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第26話…燃える命(『新選組血風録』)※最終回




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(第26話)

▼明治九年,東京府下の石田村。
土方の生家を斎藤一が訪ねる。

名を変え,身を隠して生きていた斎藤は,不審がる家の者に,
「もと新選組の三番隊組長」だったことを明かす。

明治維新から数年経過したが,土方の家には
いまだに新選組や土方に恨みを持つ者が苦情を言ってくるという。
斎藤は,土方の位牌の前で祈りを捧げる。

(斎藤の声)
斎 藤 「土方さん,あんたはよく闘った。実によく闘った。
     伏見から江戸,甲州から流山,やがて,日光,会津,仙台,
     そして,とうとう北の果ての蝦夷の地まで。
     だが,あんたは決して負けなかった。
     函館を攻略した榎本軍の中にあって,
     あんたは,ただ一人の常勝将軍でさえあった」

(時代を遡る)
▼明治元年十一月一日,榎本武揚は,箱館(現:函館)を占領し,
 北海道独立を内外に宣言した。
 土方歳三は,函館政府の陸軍奉行並に推され,
 五稜郭に屯営を構えた。

▼土方の部屋に来た斎藤は,箱館政府の先行きを案じていた。

斎 藤 「榎本は,幕府の海軍副総裁だから,
     独断で幕府の手持ちの軍艦を動かし,
     我々を乗せて,ここに立てこもったというだけでしょう。
     箱館独立を宣言しようがしまいが,遠からず官軍は,
     この地に押し寄せてくると思うんですが」
土 方 「斎藤君,その通りだ。蝦夷の冬は,雪が深い。
     江戸の官軍が,我々を放っておくのは,
     ただそれだけの理由だ。
     年が変わって,雪解けの時期になれば,また戦だ」
斎 藤 「今度は,ちょっとばかり大変でしょうねえ」

(斎藤の解説)
私はその時,土方さんは,わざわざこの北の果てに,
死ぬために来ているのではないかと,そう思いました。
いや,死ぬためというよりは,死に場所を探しに来たのではないか
と思いました。

▼箱館は,安政以来の貿易国であり,
 年間数十隻を超える外国船が出入りする地である。
 「いかに官軍といえども,迂闊に攻撃はできない」と,
 楽観視する榎本は,
 無敵の戦闘艦「開陽」を装備する強力な海軍があると自負していた。
 榎本以下の閣僚達が懇談する席に,土方の姿はない。

▼土方は,一人外へ出て,夜空の星を眺めていた。
 ふと,「歳さん」と呼ぶ近藤の声が聞こえる。
 あの世から現れ出た近藤に,土方は,待っていたかのように,
 「遅いぞ近藤さん,随分,待たすではないか」と微笑む。
 近藤は,源さんや原田に会ったことや,
 山崎とその妻の話の仲睦まじい様子などを聞かせる。
 ひとしきり,京都・大阪の話がはずんだという。

近 藤 「みんなで一度,京都へ行ってみようということに決まった」
土 方 「京都か,俺も行きたいな」
近 藤 「お互いに,あの京都の五年間だけが,
     一生のうち,ひどく長かったような気がするな」
土 方 「長いなんていうものじゃない,京都の新選組の五年間が,
     俺達の全部だったよ」
近 藤 「うん」
土 方 「正直言うと,俺は…,土方歳三は,
     もう京都で死んでしまったように思っているのだ。
     あんたもそうだ,流山で死んだんじゃない,
     京都で死んだのだ」
近 藤 「うん,そうとも言えるな」
土 方 「俺達だけじゃない,沖田もそうだ,
     いや,みんなそうだ。
     新選組を作り,新選組を育て,新選組を大きくした,
     あの京都の町が,新選組に生きた者にとって,
     永遠の地になったのだ。
     あの町に,我々の生涯の夢も,生きがいも,
     何もかも全て,注ぎ込んでしまったのだ」
近 藤 「そうだったなァ」
土 方 「こんなフランスの軍服を着て,
     函館政府の陸軍奉行並とか言われているが,
     俺にはやはり,新選組副長の方が似合うよ」
近 藤 「だろうが,もう誰も,そうは呼んではくれまい」
土 方 「うん」
近 藤 「歳さん,誰か呼んでいるのではないか」

