めろ!天下御免の暴走車
11/ 3(水) #126 二万両で売った恋(★左右田さん)
11/ 4(木) #127 狼の里に罠を張れ(★数カット)
#57#63#98はクリチャマス。
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新選組前夜…『燃えよ剣』より

  • 2010-06-14 : 燃えよ剣 : 編集✍




  • (第1話)…前回やり損ねたので,これだけ真面目にやっときます。あとは画像遊び!(^^)!

    ▼文久二年,この年,江戸に“はしか”が流行した。
    もともとの発生は,長崎に入港した外国人の船員からだと言われる。
    この国土に,その病原体のなかったために,はしかは,瞬く間に全国に広がり,江戸に及んだ。
    江戸にそれをもたらせたのは,たまたま近畿西国を旅行していた
    小石川伝通院の二人の修行僧であったと云われる。
    そのために,江戸も特に小石川辺りのはしかは,猖獗(ショウケツ※悪いものが猛威をふるうこと)を極めた。

    ▼その小石川に,近藤勇を道場主とする「天然理心流・試衛館道場」があった。偶然通りかかった町奉行所の役人達は,どうせ「田舎剣法」か「ヤクザ剣法」で,百姓同志の喧嘩の仕方でも教えている流派だろうと嘲笑する。

    (解説)
    天然理心流試衛館道場。町の噂の如く,田舎流派である。
    門弟は数少なく,しかも全て,格式高い大流派の道場に入門することを許されない,博徒,中間(チュウゲン※武家の召使の男),あるいは物好きな町人,若者達である。

    ▼町の様子や道場門下の者達の様子を見て来た沖田は,早速近藤に報告する。はしかが猛威をふるい,当分,道場の稽古どころではない。

    (解説)
    試衛館天然理心流の剣士は,道場主の近藤勇のほか,師範代・土方歳三,
    門弟の沖田総司,先代近藤周斎以来の内弟子である井上源三郎の四人だけであるが,ほかに,居候の食客として,北辰一刀流免許皆伝者の藤堂平助,松前藩脱藩浪士で神道無念流免許皆伝の永倉新八,播州明石藩脱藩の天才剣士斎藤一,伊予松山藩の中間崩れで宝蔵院流槍術免許皆伝の原田左之助,もと仙台伊達藩士で千葉周作道場に学んだ北辰一刀流免許皆伝の山南敬助の面々が常に屯していた。江戸でも三流の道場に,何故大流派の剣客達が転がり込んでいたのか理由は不明だが,それもひとえに道場主近藤勇の人徳によるところ大である。

    ▼試衛館道場では,明日の飯も賄えないほど,その資金繰りに困窮していた。土方は金策のため,姉おのぶのもとを訪ねる。その土方を,八王子の甲源一刀流の者達がつけ狙っていた。土方の出立後,近藤は試衛館に来た手紙から,そのことを沖田や井上に話す。役半年前,六所明神の奉納試合で,土方と沖田が甲源一刀流の剣士と対戦し,彼らを総なめに倒したことから,甲源一刀流の名は失墜したが,それを逆恨みした連中が,試衛館道場を目の敵にし,京都から腕利きの剣客を押し立て,密かに復讐を企てているという。

    ▼近藤や井上がそうであったように,土方歳三もまた,武士ではない。
    武州三多摩・石田村の,百姓の出である。金を無心しに来た歳三は,玄関先で,おのぶから,佐絵という村の娘が近く婚礼を上げて京都へ行くのだと聞く。帰る道すがら,ふと立ち止まり,今来た道を振り返る土方は,
    昔,六所明神の暗闇祭りで知りあった(寝ンゴロになった)佐絵のことを,思い出す。やがて再び歩を進めた土方の背に,「歳三様」と声をかける若い女の声が聞こえる。姿を見せたのは,佐絵だった。佐絵は,京へ行く前に,もう一度,土方と話がしたいという。二人が親密になった場所へ来て欲しいと言い渡し,佐絵は去った。

    ▼その日の晩,土方は佐絵に逢うため,社の境内へ向かった。しかし,待っていたのは,甲源一刀流の六車宗伯(ロクシャ ソウスケ)ほか,六,七名だった。六車は抜刀し,土方に真剣勝負を挑む。咄嗟に駆け出す勢いで抜刀した土方は,何人かと斬り交わす。そこへ現れ出た剣客・七里研之助は,相手が土方歳三であることを確かめるや,おもむろに抜刀。眼前の七里と対峙する土方。背後から六車が斬りかかる。と,そこへ来たのは沖田だった。沖田は土方の腕を掴んで走り去る。

    ▼何故来たのかと尋ねる土方。沖田は,先ほど襲ってきた者の中に,京から来た七里研之助という凄腕の剣客がいることを伝える。これを聞いた土方は,再び闇の中へ駆け出して行った。

    ▼土方が向かったのは佐絵のいる屋敷だった。何気なく外へ出て来た佐絵は,土方を見て動揺する。後ずさりして縁側に倒れた佐絵の着物の裾を,土方は刀で押さえ,

    土 方 「女狐め,殺しはせん。京都へ行くそうだが,
         多分,お前を連れて行く,あの男に伝えておけ。
         俺は逃げも隠れもせん。
         斬り合いがしたければ,いつでも訪ねて来い。
         一人と一人で,勝負をしてやると」

    ▼土方が去った直後,七里が来た。
    佐絵は着物の裾を乱したまま呆然としていた。
    それを見た七里は,土方が来たのかと佐絵に尋ね,暗闇を目で追った。

    ▼年が改まっても,江戸の疫病は,少しも衰えをみせることはなかった。
    特に小石川一帯は,文字通り,火の消えたように寂れ果てた。
    「このままでは道場が潰れてしまう」…近藤は,土方や沖田の前で思案していた。そこへ山南が来て,耳寄りな話があるとのこと。

    ▼かつて山南と千葉道場で同門だった出羽の郷士・清河八郎が,公儀幕閣に働きかけ,老中板倉の裁断を経て,武芸練達の士を集めるという。蒼然たる時勢につき,将軍家警護のためというのが名目らしい。清河は,江戸中の道場へ檄文をよこして人員を募集していた。が,試衛館には届いていないと憤慨する近藤に,「おちこぼれということも…」と恐縮する山南。傍で笑う沖田。

    ▼清河のもとへ集まった多くの者達の中には,土方や近藤の試衛館一党のほか,芹沢鴨,新見錦ら一党がいた。人ごみをかき分けて部屋に入ってきた芹沢らに,「乱暴は,よしたまえ」と注意する土方。どこの者かと芹沢に問われ,「天然理心流試衛館道場」と答えると,その名を知っていた新見が薄笑いを浮かべる。

    芹 沢 「新見君,知っているのか」
    新 見 「武州の百姓達が,田んぼの水を取り合ったりするとき,
         流行っている御流派ですよ」
    芹 沢 「(笑)それはいい」

    芹沢一党は,せせら笑って座につく。

    近 藤 「誰だあれは,無礼な」
    山 南 「芹沢鴨ですよ」
    近 藤 「芹沢…鴨?」
    山 南 「日立天狗党の生き残りです。人物です」

    ▼近藤は,清河八郎と共に京へ赴くことを決める。
         攘夷(夷人【外国人】を排斥)を断行し,
         将軍家を警護する浪士団に参加するとの意向を
         道場の面々に告げる。
         試衛館道場を閉じることを決意した近藤は,
         皆の意見を聞く。
    土 方 「無論,行く」
    近 藤 「有難う。総司」
    沖 田 「私は,近藤先生と土方さんの行く所なら,
         どこでも行きますよ。
         もっとも,あんまり酷いところは嫌だけど」
    近 藤 「そうか。井上君」
    井 上 「は…,わしゃァ,お伴するだけでございます」
    山 南 「私も行きましょう。これからは京都が日本の中心だ,
         江戸にいては駄目だ」
    永 倉 「武士として,千載一遇の好機だと存じます」
    藤 堂 「同感です。私も加盟します」
    原 田 「いっちょ,やるか。腕がなるぞ」
    近 藤 「斎藤君は?」
    斎 藤 「加盟します。しかし,
         身辺に整理をすべきことがありますので,
         暫時,時間を戴きたいと思います」

    ▼土方は,再び姉のもとへ行く。

    土 方 「俺は,俺の一生を,その一振の剣に任せられるような,
         刀が欲しい」

    「バラガキと言われた歳三が,立派な侍になってくれると嬉しい」
    おのぶはそう言って,金の包を歳三に差し出す。

    ▼土方は,刀屋へ行き,「二代目・和泉守兼定(イズミノカミカネサダ※通称「之定」ノサダ)」を所望するが,二代目は無いと言う。大業物の大名刀は値が張るとのこと。店を出た土方は,突然の通り雨に,とある軒先へ入る。
    と,そこは古道具屋であった。

    ▼中へ入ると,盲目の老店主が一人座している。
    土方が,和泉守兼定に心当たりはないかと聞くと,その店にあると言う。
    七十歳の頃,盲目となったその店主は,以後数十年,刀の目利きをしており,その評判は嘘ではないらしい。土方は,刀を見せてもらうが,
    砥ぎもろくにされていない刀身に,「これが和泉守兼定か」…と,憤慨する。が,店主は,それが二代目「之定」であり,砥いでみれば誰にでもわかると言う。土方は,雨上がりの夕陽に照らされた刀身の異様な輝きを見て,その値を聞く。店主は,五両だと答える。その刀は,それまで一度も大名や武家の所有とならず,長らく出羽国の旧家に眠っていたものを,数百年後に盗賊が盗み出し,之定と知らず,刀屋に持ちこんだのだという。

    土 方 「まことなら容易ならぬことだ。その筋に知れたら,
         おぬしの腕にも縄がかかるぞ。何故,俺に打ち明けた」
    店 主 「見込んだのさ,盲(メクラ)の勘でね,お前様を,見込んだのさ。
         もしかすると,その刀は,何百年もの間,
         本当の持ち主を探していたのかも知れない。
         それが,お前様だったような気がしただけでございます。
         五両が不足なら,ただで差し上げる。持って行きなされ。
         道具屋を何十年もやっていると,
         たまにはこういう道楽もしてみたくなるものさ」

    ▼土方は,砥ぎを済ませた之定を,近藤や沖田に見せた。

    近藤は「流石に和泉守兼定だ」と感心する。

    沖田も刀を見て「私もあやかりたい」と言い,
    道具屋を紹介して欲しいと頼む。

    ▼土方は,沖田と共に道具屋へ向かった。
    が,道具屋は閉まっていた。
    近所の男によれば,ぽっくり死んだとのこと。

    沖 田 「こういうこともあるんですね,やっぱり…」
    土 方 「やっぱり,何だ?」
    沖 田 「その刀は,土方さんと一緒になるように,
         出来ていたんですね」

    ▼道場へ戻った土方は,井上から一通の手紙を受け取る。
    中を見た土方は,腰の刀を之定に変え,外へ出て行く。その背に井上は,道場最後の晩に皆で一緒に飯を喰うから忘れるなと叫ぶ。

    ▼土方を除き,近藤らは別れの盃を酌み交わす。そこへ町医者の「裏通り先生」も来る。

    ▼その頃,土方は,七里研之助と対峙していた。
    辺りに目を配る土方は,七里に「一人か」と聞く。
    黙って抜刀する七里は,勢い土方に斬りかかる。
    が,土方の之定は七里の腕を斬った。
    血の滴る刀身を見つめ,

    土 方 「斬れる,俺の刀だ。これが,俺の刀だ」

    ▼その後,土方は,試衛館道場へ戻った。
    江戸の最後の晩を陽気に飲み明かす面々。
    沖田は土方の袴の裾に血がついていることを指摘する。
    土方は,「江戸の血を付けたまま,京都へ行く」と,決意を滲ませる。