▼土方を呼んだのは,野村利三郎ほか五,六人の,
 新選組生き残りの隊士達だった。
 野村達は,箱館の酒楼で,京都から来た女に逢ったと上機嫌で話す。
 その女から,是非,土方も連れて来るよう言われたので,
 今度は,斎藤も連れて,一緒に行こうと盛り上がる。

▼暴風雨の晩,土方は,斎藤と二人,酒を酌み交わす。
 斎藤は,「今更京都の昔話を聞いても仕方がない」と,
 応じる様子はない。
 「相変わらずだな」と微笑む土方。

▼翌朝,主力艦・開陽が沈没したとの知らせが入る。
 榎本は,緊急会議を開き,
 今後いかに東京政府軍と対抗すべきかについて話し合う。
 陸軍奉行としての土方の意見は「闘うまでだ」。

▼翌明治二年三月,東京政府は箱館攻略を決議し,
 甲鉄艦以下,八隻の北征艦隊を編成。陸兵を満載して北に向かった。
 同時に在奥州の官軍もまた,一斉に北征の行動を起こした。

▼土方は,閣僚会議の席で,
 「碇泊中の敵艦隊に舟を乗りつけて奪い取る」
 との作戦を進言するが,
 同じ陸軍奉行の大鳥圭介は,冷笑し,

大 鳥 「土方さん,失礼だが正気でおっしゃっているのですか」
土 方 「正気です」
大 鳥 「まるで八幡船(バハンセン※盗賊の船)のやり方だ,
     そんな戦法は洋式軍事学の中にはない!」
土 方 「大鳥さん,戦というものは理屈でやるものではない,
     荒井さん(荒井郁之助※海軍奉行),
     海軍は船を動かしてくれればいい,
     敵艦に斬り込むのは,我々がやる」
榎 本 「我々とおっしゃると…」
土 方 「新選組の生き残りを連れて行きます」

▼三月二十五日,土方は,宮古湾政府軍艦隊に対し,
 接舷襲撃を強行するも失敗に終わった。
 榎本の前で敗戦の報告をする土方。

土 方 「襲撃に参加した三隻のうち,
     蟠竜(バンリュウ),高雄の両艦は機関故障のため途中脱落,
     止むなく回天一隻をもって突入しましたが
     失敗に終わりました。
     多くの戦死者を出し,申し訳ありません」

▼土方が部屋へ戻ると斎藤がいた。
 三隻同時に突入できたら,敵の甲鉄艦は分捕れたかも知れないと,
 ぼやく斎藤は,箱館政府軍の仕官ではなく,新選組の生き残りらしく,
 薩長相手に刀の折れるまで闘うという。
 が,そんな斎藤に,土方は,

土 方 「君は速やかに当箱館を脱出,内地に渡り,
     身を潜伏して時期を待つ」

斎藤は冗談じゃないと拒否するが,

土 方 「いや,いいんだ,君は,もう死ぬことはない。
     この箱館政府が,日本中の政府軍を相手にどう闘ったって
     勝ち目はないのだ。一か八かで,宮古湾を襲ってみたのが,
     我々の最後の勝負だったのだ,
     が,それも終わった。斎藤君,もう君は死ぬ必要はない,
     死ぬのは,俺だけでいいのだ」
斎 藤 「厭だ,あんたが死ぬなら,私も死ぬ」
土 方 「命令だ」
斎 藤 「ふざけるな,何が命令だ!」

途端,土方の鉄拳が斎藤にとぶ。斎藤,ぶっ倒れて,すぐ起きる。

土 方 「斎藤君,君は今さっき,何て言った,
     自分は箱館政府軍の仕官ではない,
     あくまで新選組生き残りで行くと言ったではないか,
     その君が,俺の命令を聞けんのか」

土方は戸棚を開け,立てかけてあった誠の旗を掴んで斎藤に見せ,

土 方 「この旗の前で言う,脱出しろ!…脱出してくれ」
斎 藤 「脱出して,私は,何をすればいいのだ」
土 方 「近藤さんの墓に伝えてくれ,新選組は最後まで,
     誠の旗を守って闘ったと」
斎 藤 「…(俯き泣く)」
土 方 「斎藤君,頼む,脱出してくれ!」