    (解説)
    文久三年二月,春はまだ浅い江戸の町を,
    九人の男達は,京へ向かって去って行った。
    これから行く京都に,どんなことが待っているのか,
    九人の男達は知らない。
    ただ,江戸の町道場が一つ潰れた。
    はしかとコレラが町道場を潰したのである。
    はしかとコレラが,この男達の運命を変えたとも言える。
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    島田さん,相手にしちゃダメデスだ~(-_-;)。


    島田順司さんとこのブログが,やっとこ普通の記事になるかと思いきや,
    また変なのがちょっかい出してきてるみたいね…誰だ,全く(-_-;!!
    相手はどんな人か,どんな「怒りの意見」をぶつけているのか,
    全く見当もつかないのですけど…おそらく,島田さんが,トラブルの終結宣言をしたのが気に入らないんでしょう。
    屈折した形で接触を持とうとする人物は,
    なにかしら相手を怒らせるなりして,
    再び興味・関心を惹こうとしているわけで,
    そんな徴発に乗ること自体,向こうの思うツボなわけです…
    気になっても,絶対相手にしない姿勢が一番いいと思うんですけど…。
    島田さんは,とても真面目で正直な方だから,
    なんとか球を打ち返そうと,必死な思いで打席に立つ。
    でも,相手が,ハナから頭にデッドボール投げてくるような輩じゃあ,
    一発退場して貰うよりほかないです…。
    相手の意見なんざ,金輪際,一文字も見る必要はないと,
    恋夜は思います。
    真面目な話,
    これ以上,島田さんの俳優としての名誉を棄損されるような事実がある
    とすれば,証拠を整えた上で,法的手段を検討されたほうが,
    いいかも知れませんね。
    いくらネット上で名前を伏せていても,
    その道のプロが照会請求すれば,正体は割れちゃうもんね。
    何処の誰だか知らんけど,やりたいだけやってこい!
    全部証拠にしてやる…くらいの意気込みでいて下さいね,島田さん。
    もうひとり悩んで,疲れたりしないで。堂々巡りするだけだもん。
    時間の浪費でしかない。
     
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    第26話…燃える命(『新選組血風録』)※最終回




    ▼スライドショー(リンク)※モノクロ画像を独自に光源染色カラー化
    http://flash.picturetrail.com/pflicks/3/spflick.swf?ql=2&src1=http://pic80.picturetrail.com:80/VOL1925/11621644/flicks/1/8247976

    (第26話)

    ▼明治九年,東京府下の石田村。
    土方の生家を斎藤一が訪ねる。

    名を変え,身を隠して生きていた斎藤は,不審がる家の者に,
    「もと新選組の三番隊組長」だったことを明かす。

    明治維新から数年経過したが,土方の家には
    いまだに新選組や土方に恨みを持つ者が苦情を言ってくるという。
    斎藤は,土方の位牌の前で祈りを捧げる。

    (斎藤の声)
    斎 藤 「土方さん,あんたはよく闘った。実によく闘った。
         伏見から江戸,甲州から流山,やがて,日光,会津,仙台,
         そして,とうとう北の果ての蝦夷の地まで。
         だが,あんたは決して負けなかった。
         函館を攻略した榎本軍の中にあって,
         あんたは,ただ一人の常勝将軍でさえあった」

    (時代を遡る)
    ▼明治元年十一月一日,榎本武揚は,箱館(現:函館)を占領し,
     北海道独立を内外に宣言した。
     土方歳三は,函館政府の陸軍奉行並に推され,
     五稜郭に屯営を構えた。

    ▼土方の部屋に来た斎藤は,箱館政府の先行きを案じていた。

    斎 藤 「榎本は,幕府の海軍副総裁だから,
         独断で幕府の手持ちの軍艦を動かし,
         我々を乗せて,ここに立てこもったというだけでしょう。
         箱館独立を宣言しようがしまいが,遠からず官軍は,
         この地に押し寄せてくると思うんですが」
    土 方 「斎藤君,その通りだ。蝦夷の冬は,雪が深い。
         江戸の官軍が,我々を放っておくのは,
         ただそれだけの理由だ。
         年が変わって,雪解けの時期になれば,また戦だ」
    斎 藤 「今度は,ちょっとばかり大変でしょうねえ」

    (斎藤の解説)
    私はその時,土方さんは,わざわざこの北の果てに,
    死ぬために来ているのではないかと,そう思いました。
    いや,死ぬためというよりは,死に場所を探しに来たのではないか
    と思いました。

    ▼箱館は,安政以来の貿易国であり,
     年間数十隻を超える外国船が出入りする地である。
     「いかに官軍といえども,迂闊に攻撃はできない」と,
     楽観視する榎本は,
     無敵の戦闘艦「開陽」を装備する強力な海軍があると自負していた。
     榎本以下の閣僚達が懇談する席に,土方の姿はない。

    ▼土方は,一人外へ出て,夜空の星を眺めていた。
     ふと,「歳さん」と呼ぶ近藤の声が聞こえる。
     あの世から現れ出た近藤に,土方は,待っていたかのように,
     「遅いぞ近藤さん,随分,待たすではないか」と微笑む。
     近藤は,源さんや原田に会ったことや,
     山崎とその妻の話の仲睦まじい様子などを聞かせる。
     ひとしきり,京都・大阪の話がはずんだという。

    近 藤 「みんなで一度,京都へ行ってみようということに決まった」
    土 方 「京都か,俺も行きたいな」
    近 藤 「お互いに,あの京都の五年間だけが,
         一生のうち,ひどく長かったような気がするな」
    土 方 「長いなんていうものじゃない,京都の新選組の五年間が,
         俺達の全部だったよ」
    近 藤 「うん」
    土 方 「正直言うと,俺は…,土方歳三は,
         もう京都で死んでしまったように思っているのだ。
         あんたもそうだ,流山で死んだんじゃない,
         京都で死んだのだ」
    近 藤 「うん,そうとも言えるな」
    土 方 「俺達だけじゃない,沖田もそうだ,
         いや,みんなそうだ。
         新選組を作り,新選組を育て,新選組を大きくした,
         あの京都の町が,新選組に生きた者にとって,
         永遠の地になったのだ。
         あの町に,我々の生涯の夢も,生きがいも,
         何もかも全て,注ぎ込んでしまったのだ」
    近 藤 「そうだったなァ」
    土 方 「こんなフランスの軍服を着て,
         函館政府の陸軍奉行並とか言われているが,
         俺にはやはり,新選組副長の方が似合うよ」
    近 藤 「だろうが,もう誰も,そうは呼んではくれまい」
    土 方 「うん」
    近 藤 「歳さん,誰か呼んでいるのではないか」

    ▼土方を呼んだのは,野村利三郎ほか五,六人の,
     新選組生き残りの隊士達だった。
     野村達は,箱館の酒楼で,京都から来た女に逢ったと上機嫌で話す。
     その女から,是非,土方も連れて来るよう言われたので,
     今度は,斎藤も連れて,一緒に行こうと盛り上がる。

    ▼暴風雨の晩,土方は,斎藤と二人,酒を酌み交わす。
     斎藤は,「今更京都の昔話を聞いても仕方がない」と,
     応じる様子はない。
     「相変わらずだな」と微笑む土方。

    ▼翌朝,主力艦・開陽が沈没したとの知らせが入る。
     榎本は,緊急会議を開き,
     今後いかに東京政府軍と対抗すべきかについて話し合う。
     陸軍奉行としての土方の意見は「闘うまでだ」。

    ▼翌明治二年三月,東京政府は箱館攻略を決議し,
     甲鉄艦以下,八隻の北征艦隊を編成。陸兵を満載して北に向かった。
     同時に在奥州の官軍もまた,一斉に北征の行動を起こした。

    ▼土方は,閣僚会議の席で,
     「碇泊中の敵艦隊に舟を乗りつけて奪い取る」
     との作戦を進言するが,
     同じ陸軍奉行の大鳥圭介は,冷笑し,

    大 鳥 「土方さん,失礼だが正気でおっしゃっているのですか」
    土 方 「正気です」
    大 鳥 「まるで八幡船(バハンセン※盗賊の船)のやり方だ,
         そんな戦法は洋式軍事学の中にはない!」
    土 方 「大鳥さん,戦というものは理屈でやるものではない,
         荒井さん(荒井郁之助※海軍奉行),
         海軍は船を動かしてくれればいい,
         敵艦に斬り込むのは,我々がやる」
    榎 本 「我々とおっしゃると…」
    土 方 「新選組の生き残りを連れて行きます」

    ▼三月二十五日,土方は,宮古湾政府軍艦隊に対し,
     接舷襲撃を強行するも失敗に終わった。
     榎本の前で敗戦の報告をする土方。

    土 方 「襲撃に参加した三隻のうち,
         蟠竜(バンリュウ),高雄の両艦は機関故障のため途中脱落,
         止むなく回天一隻をもって突入しましたが
         失敗に終わりました。
         多くの戦死者を出し,申し訳ありません」

    ▼土方が部屋へ戻ると斎藤がいた。
     三隻同時に突入できたら,敵の甲鉄艦は分捕れたかも知れないと,
     ぼやく斎藤は,箱館政府軍の仕官ではなく,新選組の生き残りらしく,
     薩長相手に刀の折れるまで闘うという。
     が,そんな斎藤に,土方は,

    土 方 「君は速やかに当箱館を脱出,内地に渡り,
         身を潜伏して時期を待つ」

    斎藤は冗談じゃないと拒否するが,

    土 方 「いや,いいんだ,君は,もう死ぬことはない。
         この箱館政府が,日本中の政府軍を相手にどう闘ったって
         勝ち目はないのだ。一か八かで,宮古湾を襲ってみたのが,
         我々の最後の勝負だったのだ,
         が,それも終わった。斎藤君,もう君は死ぬ必要はない,
         死ぬのは,俺だけでいいのだ」
    斎 藤 「厭だ,あんたが死ぬなら,私も死ぬ」
    土 方 「命令だ」
    斎 藤 「ふざけるな,何が命令だ!」

    途端,土方の鉄拳が斎藤にとぶ。斎藤,ぶっ倒れて,すぐ起きる。

    土 方 「斎藤君,君は今さっき,何て言った,
         自分は箱館政府軍の仕官ではない,
         あくまで新選組生き残りで行くと言ったではないか,
         その君が,俺の命令を聞けんのか」

    土方は戸棚を開け,立てかけてあった誠の旗を掴んで斎藤に見せ,

    土 方 「この旗の前で言う,脱出しろ!…脱出してくれ」
    斎 藤 「脱出して,私は,何をすればいいのだ」
    土 方 「近藤さんの墓に伝えてくれ,新選組は最後まで,
         誠の旗を守って闘ったと」
    斎 藤 「…(俯き泣く)」
    土 方 「斎藤君,頼む,脱出してくれ!」

    ▼土方は,隊士の野村達が話していた,
     「京都の女」のいる「北里楼」へ出向いた。
     「光枝」という京女は,山南敬助の懇意の女であった。
     光枝は,山南を強行に切腹させた土方に恨みを抱き,
     仇を討とうとその行方を追いながら,蝦夷まで辿り着いたという。
     土方は,内心驚くが,光枝は当の土方の顔すら知らない。
     「五稜郭の者である」と、素性を隠した土方に気を許した光枝は,
     彼を床に誘うが,土方は用事があると言って断る。
     すると光枝は突然怒り出し,身売り女の堕落した本性を覗かせる。
     女が侍を,土方歳三を殺すには,どうすればいいのかなど判るまい…
     泣き叫ぶ光枝。苦い表情の土方。

    ▼明治二年五月,東京政府軍は箱館を包囲した。
     閣僚会議の席で,大鳥は,五稜郭に籠城して闘う作戦を唱える。
     港の弁天崎砲台は健在で,千代ヶ岡の砦もまだ闘える見込みはあるが,
     陸軍部隊からは脱走者が続出していた。
     停戦調停を論ずるよりも,戦闘をいかに続行すべきか…
     思案する榎本は,土方に意見を求める。
     「勝てるつもりで会議をやっているのなら,無駄なことだ」…
     土方は言い捨てる。