▼土方は,隊士の野村達が話していた,
 「京都の女」のいる「北里楼」へ出向いた。
 「光枝」という京女は,山南敬助の懇意の女であった。
 光枝は,山南を強行に切腹させた土方に恨みを抱き,
 仇を討とうとその行方を追いながら,蝦夷まで辿り着いたという。
 土方は,内心驚くが,光枝は当の土方の顔すら知らない。
 「五稜郭の者である」と、素性を隠した土方に気を許した光枝は,
 彼を床に誘うが,土方は用事があると言って断る。
 すると光枝は突然怒り出し,身売り女の堕落した本性を覗かせる。
 女が侍を,土方歳三を殺すには,どうすればいいのかなど判るまい…
 泣き叫ぶ光枝。苦い表情の土方。

▼明治二年五月,東京政府軍は箱館を包囲した。
 閣僚会議の席で,大鳥は,五稜郭に籠城して闘う作戦を唱える。
 港の弁天崎砲台は健在で,千代ヶ岡の砦もまだ闘える見込みはあるが,
 陸軍部隊からは脱走者が続出していた。
 停戦調停を論ずるよりも,戦闘をいかに続行すべきか…
 思案する榎本は,土方に意見を求める。
 「勝てるつもりで会議をやっているのなら,無駄なことだ」…
 土方は言い捨てる。

▼東京政府軍が,箱館港沖に現れた。
 閣僚らは,降伏の条件について密かに話し合う。
 土方は一人,部屋で寝ていた。
 ふと目を覚ますと,部屋の隅に人影を見つけて驚く。
 沖田がいた。






 沖田は誠の旗の前に佇む。
 
土 方 「俺は京都では,ただ新選組を大きくすること,
     強くすることばかり考えていた。
     今までの何百年,何千年の歴史の中にもなかった
     一つの新しい集団を,俺は俺なりに作った。
     だから,俺は全ての人々の意見を無視した。
     時には,近藤さんの意見さえ,抑えた。
     俺は,蛇のように冷たく,鬼のように厳しい男とも言われた。
     山南さんを切腹させたのもそうだ。
     そんな俺を,本当に判ってくれたのは,
     もしかすると,お前一人だったかも知れん」




土方は、黙ったまま微笑む沖田の腕を掴み,
「何とか言え!」と叫ぶ。

▼土方の声を聞いた従卒が来て,「どうしたのか?」と尋ねる。
我に返った土方が掴んでいたのは,誠の旗の布橋だった。

▼夜明け前,土方は,従卒に馬の用意をさせ,
 前線を視察すると言って,五稜郭を後にした。

▼北里楼へ急ぎ入った土方は,奥へ声をかける。
 出てきた光枝に,「俺だよ」と言う土方。
 光枝はハッとして気が付く。
 間もなく砲撃が始まるため,非難するよう告げた土方は,
 膝を突いて座る光枝の前に,ズッシリと金が入った皮袋を置き,

土 方 「男も女も,大事な命に変わりははない。
     お前も,まだこれから,新しい生涯が作れるはずだ」
光 枝 「お客さん,どなたさんどす?」
土 方 「元新選組副長 土方歳三」
光 枝 「…(驚きのあまり声を失う)」
土 方 「お前に討たれるまでもない,
     俺の命が,燃え尽きる時が来たのだ」
光 枝 「…」
土 方 「お前がどう思おうと,世間がどう思おうと,
     日本中がどう思おうと,
     後世の歴史がどう思おうと,俺の一生に,悔いはない」
光 枝 「…」
土 方 「命を大事にしろ,幸せを祈る」

▼土方は,身を翻して出て行く。
 後を追って出た光枝は,俄かに飛んできた数発の砲弾の中に,
 その身を倒す。

▼誠の旗が燃えていく。




 明治二年五月十八日,箱館軍は政府軍に降伏した。
 総裁榎本武揚以下,全閣僚達は官軍軍門に降った。
 そして,後年,総裁以下,箱館軍の閣僚の多くは政府に仕え,
 顕職についた。
 箱館軍八人の閣僚中,この戦いに戦死した者は,ただ一人,
 元新選組副長土方歳三だけである。
 時に,年三十五歳。






(『新撰組血風録』・・完)
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