    ▼東京政府軍が,箱館港沖に現れた。
     閣僚らは,降伏の条件について密かに話し合う。
     土方は一人,部屋で寝ていた。
     ふと目を覚ますと,部屋の隅に人影を見つけて驚く。
     沖田がいた。






     沖田は誠の旗の前に佇む。
     
    土 方 「俺は京都では,ただ新選組を大きくすること,
         強くすることばかり考えていた。
         今までの何百年,何千年の歴史の中にもなかった
         一つの新しい集団を,俺は俺なりに作った。
         だから,俺は全ての人々の意見を無視した。
         時には,近藤さんの意見さえ,抑えた。
         俺は,蛇のように冷たく,鬼のように厳しい男とも言われた。
         山南さんを切腹させたのもそうだ。
         そんな俺を,本当に判ってくれたのは,
         もしかすると,お前一人だったかも知れん」




    土方は、黙ったまま微笑む沖田の腕を掴み,
    「何とか言え!」と叫ぶ。

    ▼土方の声を聞いた従卒が来て,「どうしたのか?」と尋ねる。
    我に返った土方が掴んでいたのは,誠の旗の布橋だった。

    ▼夜明け前,土方は,従卒に馬の用意をさせ,
     前線を視察すると言って,五稜郭を後にした。

    ▼北里楼へ急ぎ入った土方は,奥へ声をかける。
     出てきた光枝に,「俺だよ」と言う土方。
     光枝はハッとして気が付く。
     間もなく砲撃が始まるため,非難するよう告げた土方は,
     膝を突いて座る光枝の前に,ズッシリと金が入った皮袋を置き,

    土 方 「男も女も,大事な命に変わりははない。
         お前も,まだこれから,新しい生涯が作れるはずだ」
    光 枝 「お客さん,どなたさんどす?」
    土 方 「元新選組副長 土方歳三」
    光 枝 「…(驚きのあまり声を失う)」
    土 方 「お前に討たれるまでもない,
         俺の命が,燃え尽きる時が来たのだ」
    光 枝 「…」
    土 方 「お前がどう思おうと,世間がどう思おうと,
         日本中がどう思おうと,
         後世の歴史がどう思おうと,俺の一生に,悔いはない」
    光 枝 「…」
    土 方 「命を大事にしろ,幸せを祈る」

    ▼土方は,身を翻して出て行く。
     後を追って出た光枝は,俄かに飛んできた数発の砲弾の中に,
     その身を倒す。

    ▼誠の旗が燃えていく。




     明治二年五月十八日,箱館軍は政府軍に降伏した。
     総裁榎本武揚以下,全閣僚達は官軍軍門に降った。
     そして,後年,総裁以下,箱館軍の閣僚の多くは政府に仕え,
     顕職についた。
     箱館軍八人の閣僚中,この戦いに戦死した者は,ただ一人,
     元新選組副長土方歳三だけである。
     時に,年三十五歳。






    (『新撰組血風録』・・完)
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    第25話…流山(『新選組血風録』)





    (第25話)

    ▼土方の姉・おのぶの嫁ぎ先である佐藤彦五郎邸へ,官軍の捜査が及んだ。彦五郎と妻子は,八王子へ逮捕・連行されることになったが,丁度,用事に出ていた女中のおさきは,佐藤家へ戻ったとき,官軍の様子を陰から見て,走り去った。

    ▼土方の解説
    女中・おさきは,巧みに脱出した。
    しかし,おさきは逃げたのではなかった。
    その翌朝,下総流山の我々の屯営に走り着いたおさきは,
    佐藤家逮捕の急を告げた。

    ▼官軍が佐藤家の者達に無礼な拷問をして,流山のことを探り出しはしないかと,近藤は気にかける。「官軍も侍だということを,信用しているほかはない」と言う土方も,なす術はない。そこへ斎藤一が来て,土方の実家に等しい佐藤家の者達の身を案じる。佐藤家は,資金繰り等,創立当時の新選組の大恩人でもあった。土方の姉・おのぶは,彼にとって,幼い頃死別した母親の,代わりのような存在であることを,近藤はよく知っていた。子供の頃から乱暴者だった歳三も,おのぶの言うことだけは,いつもよく聞いたという。斎藤は,八王子に本営を置く官軍の様子を見に行くと言うが,土方は,斎藤がノコノコ出て行けば,新選組の生き残りであることを官軍に知らせに行くようなものだと言って反対する。そして斎藤には,近藤と共に身元を隠して潜伏していることを官軍に知られないよう,隊士達に徹底して内密にすることを指示した。

    ▼土方の解説
    もと新選組局長近藤勇の名が官軍の耳に入れば,
    彼らは復讐の鬼と化して流山に襲いかかって来るのは,
    火を見るより明らかである。
    近藤は既に,甲陽鎮撫隊の時から,
    幕臣大久保大和と,その名を改めていた。
    斎藤は,隊士らの前で念を押す。

    斎 藤 「いいか,我々の隊長は,幕府直参の大久保大和,
         副隊長は同じく幕臣の内藤隼人なのだ。
         いいか,口が裂けても,
         近藤とか土方とかいう名を表に出すな。
         全隊士に徹底させておくのだ。
         官軍は我々を単に治安維持の部隊と見ている。
         その限りにおいては,官軍の攻撃を受ける恐れはない。
         江戸の彰義隊もそうだ。
         江戸市中の治安を受け持っているからこそ,
         官軍の真っ只中にあって,なお,存在できるわけだ」 

    ▼土方の解説
    斎藤一の言うとおり,
    我々は流山で集めたこの郷士や農家の若者達を,
    今すぐ戦闘に巻き込むつもりはなかった。
    彼らの多くは,刀の持ち方一つ知らないのだ。
    ここで訓練し,鍛え上げ,その中の有志の者だけを選んで,
    会津へ連れて行こうとしていたのである。
    そしてその時こそ,新しい新選組がもう一度世に現れる時なのである。

    ▼若い世話役当番隊士の原 市太郎が,敵状を偵察する斥候(セッコウ)を自ら申し出る。父親と酒粕の行商をやっていたという原は,日野・八王子方面について詳しいという。

    ▼土方の解説
    一ヵ月前では,刀の持ち方も知らない行商人の倅・原 市太郎は,
    思いがけぬ大胆さと慎重さを持っていた。
    彼は,官軍の本営八王子に潜入した。
    そして佐藤彦五郎とその妻,その子供達が,
    本営に連行されていることを確かめ,
    更に,官軍の参謀が,土佐藩・板垣退助であり,
    副参謀は,京都陸援隊出身の香川敬三であることを調べ上げた。

    ▼香川は,おのぶとまだ幼い息子に土方の行方を尋ねる。
    口を割らないおのぶだが,背中を刀の鞘で叩かれるのを見た息子は,居場所を明かす。

    ▼土方は,佐藤家の女中おさきを,近藤の妻・つねのもとへ送り出し,
    安否を確認させる。

    ▼土方の解説
    江戸郊外中野村に潜む近藤の妻のもとへ,
    おさきが出発した後,
    八王子を探索していた原市太郎が帰営した。
    原によれば,八王子の官軍の大部分は,
    江戸に移動を開始してるが,
    参謀の板垣と香川はまだ残っているとのこと。

    ▼香川が黙って引き込む男ではないと知っている土方は,更に板橋へ斥候を送る。

    ▼その頃,香川は,大久保大和こそ近藤勇であると板垣に知らせる。
    京都の仇が討てると喜んだ香川は,土方らを皆殺しにしようと,
    討伐部隊として大砲隊を繰り出し,流山を包囲させる。




    ▼近藤はひとり,新選組結成時から現在までの時勢の変化について振り返っていた。

    近 藤 「歳さん,あれは,文久三年の春だったなあ。
         京都の壬生で,たった十三人の浪士団を作った。
         あれから五年,短いと言えば短い,
         長いと言えば長い年月だった。
         私は力の限りやってきた,
         いや,私の力以上のこともやってきた。
         しかし,もう世の中は、
         私の力ではどうにもならないように
         変わってしまったように思うのだが…。
         京都で集めた,あの頃の新選組隊士は,
         動乱に臨んで,剣一筋で,
         己の運命を切り開こうという強者達だった。
         しかし,今,私のもとに集まって来ている
         二百何十人の若者達は,そういう人達ではない。
         歳さん,私は今,しきりに思うことがある。
         それは,一生,功成るために,
         万骨を枯らしてはならないということだ」

    ▼間もなく拙攻から,官軍が江戸川の西に現れたとの報告が入る,
    土方は,若い隊士達と共に,様子を見に行った。
    官軍は,川向かいの小高い丘の上に,四斤山砲を配備していた。
    土方は,すぐ小銃隊を呼ぶよう隊士に伝令を申し向けるが,
    近藤は,隊士の出動命令を出さず,土方にも屯営へ戻るよう指示した。

    ▼屯営に急ぎ戻った土方は,立ったまま,近藤にどうしたのかと聞く。

    近 藤 「どうもせん,歳さん,まあ,座れ」
    土 方 「呑気に構えられては困る。敵は四斤山砲を向けている。
         その援護下に江戸川を渡って来るんだ。
         この屯営に集中攻撃を浴びせられては,
         それこそ伏見の二の舞になる。
         小銃隊だけでも河原に散開さすのだ。
         あの荒野に,横に広く散開させれば大砲による被害は少ない。
         そして,敵が川を渡り始めたら,狙い撃ちにするのだ。
         あの川は,歩いては渡れない。
         敵は舟で渡って来るに決まっている。
         狙い撃ちには絶好の時機だ」
    近 藤 「歳さん,君は,官軍に手向かうつもりか」
    土 方 「なあに,先手を打つだけだ。
         川を渡られては,やりようがない。
         先手を打って,その間に部隊をまとめて流山から脱出する」
    近 藤 「脱出できると思っているのか」
    土 方 「無論,多少の損害は受けるだろうが,やむを得ん。
         出来るだけ多くを守り抜いて,会津へ連れて行く」
    近 藤 「まあ,待て,歳さん。とにかく,私の思う通りにしてくれ」
    土 方 「あんたは,何を思っているんだ!(怒鳴る)」




    ▼と,そのとき官軍大砲の威嚇砲撃の音が,続けざまに聞こえる。
    官軍が江戸川を渡り始めたという伝令の知らせが入る。
    斎藤と隊士の野村は,近藤が消極的なことに気が付いていた。

    土 方 「近藤さん,あんた,いつも人を信じすぎる。
         あんたは正気で,敵と話し合いなどできると思っているのか」
    近 藤 「歳さん,しかし我々は少なくとも,
         官軍に手向かう姿勢を示してはならん。
         あくまで,上野の彰義隊と同じように,
         治安維持の集団であることを明らかにしなければならん」
    土 方 「その官軍は現に,大砲を撃ち込んできているではないか!」

    ▼慶応四年(明治元年)四月四日,仮屯営の前に官軍兵がやって来た。
    応対に出た斎藤と野村は,官軍の軍使から大久保大和宛てに一通の書状を預かる。それを開いて読む近藤。続いて,土方。傍に斎藤と野村が控える。

    土 方 「流山屯営隊長大久保大和は,直ちに単身,
         官軍陣地に出頭すべし。
         然らざる時は,直ちに包囲攻撃す。
         刻限,本日正午,官軍隊長有馬藤太(アリマ トウタ)」
    土 方 「斎藤君,野村君,直ちに戦闘配置だ。
         敵の砲撃が始まるまでに,
         全軍を流山の町の外に散開さす!」
    近 藤 「待て! 私が隊長として命令する!」
    土 方 「!」
    近 藤 「全員,直ちに配置を解き,宿舎内にて待機する。
         直ちに下命し給え」

    ▼斎藤と野村は指示を聞き,顔を見合わせつつ,出て行った。

    土 方 「近藤さん,あんた,何をする気だ!」
    近 藤 「歳さん,私は,官軍の陣地に出頭する」
    土 方 「バカッ!…何を言うんだ,
         向こうは,あんたと話し合いなんかするもんか!」
    近 藤 「そうだろう,今更,近藤勇と話し合っても
         仕方あるまいからな」
    土 方 「で…では,あんた…」
    近 藤 「官軍が,私が近藤勇であることを知っているぐらい,
         私も気付いているよ。
         君の姉さん達が捕まったと聞いた時,
         私は,今日を覚悟していた」
    土 方 「近藤さん,なら,余計行くなッ。
         戦は,まだこれからではないか。
         脱出しよう,戦って脱出しよう!」
    近 藤 「歳さん,やめよう」
    土 方 「駄目だ!」
    近 藤 「今,私が出頭を拒否すれば,
         この屯営に集まっている二百何十人の若者達は
         どうなると思う。そして,あんたの姉さんや兄さん達は,
         どんな目に会うと思う」
    土 方 「そんなことは,今言う場合ではない!」
    近 藤 「いや,歳さん,もうひとつ言うよ。
         私が出頭しなければ,あんた,どうなると思う」
    土 方 「お,俺?…俺は,あんたと一緒に死ねばいい」
    近 藤 「歳さん,違うよ! 歳さんはまだ戦える」
    土 方 「あんただって戦える!」
    近 藤 「今,私が戦えば,この流山の町は,地獄図になるだろう。
         まだ,ろくに刀の握り方も知らない若者達の中に,
         四斤山砲や,ミニエー銃の弾が,雨のように降り注ぐんだ」




    ▼近藤は「いろいろ世話になった」と言って,
    土方に誠の旗を広げて見せる。

    土 方 「近藤さん,頼む,もう一度…もう一度,考え直してくれ。
         出頭しないで済む,別の手段はないか…」
    近 藤 「歳さん,生まれ変わったら,また逢おう…
         そして,また,一緒にやろう」

    ▼近藤は,土方に誠の旗を託す。




    丁度,おさきによって届けられた妻つねの手紙を読み,
    手縫いの着物を着る近藤。
    別れ際、「俺は送らないよ」とそっぽを向く土方に,
    「じゃあ,またな」と言って立ち去る。

    ▼近藤は,廊下にいた斎藤に,出頭後,隊を解散するよう言い渡す。
    外で泣きながら見送る若い隊士達の将来を案じ,
    近藤は皆に別れを告げる。




    ▼近藤は,ふと,沖田はどうしているかな…ふと思い巡らせ,
    「総司!」と,空へ叫ぶ。






    ▼沖田は,その呼び声に反応し,
    菊一文字を持って,勢い外へ駆け出す。
    「近藤先生が呼んでる!」…
    死相の漂う沖田は,辺りを見回して叫ぶ。






    ▼近藤のあとを,土方は追って走った。
    遠くに見えた背に,大声で「近藤!」と叫ぶ土方。






    「歳さん…」近藤は少し振り返るが,また前を向き,歩み行く。






    (了)
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    第24話…風去りぬ(『新選組血風録』)

    ▼新選組血風録「風去りぬ」字幕抜粋編其之壱



    ▼新選組血風録「風去りぬ」字幕抜粋編其之弐



    共有 https://youtu.be/lypptoyXOco
    埋込 https://www.youtube.com/embed/lypptoyXOco


    (第24話)

    ▼江戸・千駄ヶ谷にある植木屋・平五郎の別宅で,
     沖田総司は,その名を伏せて静養していた。

     (土方の解説)

     九月になれば,年号も「明治」と変わる慶応四年始め,
     江戸に戻った新選組は,品川の宿屋「釜屋」に滞在した。
     五年前,江戸を立った時の試衛館以来の同志で,そこに残った者は,
     斎藤一,原田左之助,永倉新八の三人にすぎなかった。
     近藤と私は,新選組再建に奔走した。

    ▼江戸城に赴いた近藤と土方は,老中らに面会していた。
     既に恭順を示す将軍家を賊軍扱いし,
     更なる追い討ちをかける薩長軍の野望に対抗すべく,
     近藤は,洋式銃とその調練を受けた兵士の調達を要請するが,
     老中らは途中で退席する者もあり,落ち着かない。
     近藤と土方は江戸城をあとにする。

    近 藤 「駄目だな,歳さん,毎日同じこと,
         何べん繰り返したら埒があくんだ。
         幕府の重臣どもが,ああも優柔不断な
         腰抜けどもだとは思わなかった。
         こんな時代だ,一刻毎に
         いろいろな情報が入って来るのは当然だ。
         そのたんびに右往左往している。
         あれでは方針も何も立つはずはない」
         新選組の宿舎にしてもそうだ。
         品川に上陸した時,とりあえず入った宿屋を,
         今に至っても変えようともせん。
         『善処する』とは口ばかりで,
         一向に何も決めようとせん」

    土 方 「近藤さん,もうこうなったら,
         なんでもこっちで思った通りやるほかはないな」

    近 藤 「うん」

    土 方 「広い江戸城に,偉そうな顔した重臣達が,
         ただうろうろしているだけで,
         誰一人,責任を持つ者はいない。
         そうとわかった以上,どしどし事を運んで,
         あとで事後承諾を受ければいい」

    近 藤 「そうかなァ」

    土 方 「そうさ,新選組の宿舎も,
         あんな安宿はすぐ引き払って,
         しかるべき大名屋敷へ移ろう。
         俺はもう,目星は付けてあるのだ。
         殿様は逃げ出して,
         空っぽになっている大名屋敷が,
         そこらじゅうにいくつもあるんだ」

    近 藤 「歳さん,どうやらやっと,
         京都にいたときの土方歳三に戻ったようだな」

    土 方 「なあに,もっと前の,試衛館時代の喧嘩屋に戻っただけさ」

    近 藤 「よかろう,やり直しか」

    土 方 「当たり前だ」

    近 藤 「そう思えば気も楽だ,あの頃に比べれば,
         まだ条件は遥かにいいんだから」

    土 方 「悪いと言えば,たったひとつ…」

    近 藤 「仲間が減ったな」

    土 方 「それだけさ」

    近 藤 「うん。おい,千駄ヶ谷へ寄ってみるか,これから」

    土 方 「俺も今,それを言おうと思ってたところだ」


    ▼千駄ヶ谷の沖田のところに姉のお光が来て,食事の世話をしていた。
     猪鍋を勧めるお光だが,沖田は厭々ながら汁をすする。
     そこへ近藤と土方が来る。
     「一日中動かないでいるんだから腹が空くわけがない」
      と言う沖田に,「だから,動けるようになるために沢山喰うんだ」
      と叱る近藤。

    沖 田 「あれ…なんだか,卵と鶏みたいな話になりそうだな(笑)」

     おどけて笑う。 
     
     土方は、新選組を再建し,戦いはこれからだと意気込みを伝える。

    土 方 「頑張らないと,菊一文字に笑われるぞ」

    沖 田 「ほんとだ…」

    (土方、心の声)

     沖田総司の病が,既に最悪の状態に近付いていることは,
     素人目にもわかっていた。
     
     私はその時,切実に思った。
     いや,近藤もそう思ったに違いない。

     せめて沖田の生きている間に,
     もう一度,新選組の逞しく再建した姿を見せてやりたい。

     不死鳥の如く蘇る新選組の力を,沖田の生きる励みにしてやりたいと。


    ▼土方の解説

     新選組は,品川の宿「釜屋」から,
     かねて目星を付けていた大名小路の空き屋敷に引き移った。

     私と近藤は,新選組再建に没頭した。
     そして,着々とその成果は上がった。


    ▼土方は,二百余名の兵を集め,
     幕府の小銃(ミニエー銃)五百丁を確保した。

     斎藤や原田,永倉は,土方のことを,
     「戦にかけては天才だ」と唸る。

     斎藤が土方に「参った!」と思ったのは,
     江戸へ引き上げる富士山丸の中で,皆が船酔いする中,
     ひとり目をギラつかせ,オランダの歩兵操典を
     読みふけっていたのを見た時だという。


    ▼土方の解説
     品川に上陸してから一ヵ月半,新選組は,ようやく生まれ変わった。
     その名も「甲陽鎮撫隊」として・・。


    ▼植木屋平五郎と妻お松は,沖田が新選組の者だと初めて知り,
     驚いていた。

     「甲府城乗っ取り」の出陣前,原田,永倉,斎藤,島田らが
     沖田のもとを訪ねていた。

    原 田 「甲府城を乗っ取ってみろ,甲府百万石は新選組のもんだ。
         そうなりゃあ,我々旧新選組の幹部は,
         みんな大名に取り立てられるって噂だ」


    ▼土方の解説

     蘇ったはずの新選組に,天の時は去り,知の利もまた失われていた。

     甲府城は既に官軍の手に落ちていた。
     「甲陽鎮撫隊」は、戦闘一日にして壊滅した。

     寄せ集めの兵士達の多くは逃亡してその姿を消した。
     
     京都依頼の幹部,島田魁を始め,旧新選組の隊士を大勢失って,
     戦いは終わった。

    (島田魁…また変なトコで死んでる…史実じゃ島田魁,生き残ったけど)


    ▼土方の解説

     官軍は,怒濤の如く江戸に迫っていた。
     江戸は混乱の極みに達した。

     紀州・尾張・水戸の徳川御三家を始め,
     親藩譜代大名も既に徳川征討の軍に加わった。

     一方,あくまで薩長に対して抗戦を唱える会津,仙台など,
     奥羽列藩は戦備を固めるべく,江戸を去った。
     
     恭順派,抗戦派,和平工作派が三者三様に入り乱れる中に,
     「甲陽鎮撫隊」を解散した近藤は,
     密かに人目を避けて江戸郊外「中野村」に身を隠していた。


    ▼土方の解説

     訪ねて来たのは,永倉新八,原田左之助の二人きりであった。

     だが,原田,永倉の二人は,
     もと新選組隊士として来たのではなかった。

     二人は,幕府抗戦派の有力なる旗本達を
     近藤に引き合わせるために来たのであった。

     新選組が,三度,蘇ることはなかった。

     官軍の包囲の中の江戸に徹底抗戦を唱えながら,
     誰もが別々の意見を持ち,別々の方法を選んだ。

     混乱の中に,試衛館以来の同志は,
     近藤と私の前から,あっけないように去って行った。

    近 藤 「歳さん,試衛館から,また武州三多摩時代に逆戻りしたな」

    土 方 「まあな。なあに,初めから,
         あんたと俺と二人きりだったと思えばいいのだ」

    近 藤 「そうだな…しかし,二人っきりで,どうするね,これから」

    土 方 「俺は予定通り,会津へ行くよ。会津の侍は腰抜けではない。
         俺は伏見の戦いのときから,最後までやるのは会津だろうと
         思っていた」

    近 藤 「会津か,それもいいだろう。京都に新選組を作った時,
         会津中将御預かりとなった。
         新選組が無くなってしまった今,また会津中将のもとへ行く。
         そういう運命なのかもしれんなァ」

    土 方 「近藤さん,しかし,あの時と今とでは全てが違っている。
         あの時は,体一つで会津中将を頼った。
         だが,今度はそうはいかん。
         俺は少なくとも,五,六百人の精鋭部隊を引き連れて,
         会津へ行く」

    近 藤 「できるかね」

    土 方 「できるとも,腹案はある。今からすぐ取りかかる」

    近 藤 「歳さん,君は不死身だなァ」

    土 方 「なァに,負けっぱなしでいたくねえだけさ」

    近 藤 「そうか」

    土 方 「総司も連れて行きたいが」

    近 藤 「無理だろうな,あの体では」

    曲がり角に差しかかった近藤と土方は,
    人影が近付いてくるのを警戒する。

    駆け寄って来たのは斎藤一であった。
    「敵に深入りしすぎて到着が遅くなった」と言う斎藤。

    土 方 「よく,生きて残ったな。御苦労だった」

    斎 藤 「何しろ私は,これを御預かりしてますからね
         (懐から誠の旗を出す),そう簡単には死ねませんよ」

    近 藤 「斎藤君」

    土 方 「よく,守ってくれた」

    斎 藤 「もう一度,この旗を立てるまでは,
         私は殺されても死なんつもりです」

    近 藤 「よく言ってくれた,有難う。
         歳さん,誠の旗がある,やろう!」

    (土方の解説)

     誠の旗がある限り,新選組が滅びることはない。

     近藤,私,斎藤一の三人は,三度,新選組を作り上げるべく,
     立ち上がった。


    ▼土方は,まず,兵と武器弾薬,軍資金を集める拠点として,
     下総(千葉県)の流山に屯営を作ることにした。
     そこで隊士を鍛え上げ,会津へ連れて行く計画を立てる。


    ▼流山へ行く前,沖田を訪ねた斎藤は,詰め将棋の本を渡す。
     京都にいた頃,よく日番の時に二人で将棋を指したと懐かしむ。

     広い屋敷で「名人同志の勝負」をしようと話す二人。

    「近いうちにね」と力なく呟く沖田。

    頷く斎藤。

    沖田は,京都に吹いた風が,もう一度吹くのを待っているという。

    間もなく出立する斎藤。

    その背を呼び止めた沖田は,将棋の本をくれた斎藤の心遣いに感謝する。

    斎藤は,沖田に敬礼する。

    沖田も真似する。

    真面目な顔から一転,笑いが溢れる。


    ▼土方の解説

     官軍は,完全に江戸を包囲した。
     だが,我々の必死の奔走も,着々と実った。
     近藤は幕府から再び軍資金を作り出した。

    ▼近藤と斎藤は,先に流山に入って準備を進める。

     土方は江戸に粘れるだけ粘り,江戸城から銃器弾薬をかき集めて
     流山へ送り込むことにした。

    (土方の解説)

     近藤勇は,大久保大和(ヤマト)と名前を変え,
     密かに流山を立って江戸へ向かった。

     江戸に迫りくる官軍の耳に,もし,旧新選組局長近藤勇の名が入れば,
     彼らは池田屋以来の復讐の念に怒り狂うことを警戒したからである。


    ▼沖田のもとへ,姉お光が訪ねて来た。

     庄内藩へ夫と引き上げるため,最後の世話をして去って行った。

     今生の別れと悟る姉弟。


    ▼植木屋平五郎邸へ官軍の兵士達が来た。

     気配に気付いた沖田は,咄嗟に菊一文字を布団の中に忍ばせる。

     外から寝ている沖田を見た兵士達は,労咳だとわかった途端,
     立ち去った。

     菊一文字を手に,廊下へ出た沖田は,
     庭先に土方が潜んでいるのに気付き,声をかける。

    「病人が怖くて,戦はできまいにな」…出てきた土方は,
     流山にいる近藤の処へ行くことを沖田に告げる。

    「当分一人ぼっちだが辛抱しろ」と言う土方に,
     沖田は菊一文字を見せる。

    沖田は「七百年生きてきた刀は,いろんな話をしてくれる」という。

    ふと,吹いてきた風の流れを見上げ,
    「京都で吹いていた風だ・・」と呟く沖田。

    土方の胸は熱くなる。

    別れ際,見送る沖田へ土方は素直に胸の内を話す。

    土 方 「今度生まれる時はな,
         俺は,お前のような人間に生まれたいと思っているよ」

    沖 田 「(微笑)困るなァ,それじゃ。
         だって私はね,今度生まれ変わってくる時も,
         土方さんと同じような人に,
         逢いたいと思っているんですから」

    土 方 「そうか・・,総司,また来る。元気でいろよ」

    最後にそう言って、土方は去った。


    ▼「京都の風が行ってしまった」…

     土方を見送った沖田は,おもむろに菊一文字を手に取り,

    「今度生まれ変わったら,またみんなと逢えるかな」

     空を見て少し微笑み,部屋の障子を閉めた。


     慶応四年五月三十日,沖田総司,死す。

     記録に依れば,その時,臨終の場に,誰も居合わせなかったと云う。
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    第23話…江戸の月(『新選組血風録』)





    (第23話)

    ▼土方の解説
    「釜屋」…江戸品川宿の往来に面した旅籠である。
    慶応四年一月,鳥羽伏見の戦いに敗れ,
    軍艦富士山丸によって江戸に移った新選組の,
    最初の仮陣営である。だが,この旅籠は…。

    ▼新選組の江戸における仮陣営となった旅籠「釜屋」は,
    部屋数も少なく,ゴキブリが這い回るような小汚い宿であった。

    ▼土方の解説
    品川に上陸した近藤は,そのまま神田和泉橋の幕府医学所に運ばれた。

    ▼一ヵ月ほど安静にするよう医者から言われた近藤だが,
    診察だけ受けたら,すぐ皆のところへ行くはずだった…と怒り出す。
    土方は,品川の酷い宿には,近藤の寝るところなんかないと言う。

    近 藤 「どこでも構わん,二,三日のうちに,
         きっと抜け出してやる。品川の,何という宿屋だ」
    土 方 「近藤さん,どうせ抜け出すなら,そんなところに行くよりも,
         すぐにでも行ってやらねばならんところがあるだろう。
         奥さんは,あんたが帰ってきたことを,もう知っているのか」
    近 藤 「いや,その…まだ知らせておらん」
    土 方 「それはいかん,すぐ知らせてやれ,
         いや,俺が知らせてやろう。
         あんたは何年ぶりで江戸に戻って来たと思っているのだ」
    近 藤 「しかし,戦いの最中だ,そういう私事は…」
    土 方 「ハハハ…近藤さん,俺には空気でわかるんだ」
    近 藤 「空気?」
    土 方 「ああ,江戸城は今,逃げ帰って来た将軍様を真ん中に,
         城中,でんぐり返しをするほど狼狽えている。
         当分,新選組が出る幕はない,
         まあ,その間にせいぜい,
         浮世の義理を果たしておくんだな。
         奥さんを呼んできてやる」

    ▼土方は,近藤の女房(つね)のもとへ出向く。




    ▼土方の解説
    近藤にとっても我々にとっても懐かしい,
    小石川の試衛館道場は既になかった。
    近藤は,江戸の留守を守る妻女のために,
    牛込二十騎町に新たな屋敷を買い与えていた。

    ▼つねは,夫が京都へ行った目的も知らず,
    新選組が鳥羽伏見の戦いに負けたことも知らなかった。
    戦いとはまるで無縁の,
    家事だけが楽しみという平凡な女房であった。
    土方から近藤の居場所を聞いたつねは,
    早速,出向いて行き,夫婦は再会を果たす。
    ぎこちない雰囲気ながら,互いの身を案じ,
    久しぶりに心を通い合わせた。

    ▼土方の解説
    近藤は勇猛果敢な士である。虎であり,獅である。
    だが,今は傷ついた一人の勇士だ。
    新選組そのものが傷ついた虎であり,獅なのである。
    一刻も早く,鋭気を取り戻さねばならぬ。

    ▼土方は,原田と永倉の前で,新選組に与えらえた最後の軍資金を放り出し,全部隊士に分けるよう申し渡す。江戸城には千両箱が唸るほどあるから,軍資金の調達に心配はいらないと言う土方。安宿に閉じ込められていては隊士の士気にかかわるため,皆を元気付ける狙いがあった。
    途端に活気付いた原田と永倉は,早速,深川へ酒を飲みに繰り出す。
    原田らの誘いを断った土方は,新選組再建に向け,老中・河津伊豆守と面会する。

    ▼土方の解説
    私はその時,一緒に行けない理由があった。
    その日,新選組再建に向け,
    ある老中職に面会を求めていたからである。
    その老中は,新選組再建について,極めて好意的であった。
    私が,ようやく新選組の前途に希望を抱いた頃,
    沖田が病に倒れた今,
    試衛館以来のただ二人の生き残りの同志である,
    永倉新八,原田左之助もまた,
    彼らなりの浩然の気を養っていたわけである。

    ▼深川で酒を飲んでいた永倉は,幼馴染で神道無念流同門の旗本・芳賀宜通(ヨシミチ)と再会する。芳賀と酒を酌み交わし,夜も更けた頃,永倉と原田は,芳賀から新選組に関する噂を聞く。既に恭順を唱えた将軍に従う江戸城の幕閣からみれば,新選組の存在は有難迷惑でしかないという。
    薩長倒幕派を斬りまくった新選組は,幕府にとって扱いかねる存在らしい。

    原 田 「芳賀さん,我々は,幕府のためを思えばこそ,
         身を白刃のもとにさらして闘ってきたんだ」
    芳 賀 「原田さん,仰るとおりです。新選組は実によくやった,
         闘ってきた。だからこそ,
         今や,江戸城にとっては重荷になってきたのだと言える。
         二人には,いや,新選組にとっては
         不愉快千万な話かもしれんが, 
         現在,江戸城の重臣の中で,そういう空気があることだけは,
         頭に入れておいてよいと思うので,ちょっと申し上げておく」

    ▼土方の解説
    近藤の回復は極めて早く順調にいった。
    新選組再建に寄せる近藤の激しい気力が
    傷を治してしまったのであろう。
    近藤は,牛込の自分の屋敷に移った。

    ▼近藤の屋敷へ訪れた土方は,一緒に登城するよう勧める。
    甲府勤番支配の佐藤駿河守から,二人に是非とも話があるという。
    江戸城へ出向いた土方らは,そこで「甲府百万石乗っ取り計画」を進言される。佐藤によれば,二月半ば頃,官軍が幕府の天領である甲府へ進軍したとのこと。もはや恭順を唱えた将軍家が,幕府の正規の軍勢を出し,甲府城を守って戦うわけにはいかない。そこで,近藤と土方らが中心となり,まだ官軍に奪われていない甲府城を抑えろとのことであった。

    ▼土方の解説
    甲府百万石,乗っ取りの計画は,たちまち具体化した。
    幕府は近藤に若年寄の格を与え,
    砲二門,小銃五百丁,軍資金五千両を下げ渡し,
    「甲陽鎮撫隊」の名を与えた。

    ▼土方の解説
    慶応四年三月一日,
    甲陽鎮撫隊は江戸を出発,甲府に向かって出陣した。
    だが,甲府城は一日早く官軍の手に落ちていた。
    甲陽鎮撫隊は,甲州勝沼に官軍と衝突したが…。




    ▼戦いの最中,俄か召集の甲州鎮撫隊からは脱走者が相次ぎ,
    新選組の生き残りだけとなった。近藤は,土方に援軍の要請を頼んだ。

    ▼土方の解説
    私は馬の足が折れるほど走り回った。
    だが,甲陽鎮撫隊のために,
    一兵たりとも援軍を送り出してくれる幕軍はなかった。
    そして,その間に…。

    ▼甲陽鎮撫隊は官軍の前に,あっけなく敗れた。
    近藤らは江戸へ戻ったが,既に滞在する宿もない。
    再び芳賀と面会した原田と永倉は,
    新選組が幕府に追い出されたという噂があることを聞く。
    江戸城の恭順派が,老中を巧みに動かして甲府に追っ払ったという。

    ▼土方の解説
    甲陽鎮撫隊が甲府城接収に失敗したとなると,
    幕府の態度は俄かに冷淡になった。
    近藤は,牛込の屋敷を引き払って,
    江戸郊外中野村に身を隠した。

    ▼近藤のもとを訪れた土方は,原田,永倉,斎藤らと,新選組を再建しようと考えていた。しかし,原田と永倉は,芳賀から,近い将来,直参旗本の一集団として官軍と一戦交えることを聞き,一緒にやろうと誘われる。
    芳賀によれば,江戸城の重臣達は,新選組を幕府とは無縁の浪士団だと考える傾向にあり,新選組を中心にしては駄目だという。

    ▼土方の解説
    永倉新八,原田左之助の両人は,
    我々を,ある旗本屋敷に招いて,
    芳賀宜通と協力提携を斡旋しようとした。




    原 田 「近藤先生,土方さん,時勢は変わったんだ。
         もう新選組じゃあ,やって行けねえんだ。
         そこへいくと江戸の直参は,
         これから初めて戦をやろうっていうんだ。まだ白紙なんだ」
    土 方 「原田君,戦をやるのに,白紙も何もないだろう」
    原 田 「いやあ,幕府の扱いが違ってくるんだ」
    芳 賀 「近藤さん,土方さん,はっきり申し上げれば,
         重臣の中には,新選組を有難迷惑と思っている者がいる。
         今,我々が新選組のもとに馳せ参じたとなれば,
         おそらく直ちに解散を命じられるだろう。
         だから,あなたがたの方で,
         我々のもとに加わったことにすれば,
         当局を刺激することもない。
         事実,彰義隊が上野にこもっているのさえ,
         重臣達は許可している。
         我々の隊もまた,同じく許可される」
    永 倉 「要するに方法ですよ,近藤先生,土方さん。
         昔,試衛館から浪士団に加わったように,
         今度は,直参旗本の隊に加わればいいのだ」
    原 田 「そのほうがやり易いとわかった以上,
         ねえ,そうしましょうや」
    芳 賀 「無論,近藤,土方両氏は,
         我々の客分として,お迎えしたい」




    ▼土方の解説
    私の耳から,次第に人々の声は消えていった。
    私の耳には,何も聞こえなくなっていった。
    そこで語られているものは,ただ,徳川家直参の旗本達が,
    いかにして合法的な団体を作り,
    官軍に抵抗しようかという方法論である。
    私と近藤とが,京都で作り,育て,そして守ってきた,
    私達の新選組の話ではなかったのである。




    近 藤 「歳さん,君はどう思う。
         永倉君,原田君の言う事も分かる,
         芳賀さんの意見も正しいだろう。
         しかし,私としては参加しかねる」
    原 田 「どうしてです」
    近 藤 「今作ろうとしている団体は,私の作る団体ではない」
    永 倉 「しかし,近藤さん」
    原 田 「そりゃあ,あなた,対面にこだわり過ぎてっからですよ」
    近 藤 「いや,対面ではない。私は…うまく口では言えん。
         しかし,私が参加することはないように思える」
    原 田 「土方さん,あなたどう思う」
    永 倉 「芳賀さん達は,近藤さんに,それ相応の扱いをしたい
         と言っているのだから…」
    土 方 「原田君,永倉君,私は,
         江戸で戦は無理だと思っているのだ。
    原 田 「え?」
    永 倉 「どうしてです」
    土 方 「幕府は,甲陽鎮撫隊を見殺しにした」
    永 倉 「だからそれは」
    原 田 「新選組が中心だったからいけねえんだ」
    近 藤 「歳さん,失礼する,私は退席したい(一礼して去る)」
    原 田 「近藤先生」
    永 倉 「ちょっとお待ちなさい」
    土 方 「永倉君,原田君」
    原 田 「土方さん,先生を止めてくれよ,
         少し,感情的になってんじゃねえのか」
    土 方 「いや,いいのだ,君達の言う通り,
         確かに時勢が変わっているのだ。
         昔のままの新選組で行くわけにはいかない。
         それは,近藤さんだって知っているさ。
         しかし,誰にでも意見というものがある。
         今,君達が述べたことも立派な意見だ。
         京都の頃は,俺は,そういう意見を一つずつ,
         潰していたものだ。
         新選組を,強く,大きくしたいと思っていたからだ。
         だが,今はもう新選組はない。
         だから君達の意見を尊重したい。
         君達は,君達のやり方でやって行けばいいのだ。
         みんな,自分の思った道を進もう」




    ▼土方を廊下で呼びとめた原田は,「近藤さんは一徹すぎる」と呟く。

    土 方 「原田君,近藤が一徹だろうが何だろうが,
         俺は,あの男と一緒に行く。
         俺と近藤とは,兄弟みたいなもんさ。
         たとえあいつが一人きりになっても,
         俺だけは付いていってやる。長い間,色々有難う」

    ▼屋敷の外で近藤は,うまく言葉で言い表せないことを土方に謝るが,
    土方は「あれでいいよ」と答えた。
    二人は,中野まで夜道を歩いて帰る。
    途中,武州三多摩の少年時代を思い出して懐かしむ。
    夜空に浮かぶ満月を眺めて歩む。




    (了)
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    今回,やっと総理大臣になれたことで,
    世襲じゃない叩き上げの政治家として官僚国家体制を打破すべく,
    大いに手腕を振るって下さることを,じっくりと末永く,
    期待するばかりです。
    捨て石になりませんように…。
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    第22話…海鳴りが呼ぶ(『新選組血風録』)





    (第22話)

    ▼慶応四年一月九日,幕軍は大阪へ総退却を決定した。

    ▼土方の解説
    幕府は,大阪において決戦を試みることなく,
    賊軍の汚名を着たまま江戸に敗走を開始した。
    新選組が,鳥羽伏見に薩長連合軍と戦って退いてより,
    僅か四日後のことである。

    ▼新選組は,富士山丸で江戸へ向かうことになった。

    ▼土方の解説
    新選組仮陣営大阪代官所は,まだ混乱の中にあった。
    次々に辿りつく負傷隊士の収容,新選組再建への準備,
    その間中に,大阪撤退の報は流れた。

    ▼鳥羽伏見の戦いで重傷を負った山崎烝のもとに,
    許嫁(イイナズケ)の久江が訪れ,昼夜を問わず,
    熱心に付き添い,看護をしていた。

    ▼一方,大阪代官所には,労咳の病状が悪化した沖田が床に伏していた。
    富士山丸で江戸へ退くことを斎藤から聞いた沖田は,
    「厭だなァ」とこぼす。
    大阪から江戸まで四日ほどかかるらしい,
    昔から舟は嫌いだと言う沖田。
    斎藤は,舟の中でも傍にいてやると言って,沖田を励ます。
    「我慢するか」そう言った沖田は,
    それとなく,別室にいる山崎のことを気にかける。




    ▼山崎の容態は,小銃二発のうち一発が身体の中に残って化膿しており,
    その鉛毒に全身が侵され,余命いくばくもない状態であった。
    山崎の実家が大阪だと聞いた医者の松本良順は,
    せめて最期は,親族や許嫁と,実家で過ごすよう近藤に勧める。
    土方は,山崎の兄と許嫁の久江を呼んで,
    山崎を実家へ移すことを伝える。
    近藤としても,山崎にその旨伝えるが,

    山 崎 「私を,この大阪に置いて行くと言われるんですか」
    近 藤 「置いて行くのではない,君は重傷を負っている。
         今,無理して舟に乗ることはない。兄さんが迎えに来ている。
         ひとまず実家に落ち着いて,じっくり養生してくれ。
         新選組も,江戸で再編成する,安心して大阪にいてくれ」
    山 崎 「局長,お言葉ですが,私は大阪には残りません。
         私も,局長やみんなと一緒に,富士山丸で江戸へ行きます。
    近 藤 「いやあ,それは無理だ」
    山 崎 「局長,無理だからこそ,私は行くんです。
         私は,自分の体がどうなっているかくらい
         わかっているつもりです。 
         もし,もとの身体に治れるものなら,
         喜んで大阪に留まります。
         喜んで家へ帰りますよ。
         でも,大阪に残っていても,私の体は元へは戻らない」
    近 藤 「山崎君,そんなことはない,大阪には良い医者もいる。
         それに,手厚く看護をしてくれる人達が待っている。
         第一,君はまだ若い,絶対治る,
         いや,治ってもらわねば困る」
    山 崎 「近藤先生,そう仰って下さるお気持ちは,嬉しく思います。
         でも私は,どうせ死ぬなら,新選組の隊士として,
         誠の旗のもとで,死んで行きたいと思います」
    近 藤 「…」
    山 崎 「私はもう,足手まといに過ぎません。
         富士山丸で連れて行けと
         お願いできる筋合いではありません。
         富士山丸に乗れないときは,
         ここで先生や皆さんを見送ってから,
         自決するつもりでおります」
    近 藤 「山崎君,わかった,君を連れて行く,
         私と一緒に富士山丸に乗る。そして,江戸へ行こう」
    山 崎 「良かった…連れて行って下さいますね,
         良かったァ,安心しました,ありがとうございます」








    退席して近藤が障子を開けると,そこに土方がいた。
    山崎と近藤の会話を聞いていた土方は,
    山崎の親族にそれを伝えることにする。

    ▼土方から山崎の意向を聞く兄と久江。
    ゆっくりお別れするよう言う土方。

    ▼土方の解説
    その日の夜より,早くも幕軍の一部は撤退を始めた。
    戦死者遺族への通達,生存隊士への軍資金の配布,
    身辺の整理,家族への連絡,
    新選組仮陣営もまた,多忙な一夜を迎えていた。

    ▼その晩,新選組の書類記録の多くが焼却された。
    規模の小さい富士山丸に持ち運ぶことができないからだ。
    寝床に就いた沖田と斎藤は,焼却の物音に気が付く。

    沖 田 「新選組の記録が,みんな灰になっていくんですね」
    斎 藤 「…」

    ▼既に山崎は,薬も飲めない最悪の状態となっていた。
    山崎は兄に,久江との婚約を解消したほうがいいのではないかと話す。
    「あんないい人を,不幸にはしたくない」と言う。
    その頃,山崎の容体を医者に尋ねた久江は,
    もはや息を引き取るのを待つばかりだと告げられる。

    ▼乗船間際,こん睡状態に近い山崎の部屋に,
    近藤,土方,山崎の兄,久江が集まる。
    そこで久江は,意を決したように,
    山崎の妻にさせて欲しいと申し出る。

    久 江 「縁あって山崎様と婚約を取り交わした者でございます。
         その山崎様が,今,武士の最期を飾ろうとして,
         富士山丸に行かれるのです。
         もう,お目にかかれることはないでしょう。
         なら,今のうちに,私をお約束通り,
         山崎烝の妻として,その門出をお送りしたいと存じます。
         今のうちです,ここにはお兄さまがいらっしゃいます,
         新選組の局長様も,副長様もいらっしゃいます,
         どうぞ,祝言をお認め下さいませ」

    ▼久江の言葉を聞き入れた近藤は,隊士を集め,形ばかりの祝言を行う。
    三三九度の乾杯を終えた時,新選組の乗船を促される役人の声が聞こえる。山崎は,妻久江の見送る中,運ばれて行った。

    ▼土方の解説
    同日夜,新選組は,富士山丸に乗船した。

    ▼舟の甲板で、土方と原田は,山崎と久江のことを話す。

    原 田 「私は思いましたよ,人間の幸せなんてものは,
         他人のわからねえところにあるもんだとね。
         土方さん,おかしなこと言うようだが,
         あんた,人間の魂ってもの,信じますか」
    土 方 「どういう意味かな」
    原 田 「いえね,山崎君はずっと意識不明のままで,
         あの人が自分の嫁さんになったことも知らねえで,
         だが,もし死んで,その魂がそれを知ったら,
         それで山崎君は日本一の幸せ者だと思うんですがね」

    ▼こん睡状態の山崎は,苦しそうにもがき,突然眼を開けた。
    狭い船室に永倉,原田,土方,近藤が詰めかけて見守る。
    「出撃だ! 新選組の出撃だ!」叫んだあと,山崎は息絶えた。

    近 藤 「山崎君は,やはり,あの人の夫として,出撃をしていった」
    原 田 「山崎君は,いい嫁さんをもって死ねた」
    土 方 「近藤さん,山崎君は,新選組幹部として,
         軍艦の上で戦死をした。
         それにふさわしい葬儀をしてやりたい」

    ▼土方の解説
    新選組監察山崎烝,
    慶応四年一月十二日,軍艦富士山丸において戦病死す。
    同日,紀州沖にて海軍葬により海底に沈める。
    この日,海鳴り特に激しく聞こえる。
    その後,伝え聞くところによれば,
    山崎烝の妻久江は,夫の後を追い,自決したという。
    その日また,海鳴り特に激し。

    (了)
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    第21話…夕陽の果て(『新選組血風録』)





    (第21話)

    ▼慶応四年一月三日,鳥羽伏見の戦いが起こった。

    ▼土方の解説
    林 権助(ハヤシ ゴンスケ)指揮する会津藩の三門の砲は,
    果敢なる戦闘を展開したが,
    圧倒的に優勢な薩摩軍砲火の前に,遂に沈黙した。
    新選組は,敵弾のもとにさらされたまま,
    幾度か決死的な突入を繰り返しては,
    その兵力を失っていった。

    ▼市街戦の中,監察の山崎烝が銃弾を足に二発受け,負傷した。
    空き家の中で,永倉と原田が介抱していたところ,敵兵に囲まれた。
    万事休す…と思いきや,敵兵の背後から烈火のごとく斬り込んできたのは,伝令役の平隊士・宮田健吉であった。
    宮田からの伝令により,永倉達は,山崎を運んでその場を退却した。

    ▼先遣隊の林 権助は,砲火を浴びた姿で土方のもとへ来る。
    大阪へ来た歩兵部隊が勝手に逃げて行ったと報告する林。
    土方は,ひとまず退却し,夜間に奇襲攻撃をすると告げる。
    林も,これに応じ,会津の抜刀隊五十名も
    新選組と一緒に斬り込むと言う。
    「戦はこれからじゃ」と,笑う林だが,その直後,息絶える。

    ▼伏見奉行所内へ引き揚げた土方ら新選組隊士達。
    井上源三郎は,土方に状況を確認する。

    土 方 「井上さん,慌てても仕方がない。
         暗くなったら,夜間の斬り込みをやる。
         あの土塀は,小銃の弾はぶち抜けん,
         ま,安心して,今のうちに飯でも喰っておくんだな」
    井 上 「飯?…」
    土 方 「酒の好きな奴には,酒も飲ませろ,
         喧嘩なんていうのは,ビクビクした方が負けだ」
    井 上 「(笑)なるほど,あんたの言う通りじゃ,
         なァんのこれしき,戦はこれからじゃ」

    ▼間もなく負傷した山崎が戸板に乗せられ運ばれてきた。
    土方は,永倉と原田に,夜襲をかけることを告げ,
    伝令の宮田に,その旨,会津の抜刀隊へ連絡するよう指示した。
    と,そこへ,井上が握り飯を沢山持って来る。

    井 上 「歳さァーん…お,新八さんに左之助さんよ,
         ほーら,飯だ飯だァ,弁当だあ」

    前進した井上の前に砲弾が落ちる。

    倒れた井上のもとへ土方らが駆け寄る。

    井 上 「ワシァ…あかんなあ,こんなところでやられてしまったら…」
    土 方 「大丈夫だ,しっかりしろ」
    井 上 「歳さん…近藤先生に,よろしくなァ…。
         先代周斎先生の内弟子にして戴いて以来,
         今まで,なんのお役にも立たなかった…,
         申し訳ない,そう伝えてくれェ…。
         歳さん,べ…弁当だ,早く,食べてくれェ…」




    井上は土方に握り飯の包を差し出す。
    が,力尽き,握り飯は地面に落ちた。
    土方の腕の中で,井上は絶命した。

    原 田 「源さん,あんた馬鹿だよ…,
         あんた俺達の先輩じゃねえか。
         江戸試衛館の時から最古参じゃねえか,
         何故,自分で弁当なんか運んだりするんだい!」

    悲しみにくれる中,砲弾が次々と撃ち込まれる。

    ▼土方の解説
    夜戦は失敗に終わり,乾坤一擲(ケンコンイッテキ)の勝負を懸けた新選組は,
    おびただしい砲弾の中にその全身をさらされた。
    しかし,新選組は,幾度か突入を繰り返した。
    会津も戦った。だが,戦闘三日目,幕府は総退却を命じた。
    そしてその日,薩長連合軍は,錦の御旗押し立てた。
    官軍となったのである。
    敗れた幕軍は,賊軍と変わった。




    ▼退却する新選組隊士らは,途中,河原でへばっていた。
    皆が憔悴する中,ただ一人,土方の気力は衰えない。
    幹部に号令をかけて集めた土方は,しっかりしろと檄を飛ばす。

    原 田 「あんた,不死身だねえ,
         俺にはとってもあんたの真似はできねえよ」
    土 方 「まだ戦の最中だ」
    原 田 「はあ…(うなだれる)」

    土方らは,河原で戦死者を荼毘(ダビ)に付す(※火葬)。

    ▼大阪代官所で怪我の養生をしている近藤へ,戦況結果が報告された。
    新選組は,井上源三郎以下戦死者三十一名,重傷者十三名,行方不明者九名。鳥羽伏見の戦い前には総員七十四名いた隊士は,この時点で二十一名を残すばかりとなった。

    ▼土方は,永倉,原田,島田を呼び,薩長軍による大砲の追い撃ちを避けるため,固まっての行軍から隊列を解き,分散して大阪代官所まで帰還するよう指示する。

    土 方 「新選組は,解散したのではない。
         誠の旗は,重傷者輸送の斎藤君が大阪に持ち帰っているが,
         あの旗のもとで,新選組はもう一度,再編成するのだ」
    永 倉 「勿論です,しかし,負傷者は,どうしますか」
    土 方 「誰だ」
    永 倉 「伝令の宮田健吉です」
    土 方 「この附近の出身というが,どこだ」
    永 倉 「桂の近くだそうですが…」
    島 田 「じゃあ,もう京都じゃないですか」
    原 田 「新八ッァん,あの辺は,もう薩長の陣地だぜ」
    永 倉 「ああ,知ってるよ,しかし,大阪まで歩かせたら,
         もたんかもしれん。どうせ死ぬなら,
         眼と鼻の先におふくろの家があるのだから…」
    島 田 「しかし,永倉さん,どうやって実家へ運ぶんです」
    永 倉 「俺が一緒に行ってやる。肩をかせば,まだ少しは歩ける」
    原 田 「あんたが?…上段じゃないよ。薩長がウヨウヨしている中へ,
         あんたがノコノコ入って行くつもりかい…。
         一人ならともかく,身動きできねえ男を連れて行くんだぜ」
    永 倉 「ハハ(笑),今,土方さんが言ったばかりだ。
         隊列を解いて,各自大阪へ後退する。
         だから,俺は俺のやり方で,大阪代官所へ行く」
    土 方 「永倉君,君の判断に任す」

    ▼仰向けで苦しい息の宮田は,新選組隊士として,大阪まで行くと主張する。歩けなければ,這ってでも行くという宮田に,土方は優しく声をかける。

    土 方 「いや,宮田君,誰も君を,
         隊から出ろと言っているのではない。
         君はあくまで,新選組隊士だ。
         ただ,傷の養生をするために,実家に帰るのだ。
         回復次第,またすぐ,大阪に来てくれればいい。
         我々は,大阪で待っている。
         (宮田の手を掴み)闘いはまだ,これからなのだ。
         永倉君が一緒に行ってくれる」
    宮 田 「とんでもありません,先生は,大幹部でいらっしゃる。
         私は,一人で帰れます」
    永 倉 「いいんだ,無理するなよ,さ,行こう」

    ▼土方の解説
    新選組は,散り散りに分かれて大阪へ落ちて行った。
    そのあとを追うように,薩長両軍の砲声は轟いた。
    永倉は傷ついた隊士を助けて,
    その砲声に向かって歩いて行ったのである。

    ▼永倉は,足を負傷した宮田に付き添い,彼の実家がある桂へ向かった。
    途中,薩長の兵がウロウロしていたが,竹藪に身を隠しながら進んだ。

    ▼大阪代官所に到着した土方は,近藤の部屋へ行き,
    「負けて逃げてきた」と報告する。
    更に,大事な門下の井上を死なせ,申し訳ないと謝る。
    土方に責任はないと励ます近藤は,現在の隊士の総員を尋ねる。
    永倉が負傷した隊士に付き添い,まだ帰還していないと聞いた近藤は,
    彼らのことを心配する。

    ▼宮田の実家のある村は,既に薩長官軍の支配下にあった。
    永倉は,傷の具合が悪化した宮田を背負って歩き,
    彼の実家まで,敵に見つからずに辿りついた。
    宮田の家には,母親と姉がいた。
    布団で養生した宮田は,永倉に,家宝の鎧通し(ヨロイドオシ※短刀)
    を見せることを約束し,安堵したように眠りについた。

    ▼永倉は,別室で宮田の姉八重に,伝令としての彼の活躍ぶりを話す。
    大阪の陣以来,宮田家に代々伝わる鎧通しを見せてもらう永倉。
    宮田の母は,かつて武家であった宮田家を,
    一人息子の健吉が再興してくれることを楽しみにしていたという。
    息子を医者に見せてはいけないものかと嘆く母親だが,
    八重によれば,既に,昨日,薩摩の兵士が二人ほど,
    宮田の家を訪ねて来たので,弟を医者に見せることすらできない。
    涙を拭い,母親は立ち去る。
    落ち着きのある宮田家のたたたずまいを感心する永倉に,
    八重は,出身を尋ねる。

    永 倉 「私ですか…フフ(微笑)…もう忘れましたよ。
         小さい時,飛び出してしまって,旅から旅の浪人暮らし,
         江戸の試衛館という小さな道場の居候,そして新選組。
         フフ(微笑)…忙しい一生でしたよ。
         私の帰る家というのは,新選組しかない。
         その新選組も,もう,屯営さえなくなってしまった」

    ▼宮田の容態は急変した。
    「大阪に行くんだ」…最期の言葉を残し,宮田は絶命した。

    永 倉 「お母さん,お姉さん…,私は,うまく申し上げられないが,
         宮田君は,新選組隊士として,立派に闘って,亡くなられた。
         薩摩と長州達は,昨日,闘いの最中に,錦の御旗を立てた。
         我々は,賊軍になってしまった。
         しかし,私達は,誇りをもって闘ってきた。
         いや,これからも闘う。
         もともとは立派な武士の家だ,
         宮田君はその武門の家の子として散った。
         こんな時勢です,私も賊軍となって死ぬかもしれない。
         しかし,武士の誇をいっぱい感じて死ねるつもりでいます。
         どうか,お二人とも,これからも誇りをもって
         生きて行って下さい」

    八重は,弟を立派な侍として自慢に思うと答える。
    世の中がどんなに変わろうと,
    一生それを自慢して生きていきたいという。

    永 倉 「ありがとう,それを聞いて,私は安心して大阪に行ける。
         (白布を上げ,宮田の顔を見ながら)
         宮田君,安らかに眠ってくれ」

    ▼永倉は宮田家を後にした。道なりに歩いてきた薩摩の兵士二人に見つからないよう,ふと辺りに潜んだ。薩摩兵は「あれほどの京娘,先にしてやられてはかなわん…」と言いながら,急いで駆け出して行く。兵士をやり過ごし,再び道を歩き出した永倉だが,はっと気が付いて身を翻す。

    ▼薩摩の兵士達は,宮田家に押し入っていた。
    八重をテゴメにしようと襲いかかり,一人が母親を斬った。
    息子の亡骸の上に被さるように倒れる母。
    そこへ永倉が駆け付け,キッと兵士らを睨みつける。

    永 倉 「貴様ら,それでも官軍かあッ!」




    憤激と共に抜刀した永倉は,そこにいた五人の兵士らを,
    根こそぎ斬り倒した。
    その直後,八重のほうを振り返ると,
    短刀で喉もとを斬って自害してしまう。

    八重のもとへ駆け寄る永倉…。
    宮田健吉の亡骸へ寄り添うように伏した八重と母の姿を,
    痛ましく見つめる。

    永 倉 「宮田君,お母さんも,お姉さんも,君と一緒だぞ。
         仲良しの親子三人…,一緒だぞ」

    ▼永倉新八は,黙々と夕陽の果てに向かって歩いて行く。




    (了)
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    第20話…その前夜(『新選組血風録』)





    (第20話)

    ▼土方の解説
    慶応三年十二月,
    王政復古の大号令による事態の急変に対処した新選組は,
    伏見奉行所に陣を構えた。
    情勢は刻一刻と激しく動いていた。
    既に長州藩の大群は,
    摂津(※兵庫県)西宮に続々と上陸しつつあった。

    ▼監察の山崎から土方のもとへ,一番隊の隊士数名が集団脱走したとの連絡が入る。そこへ永倉も来て,同じく脱走者が出たと報告する。土方は,「どうせ,いざという時は,手持ちの人数だけでやるしかないのだ」と冷静に話す。

    ▼土方の解説
    かつて,不動堂村に屯営を築いた時,二百名を超えた新選組は,
    今や,その三分の一を数えるのみとなった。
    全隊士僅か七十名足らず,
    それが,幕府の最前線伏見を守る陣容である。

    ▼近藤は,大阪城にいる直参幕軍の洋式大隊を伏見へ対陣させるべきだと声を荒げる。二条城に残る幕府の大目付のもとへ行き,戦力の増強を要請すると言うが…,

    土 方 「近藤さん,無駄だよ。要するに,腹の問題だ。
         幕府のお偉方には,その腹がないのだ」
    近 藤 「しかし,これでは,この伏見はどうなる。
         無論,我々は,この伏見を守って死ぬ覚悟でいる。
         しかし,みすみす犬死はしたくない。
         闘えるだけの兵力が必要だ。歳さん,そうだろう」
    土 方 「…」
    近 藤 「第一,幕府は,その最前線である伏見に,
         自分の兵力を一兵も出さないという事は…」
    土 方 「近藤さん,ちょっと…(辺りが騒がしい)」

    折しも,長州倒幕軍の歩兵連隊が,伏見奉行所前を堂々と通り過ぎて行く。倒幕軍は,京へ向かって進軍していた。屯営内の若い隊士達は,その行進を見に,部屋から廊下へ飛び出したところ,そこにいた土方から,「騒ぐな,出るな,君達は野次馬か!」と,一喝される。

    ▼土方の解説▼
    かつて,蛤御門の変で御所を攻め,
    朝敵として追放された長州藩は,
    今,朝命を待つこともなく,無断で兵を起こし,
    西宮へ上陸したのも束の間,
    幕府の大根拠たる大阪城を無視し,
    白昼堂々と京都へ進軍してきた。
    新選組の目の前を,我がもの顔に通って行く。

    ▼近藤は,二条城へ行くと言ってきかない。
    土 方 「近藤さん,あんたの怒りは最もだ。
         しかし,もう,話し合いや議論をしている時ではないのだ。
         確かに,あんたの言う通り,王政復古は薩長の陰謀だろう。
         だが現に,将軍は大阪に引き揚げてしまって,
         長州藩が勝手な行動をしているのを止めることもできん。
         もう,こうなったら,戦で解決するしか方法がないのだ」
    近 藤 「わかっている,だから私は,二条城へ行って,
         それを勧めてくるのだ」
    土 方 「近藤さん,二条城にいるのは,
         残務整理みたいに京都へ残されている
         幕府の大目付だけではないか,
         今更大目付に何ができる」
    近 藤 「新選組の意見として,将軍家へ上申してもらう。
         私が直接,大阪に行ってそれができない今,
         そうすることが順序だ。
         人それぞれ,最善を尽くすべきだろう。
         私も今,出来る限りの最善を尽くす」

    ▼騎乗した近藤は,平隊士数名を伴い,二条城へ出向いて行った。

    ▼土方の解説
    近藤は,思い込んで言い出したら聞かない男だ。
    だが私はその時,武州三多摩の少年時代に戻って,
    たとえ殴り合いをしてでも,近藤を止めるべきであった。

    ▼山崎から土方に,油小路で逃がした伊東派の残党が伏見で目撃されたとの情報が入った。土方は,すぐ山崎を近藤の護衛に送った。

    ▼土方の解説
    油小路を脱出して,薩摩藩京屋敷へ逃げ込んでいた
    伊東甲子太郎の残党が,王政復古に基づく時代の急変と,
    新選組の京都撤退により,
    俄かに活動を起こしたことは想像できた。
    私はやはり,なんとしてでも,
    近藤が伏見奉行所を出るのを止めるべきであった。
    山崎烝も,間に合わなかった。






    ▼油小路の残党である篠原泰之進ほか数名は,竹田街道で近藤を待ち伏せ,狙撃した。銃弾は,近藤の左肩に命中。翻った馬ごと脱兎の如く引き返す近藤。護衛の隊士らは,出てきた篠原達と闘う。

    ▼土方の解説
    かつて新選組が,このような惨敗を喫したことはなかった。
    油小路生き残りの残党達は,一人も失わずに引き上げた。
    近藤は重傷の身のまま,伏見奉行所に走り込んだ。

    ▼近藤の負傷を確認した土方は,傷口に焼酎を吹きかけて包帯を巻き,
    応急処置を施す。

    ▼土方の解説
    近藤の傷は,意外に重かった。左肩は完全に潰されていた…。
    近藤勇重傷の急報は,大阪へ飛んだ。
    伏見奉行所には,重苦しい空気がみなぎっていた。

    ▼山崎は,相手を一人も討ち取れずに戻って来た隊士三名を叱責する。

    ▼土方の解説
    この隊士達は,近藤を襲った油小路の残党を追おうとはしなかった。
    いや,追うと称して,その後,屯営を出たが,
    再び帰営することなく,姿をくらました。
    隊士の士気は,見る間に落ちて行った。
    今更ながら,近藤が,新選組の象徴であったかと痛感せしめた。

    ▼土方と井上は,床で痛みに耐える近藤の傍に付き添い,看護する。
    外から長州の歩兵隊が,四斤山砲(シキンサンポウ※フランス製の大砲)を押して通過する音が聞こえる。

    近 藤 「歳さん,鉛が身体に回ったらしいな…,
         さっきから,頭の中で花火がなっているみたいだ。
         今また酷く耳鳴りがする…,
         それとも,表を何か通っているのか,
         まるで,大砲が通って行くみたいだ」
    土 方 「すぐ治まるよ,熱のせいだ」

    ▼土方の解説
    骨を砕かれた近藤の身を,更にさいなむ音,
    長州の軍勢は,新選組本陣の前を通り過ぎて行く。
    私は近藤を大阪へ送り移すことに決めた。
    大阪には既に,伏見対陣後,
    病状俄かに悪化した沖田総司を送っていた。
    五年の間,近藤と私の二人で,作り育ててきた新選組は,
    今,戦いを目前にして,
    その一人を戦列から離さねばならなくなった。

    ▼寝床から起き上った近藤に,土方は伝える。
    土 方 「将軍家からの仰せでもあるんだ,
         大阪城には,天下の名医もいる。
         ここにいては,ろくな治療はできない」
    近 藤 「…(痛そうに着物を羽織る)」
    土 方 「新選組は,その間,俺が守って行く。
         安心して,大阪へ行ってくれ,
         そして,一日も早く治ってくれ」
    近 藤 「そうか…,歳さん,すまんな,京都へ来てから,
         いや,試衛館の時から,
         分かれたことのない二人だったが…」
    土 方 「ハハハ,気の弱いこと言いなさんな」

    ▼間もなく,大阪からの迎えが到着し,近藤は伏見奉行所を去った。

    ▼土方の解説
    新選組局長近藤勇は,新選組本陣から離れた。
    そして,その日を待っていたかの如く,
    薩長軍は,伏見攻撃の態勢を整えた。

    ▼原田,永倉,山崎,島田が,敵の布陣について話していた。

    原 田 「目と鼻の先の御香宮(ゴコウノミヤ※神社)には,
         薩摩が陣を敷いていやがる。
         おっ始まったら,まず新選組は,
         こいつとぶつかるわけだろうなァ」
    山 崎 「人数は二百人くらいで,たいしたことはないが,
         鉄砲隊が徴発してきた畳を積んで,
         胸壁(キョウヘキ※胸の高さに築いた砦)を作り,
         銃眼(ジュウガン※射撃のための壁の穴)を並べています。
         これが面倒でしょうなァ」
    永 倉 「こっちから向こうの陣まで,三十軒足らずだなァ,
         飛び込んでしまえばこっちのものだが」
    山 崎 「向こうは新式のミニエー銃(※歩兵銃)ってやつですよ,
         一斉射撃をくらったら,ちょっとしんどいなァ」
    原 田 「俺はそれよりも,東側の龍雲寺の高台に,
         いつの間に引っ張り上げたのか,
         薩摩の大砲が気にくわねえよ」
    島 田 「あれは,いかんなァ,彦根藩の受け持ちなのに,
         急にこそこそ逃げ出して,
         薩摩に取られてしまった場所だ。
         四斤山砲が何門も並んでいる。
         まるでこの奉行所は,狙い撃ちの撃ち下ろしだ。
         こっちにも大砲がなければ,どうにもならんでしょう」
    山 崎 「四斤山砲と言えば,鳥羽街道の薩摩軍の陣地にも,
         七門か八門,あるらしい」
    原 田 「こいつらが一斉にガンガン撃ち出したら,ことだぜ」
    永 倉 「刀で,飛んでくる大砲の玉は斬れんからなァ」
    原 田 「こっちも大砲が欲しいなァ,たった一門あるのは旧式砲だ,
         向こうの陣地まで,飛ぶかどうかもわからねえ」
    山 崎 「大阪には沢山あるんでしょう? 何をしてんですかねェ」
    原 田 「まったく,お偉方のやるこたァ,わかんねえよ。
         まるで,新選組,見殺しじゃねえか」

    ▼折しも,会津藩から大砲を装備した援軍が到着した。

    ▼土方の解説
    新選組の生みの親である京都守護職会津中将は,
    新選組を見殺しにはしなかった。
    大砲奉行,林 権助を指揮官とする先遣砲兵隊を
    新選組のもとに送り届けてくれた。




    砲は三門にすぎない。兵力も少ない。
    しかし,指揮官林権助は,古武士の面影を残した,
    本物の武士の一人である。西の薩摩と並んで,
    東の会津は,剛健無比の誉れの高い精悍の藩士である。
    「会津来たる!」の声は,
    伏見奉行所に,活気と闘志を呼び起こした。
    一触即発の危機をはらんで,幕末最後の年,
    慶応三年は過ぎようとしている。

    ▼土方と井上は,除夜の鐘を聞いていた。
    近藤がいない正月を迎えるのは初めてだという井上。

    井 上 「来年の年越しは,どうなってるかなあ,
         まさか,この伏見じゃあるめえ。また,京都かな」




    ▼土方の解説
    井上源三郎は,それから三日後,この伏見奉行所の門前で,
    銃弾を受けて戦死した。
    しかし,私も井上自身も,神ならぬ身である。
    ただ,無事に送った慶応三年の,その年の暮れに,
    我が身を委ねるばかりである。 

    ▼井上が立ち去ったあと,原田が土方の部屋へ来る。
    京都にいる女房が産気づいたため,生まれるまで付き添いたいという。
    父親のことを知らずに育った原田としては,自分や母親が味わった厭な思いを,生まれてくる子供にはさせたくないという。土方は,非常態勢であるため,これを拒否する。が,新選組局長代理として,京都の情勢を探るよう指令を出す。

    ▼原田は女房のもとへ行き,子の出産を見届けてから帰隊する。
    慶応四年一月三日,鳥羽伏見の戦いが始まって間もない頃だった。






    ▼土方の解説
    原田左之助は,砲煙弾雨の中を伏見に戻った。






    そして,凄まじい働きを示した。
    原田は,新選組と共に闘い,そして共に大阪に退き,江戸へ落ちた。
    再び原田左之助が,京の町へ現れることは,遂になかった。
    原田左之助は,江戸で最期まで闘って,その命を終えた。
    その子と,その母親の消息を知る者は,誰もいない。

    (了)
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